2017年10月に東京で開催された「第5回Innovation Leaders Summit」に集まった国内外のスタートアップ企業のうち、ビッグデータの新たな活用法で日本進出を目指す2社、SwarmとPanjivaに話を聞いた。
国内外から画期的なテクノロジーを擁したスタートアップと大企業を集め、その交流や提携を促進するイベント「第5回Innovation Leaders Summit(以下、ILS)」が、2017年10月23〜25日に開催された。今回は、100社余りの大手企業と500社近くの中小企業がマッチングやプレゼンテーションに参加。ILSによれば、3日間で6000人以上の来場を記録したという。
多様なテーマで行われたビジネスピッチやプレゼンテーションのうち、ビッグデータ関連分野にテーマを絞った「Big Data Analytics Tokyoピッチ」には、国外のさまざまなスタートアップ企業が参加した。そのうち、米国で既に注目を集め、日本市場への進出を目指すSwarmとPanjivaを紹介する。
米国を拠点にアンチウイルスソリューションを提供するSwarmは、ブロックチェーンの構造をアンチウイルスソリューションに応用することで、自社でセキュリティエンジニアを雇わず、かつ大手の目の行き届かないマルウェアにも満遍なく対応するという。それを可能にするカギとして、同社のCTO(最高技術責任者)であるポール・マコウスキ―氏が挙げるのが、マルウェア判定に使われる同社独特の仕組みだ。
Swarmでは、外部のセキュリティ企業を「アンバサダー」と呼び、顧客と同様、契約関係を結ぶ。マルウェアの疑いがあるファイルが見つかった場合、Swarmは、そのファイルをアンバサダーで作るコミュニティーに配布し、情報を共有する。彼らは、そのファイルが「マルウェアか、そうでないか」の判定を「手配書(bounty)」として、Swarm側に送り返す。Swarmは、自社と契約するセキュリティ専門家を通して、そうした「判定」の真偽を評価。その結果に応じてアンバサダーに報酬を支払い、エンドユーザーに最新のマルウェア情報を反映したサービスを提供するという。
Swarmは、多くのアンチウイルスソフトウェアベンダーと異なり、自社を中心とするマルウェア研究を行わない。ブロックチェーンと同じく、「特定の中心機構を持たない」ことで、マルウェア判定に関して専門家同士の多様な知見を共有し、対処可能なマルウェアの範囲を広げるという。
自身もセキュリティ専門のエンジニアであるマコウスキ―氏は、アンチウイルスソフト業界の現状について、「複数のベンダーが、1つのマルウェア研究に取り組む労働力の多重化、ユーザーが1度に複数のアンチウイルスソフトを使えない不自由さが問題だ」と語る。「(外部の専門家を使うことで)オープンソースに似たセキュリティ専門のコミュニティーを作りたい。所属する企業に関係なく、優れたセキュリティ専門家ならば、誰でもSwarmのアンチウイルスソリューションに貢献できる」と話す。
マコウスキ―氏は今後、日本を含む全世界のセミナーやセキュリティフェアを通じてSwarmの認知度を高め、協賛企業の誘致やアンバサダーの雇用を進めたい考えだ。
2006年にニューヨークで設立されたPanjivaは、全世界でやりとりされる10億件超の貿易データを分析。特定の企業による物流ルートをはじめ、製品の材料調達を巡る企業同士の競合関係の可視化、市場トレンドの予測など、多様な知見をクラウドで提供する。
Panjivaは、企業や政府機関に向けて、個別のニーズに合わせたデータ分析も行っている。例えば、顧客企業の物流ルートの監視や新たな運送ルートの分析、新たなビジネスパートナーの発掘、政府機関向けに行う不正取引の監視などだ。
現在、Panjivaは米国、中国、ロシア、インドをはじめとする14カ国の貿易データを扱い、CNN MoneyやFinancial Timesなどのメディアを含む3000社の企業や政府機関を顧客に持つという。
同社の創業者兼CTOを務めるジェームズ・ソータ氏は、「私たちの持つサプライチェーン関連のデータネットワークは、世界最大であると同時に、世界のどこからでもアクセス可能だ。当面は英語のみでサービスを提供するが、巨大な市場を持つ日本への進出も検討している」と語った。
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