デジタルビジネス計画のやり過ぎは、逆効果でしかないGartner Insights Pickup(37)

デジタルビジネス担当役員は、熱心であればあるほど、戦略や計画の策定をやり過ぎることがある。しかし、それは逆効果であることに気が付かなければならない。

» 2017年10月27日 05時00分 公開
[Mark Raskino, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 2017年、何人かの人とやりとりしていて気付いたことがある。それは、デジタルビジネスイノベーションに向けた過剰な計画についてだ。われわれは、デジタルビジネスのイノベーションセンターや機能を立ち上げるための戦略や計画の策定に携わる技術担当や、事業担当の企業役員と会う機会がある。こうした役員の中には、これらの策定を何カ月も、さらには1年や2年も行っている人がいる。

 読み、調査し、計画し、準備し、人々を結集し、考えるのは賢明だ。どれも良いことだ。だが、ある段階まで来たら行動を起こさなければならない。にもかかわらず、役員が半永久的に考え、計画を立てているように見える場合もある。3つの重要な理由から、これは非常に問題だ。

1. 産業の破壊的変革が迫っているときには、行動が1日遅れるごとに、将来の競合相手に1日ずつ時間をプレゼントしていることになる。

2. あなたの会社が扱う商品やサービスの分野において、ムーアの法則のペースでイノベーションが行われるようになったら、行動が1日遅れるごとに、あなたの会社の顧客価値命題と技術的に可能になっていることとの差がどんどん広がってしまう。

3. 役員がトップダウンで計画を練るほど、企業ITの古い考え方を補強してしまう。デジタルビジネスは大抵の場合、起業リスクを取り、市場で実験を進めることに本質がある。あらかじめ決められた設計に従って、ウオーターフォール方式でプロジェクトを実施するのとはわけが違う。

 興味深いことに、役員は行動を起こすことに最終的にゴーサインを出し、デジタルイノベーションセンターを新設し、最初のプロジェクトを見て創造的で探求的な取り組みによる前進を実際に体験し始めると夢中になる。洞察がさらなる洞察を迅速にもたらし、ますます熱心に後押しが行われる。

 もちろん、こうして作られるイノベーションの仕組みの最初のバージョンは適切なものではない。求められるスキルとは異なる人材が投入されていたり、視野が狭かったり、場所が望ましくなかったりといった問題があることが多い。だが、それらは修正し改善すればよい。通常、雪だるま式に進化が進んでいく(行き詰まることもあるが、そのときはまた再出発すればよい)。

 デジタルビジネスの立ち上げに向けた計画事項に関する議論やプレゼンテーションを何度か見たCEOは、そのフェーズを速やかに終了すべきだ。ある段階を超えると、デジタルビジネスの実践なくして学ぶことはできない。

出典:CEOs Must End Digital Business Planning Paralysis(Gartner Blog Network)

筆者 Mark Raskino

マーク・ラスキーノ

CEO リサーチグループ バイス プレジデント兼ガートナー フェロー


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