米国の広い家を想定すると、「スマートホーム」「ホームオートメーション」も、スマートスピーカーの用途として分かりやすい。家族全員が就寝する前に、戸締りを確認し、全ての部屋のライトを消灯し、エアコンを適切な温度設定で動かし、目覚ましアラームをオンにする。こうした、日常的にやらなければならない、一連の面倒な作業を、一言でできるなら便利かもしれない。
忙しい朝も、自動車での出勤なら、音声コマンド一発で、ガレージの扉を自動的に開け、自動車のエンジンをかけて暖機運転しておく一方、自分の予定と職場までの渋滞情報を確認しておくといったことが音声だけでできるなら、うれしいかもしれない。
だが、少なくとも日本では、「ホームIoT」などという触れ込みで製品が登場しつつあるものの、スマートホームでヒット商品が出たという話は聞かない。まだこれからの市場であることは間違いない。
ライトのオン・オフや調光よりも、Clova WAVEが搭載しているような、テレビの操作を音声で行える機能の方が、日本人には取りあえず親しみが持てるだろう。
期待できる面白い機能としては、これもGoogleが2017年10月初めのイベントで紹介していたNESTとの連携がある。
NESTは、同名のGoogleの兄弟会社が開発・販売している一連のスマートホーム製品群。その中にカメラを内蔵したドアベルがある。このドアベルは顔識別ができるので、ベルが鳴った直後にGoogle Homeが「〇〇おばちゃんが到着」というように、来訪者を教えるシーンを見せていた。
もう1つ、これもちょっとした機能だが、Google Homeでは「Find my phone」という機能が投入されるようだ。「私の携帯電話を探して」というと、自分のスマートフォンの着信音を鳴らせる。iPhoneなどでは普通に電話をかけるだけだが、Android端末の場合は、端末の着信音がオフになっていても、音が鳴らせる。
忙しい朝に、「あれ、携帯電話がない」と探し回って、時間の浪費をしてしまった経験を持つ1人としては、日本でも早く使えるようになってほしい。
スマートスピーカーでは、他の分野でも進展が見られる。特に期待したいのはゲーム/教育などの機能/サービス。Alexaスキルでは現在、いやになるくらい多くのトリビア系情報サービスが存在する。だが、AmazonやGoogleは、単なる情報提供ではなく、アクションを取り入れた遊びやゲームができるようにしていこうとしている。
Amazonは、Echoシリーズ用に「Alexa Gadgets」という周辺機器シリーズを開発中だ。最初のガジェットとしてAmazonが紹介しているのは「Echo Buttons」。光るボタンが複数個セットになったもので、早押しクイズなどに使えるという。
一方Googleは、Disneyをはじめとする10社程度の企業と組んで、Google Home用のゲームおよび教育のコンテンツを強化するという。特に、身体を動かして楽しめるようなゲームを提供していくという。
Google Homeの日本版では、「ねえGoogle、しりとりをしよう」というと、「ぜひやりましょう。それでは私から行きますね」と言った後、最初から負けるような言葉を言う。このように、できないことをユーモアでカバーする裏で、スマートスピーカーのメーカーやサードパーティーパートナーは、次に何をどう「音声化」できるかを考えている。
スマートスピーカーは、必ずしもコミュニケーションロボットにはならないだろうが、音声インタフェースとしては確実に進化していくだろう。家の中で、より多くのことが声だけで自動的にできるようになり、さらにより複雑なことができるようになる。
確かにスマートスピーカーは、特に米国で急速に大きな市場へと育ったが、価値を発揮するのはこれからだ。まだまだ多くのユーザーは、その世界の入り口に立っている。そして進化の過程で、これらの製品は「スピーカー」と呼べなくなってくるはずだ。
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