フォーム要素への入力値をイベントとして受け取る方法として、テンプレート参照変数を利用する方法を説明する。
※現在では、Web標準技術を利用したアプリ開発が広く普及し、そのためのフレームワークも多数存在しています。その中でも主流のフレームワークの1つである「Angular」を活用し、そのための知識を備えることには大きな意味があります。本連載は、Angularユーザーに向けて、その使いこなしTIPSを紹介するものです。なお、本連載は「Build Insider」で公開していた連載「Angular Tips」を同サイトおよび筆者の了解を得たうえで、本フォーラムに移行したものです。記事はBuild Insiderで公開した状態のまま移行しているため、用語統一などの基準が@ITの通常の記事とは異なる場合があります。
Angular 4以降。v4時点で執筆しました。
フォーム要素(<input>、<select>など)への入力値をイベントハンドラーで受け取るには、いくつかの方法があります。
まず、双方向バインディングを利用することです。別稿「TIPS:フォームの入力値をコンポーネントと同期するには?」でも触れたように、双方向バインディングを利用することで、フォーム要素とコンポーネントのプロパティとを同期できます。この場合、イベントハンドラーからはthis.プロパティでプロパティ(=ひも付いたフォーム要素)にアクセスできます。
また、イベントオブジェクト$eventのtargetプロパティを利用することもできます。targetプロパティはイベント発生元の要素を表すので、そのvalueプロパティなどで入力値を取得できます。具体的な例は、前掲の別稿から「補足:双方向バインディングの仕組み」も参照してください。
そして本稿で解説するのは3番目の方法、テンプレート参照変数を利用することです。一般的に、入力値にアクセスするために、イベントハンドラーに対してイベントオブジェクトをそのまま渡すのは大ざっぱにすぎます。そもそもイベントの発生元と取得したい要素とが異なる場合、ハンドラー側で文書ツリーを意識したコードを書かなければならないのも望ましい状態ではありません。
また、イベントハンドラーでの参照だけを目的に、双方向バインディングを利用するのも避けるべきです。双方向バインディングは、常にビュー/コンポーネントの状態を監視しなければならないので、相応にオーバーヘッドの大きな仕組みであるからです。
そのような場合には、テンプレート参照変数を利用することで、イベントハンドラーに対して、入力値だけを渡せるようになります。
まずは、具体的なサンプルを見てみましょう。以下は、テキストボックスに入力した値に基づいて、「Hello, ●○!!」というメッセージを表示する例です。
Angularのフォーム機能を利用するコードは別稿で示したものと全く同じです。
import { NgModule } from '@angular/core';
import { BrowserModule } from '@angular/platform-browser';
import { FormsModule } from '@angular/forms';
import { AppComponent } from './app.component';
@NgModule({
imports: [ BrowserModule, FormsModule ],
declarations: [ AppComponent ],
bootstrap: [ AppComponent ]
})
export class AppModule { }
あとは、テキストボックスを備えたコンポーネントを作成するだけです。太字部分が別稿から変更した箇所です。
import { Component } from '@angular/core';
@Component({
selector: 'app-root',
template: `
<form>
<label for="name">名前:</label>
<!--[1]テキストボックスtxtNameを変数nameでアクセスできるように-->
<input id="txtName" name="txtName" type="text" #name />
<!--[2]イベントハンドラーにテキストボックスへの入力値を引き渡す-->
<input type="button" value="送信" (click)="onclick(name.value)" />
<div>{{msg}}</div>
</form>
`,
})
export class AppComponent {
msg= '';
onclick(value: string) {
this.msg = `Hello, ${value}!!`;
}
}
テンプレート参照変数とは、名前の通り、テンプレート上の要素を参照するための変数です。[1]のように、目的の要素に対して#名前の形式で属性を付与することで、その名前で要素オブジェクトを参照できるようになります(この例であれば、テキストボックスtxtNameを変数nameでアクセスできます)。
あとは、[2]のように、name.valueでテキストボックスの値をイベントハンドラーに引き渡します*1。
*1 name(要素オブジェクト)をそのまま渡すこともできますが、大きなオブジェクトをざっくり渡すのではなく、まずは、目的の値だけに絞って渡すことを優先すべきです。
処理対象:テンプレート構文(Template Syntax) カテゴリ:基本
処理対象:テンプレート参照変数(Template Reference Variable) カテゴリ:テンプレート構文(Template Syntax)
処理対象:#変数名 カテゴリ:テンプレート構文(Template Syntax) > テンプレート参照変数(Template Reference Variable)
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