本連載では、「NoSQLデータベースの今」を正しく理解し、ビジネス躍進の実現に向けて対策していくための「ベストプラクティス」を掲示していきます。今回は「デジタル変革の時代におけるデータベースのスケーラビリティ」を説明します。
前回は、クラウド時代とNoSQLデータベースの関係について説明しました。今回は、デジタル化とデータベースの拡張性について説明します。
私たちは今、データ量についての転換点を迎えています。デジタルの世界は2013年の4.4ゼタバイトから、2020年には44ゼタバイトに増加する見込みです(ゼタバイトは1兆GB)。これは、ホッケースティック型の急増であり、私たちはこのカーブの最初の部分にいます。多くの組織が運用しているサービスは、数百万人のユーザーと数ペタバイトのデータを対象としています。また、クラウドでアプリケーションを実行しており、さまざまな場所にある数百台ものデスクトップ、タブレット、モバイルデバイスに対してダイナミックなコンテンツを提供しています。
今ではもはや、紙のファイルは記録システムではなく、データベースに全てを保存するという大きな変化が生じています。私は以前、大規模な政府機関の製品管理を担当しており、そこでかなり大きな「最新化」への取り組み(業務変革プロジェクト)を経験しています。その取り組みには、旧式の紙ベースのプロセスから、全てをオンデマンドで電子的に実行するプロセスへの移行作業も含まれていました。このような公的機関では現在、各帳票、手紙、規制、プロファイル、メール、通話、チャット、調査、意思決定など全てのデータを保存する必要が生じています。
こうした変革は、あらゆる業界で発生しています。現在のビジネスの運営方法は、10年前とは全く異なっています。紙の記録に大きく依存していた時代から、私たちは大きく変わりました。成功を収めている企業は現在、あらゆる業務をデジタル化しています。
ビジネスのあらゆるものをオンラインで実行する必要があるという、こうした新たな現実に対処するには、スケーラビリティ(データやユーザーの増加に伴う容量の追加)に加え、弾力的な拡張性(システム拡張のしやすさ。通常はユーザーの需要がなくなった場合の縮退を指す)が必要になります。
スケーラビリティと、弾力的な拡張性(エラスティシティ)の実現は、リレーショナルデータベースにとって大きな課題です。リレーショナルデータベースは、データが少量できれいに整理され、規則に従っていた時代に設計されましたが、もはや状況は異なっています。全てのデータベースベンダーは、大規模な拡張が可能であると主張しています。競争に勝ち残るためには、当然そのように主張するでしょう。しかし、実際にできることとできないことを詳しく見てみると、リレーショナルデータベースの基本的な問題がより明確になってきます。
リレーショナルデータベースは、テーブルマッピングの整合性を維持し、分散コンピューティングの問題を回避するために、元々1台のサーバ上で実行するように設計されています。こうした設計では、システムの拡張が必要になると、処理能力が高く、大容量のメモリとストレージを備えた高スペックの専有ハードウェアを購入する必要が生じます。アップグレードも課題となります。実際の変更時には、通常、システムをオフラインにする必要があるためです。これら全てが、ユーザー数が増加し続けている最中で発生します。きちんとプロビジョニングできていないリソース不足の環境では、制約とリスクが増加します。
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