インテリジェントなデータセンター運用が必須な理由Gartner Insights Pickup(40)

今や、デジタルビジネスを支えるのにデータセンターは必要不可欠だ。では、その実現に障害となるのは何だろうか。Gartnerのバイスプレジデント兼最上級アナリストのジョージ・ワイス氏に聞いた。

» 2017年12月01日 05時00分 公開
[Rob van der Meulen, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 多くの場合、デジタルビジネスの目標はエンドユーザーや消費者にとってのシンプルさや効率性を高めることにある。ところが、デジタルビジネスを支えるシステムの構築とメンテナンスを担うITインフラ&オペレーション(I&O)の担当リーダーは、急激に増大する複雑さに直面している。

 「モノのインターネット(IoT)、エッジコンピューティング、アドバンスド・アナリティクス、そしてリアルタイムの情報およびサービスへの需要が、より複雑で動的なシステムの導入を促進していく」と、Gartnerのバイスプレジデント兼最上級アナリストのジョージ・ワイス氏は指摘する。

 「パブリッククラウドコンピューティングとハイパーコンバージドインフラ(HCI)の急成長は、I&Oリーダーがこうした需要に対応するため、どのようなアプローチを取っているかを浮き彫りにしている」(ワイス氏)

 このような新しいアプローチが約束していることの1つは、オンデマンドでサービスを提供するようにITインフラのアーキテクチャをモジュール化することで、プロビジョニングや統合が簡素化されることだ。だが、ワイス氏によると、これまでとは異なる状況が生まれており、そのためにI&Oリーダーは根本的に新しい方法でシステムと技術を評価することが必要になるという。

 「“サービスとしての利用”やソフトウェア定義型の統合による簡素化が進んでいるが、それを上回る勢いでITの世界の複雑さが増大している。現在のITの世界は、数百万から数十億ものデータポイントとゲートウェイが入り組んだネットワークに接続されており、そうした要素が増えながら全体が拡大しているからだ」とワイス氏は説明する。

 「人工知能(AI)や機械学習(ML)を応用すれば、こうした複雑化に伴うITオペレーションの負担は軽減されるだろう。だが、そのためには、注意や重点の対象をシフトしなければならない」(ワイス氏)

システムのサイロ的な実装が障害に

 インテリジェントな自己組織化データセンターの実現の障害となりそうな問題の1つは、今日のシステムの多くが特定の目的を持ったワークロードやビジネス部門向けに実装されており、広く利用されるようにデプロイされておらず、複数システムの集合体の一部として管理されているわけでもないことだ。このことはITオペレーションにおいて、リソースをさまざまなワークロードにわたって最適化し続けることを非常に難しくしてしまう。こうした最適化を実現するためにも、AIやMLをITオペレーションに応用する必要がある。

 「これからのデータセンターやエッジ、クラウドでは、ITリーダーは大きな視野で考え、インテリジェントな自己組織化システムの原理を導入する必要がある」とワイス氏は語る。

 「システムの挙動のモニタリングと分析を行うプラットフォームとサービスのアーキテクチャを構築し、それによって、あらかじめ定義した目標とサービスレベルに最適な結果を生み出し続けることを目指さなければならない」(ワイス氏)

 ワイス氏は、インテリジェントな自己組織化データセンターは、以下の4つの重要な特性を持つと考えている。

  1. 従来の垂直統合型システムやハイパーコンバージド環境において、構成、ワークロード、キャパシティー、接続について、モニタリング、調査、フィードバックを行える
  2. 組み合わせ、作成、適合を行うメッシュまたはクラウドネットワーク内で他のシステムをモニタリングでき、事前に設定されたグローバル目標に順応できる
  3. 組織が設定した目標を満たす合目的なアクションを実行できる
  4. リソースの使用率や効率に構築可能な原理を適用できる

遠い夢ではない

 こうしたビジョンはアルゴリズム処理やMLの最近の進化を背景に、既に部分的には、HCIや垂直統合型システムの原理に基づいて設計された一部のシステムの技術キャパシティーで実現されている。そのため、GartnerはI&Oリーダーに、今後3年で次世代の自己最適化データセンターの基盤を設計することを勧めている。

 I&Oリーダーがこうしたデータセンターの移行の準備を効果的に行うには、自社システムの現在の能力や機能にとらわれずに理解を広げ、そうしたビジョンを踏まえたフレームワークや目標を持っているベンダーを探さなければならない。

 「I&Oリーダーにとっては、こうしたトレンドに関わる3つの項目の理解が重要になる。第1に、このトレンドが信頼性や回復性、応答性、復旧という点において、ビジネスにどのようなメリットをもたらすか。第2に、ベンダーが提供するもの、パートナーの貢献、そして広範なビジネスエコシステムをどうすれば効果的に評価できるか。第3に、既存のレガシー自動化ツールが次世代のソリューションによって、どのように補完あるいは代替されるかだ」(ワイス氏)

出典:Prepare for the Intelligent Data Center(Smarter with Gartner)

筆者 Rob van der Meulen

Manager, Public Relations


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