国際大学グローバル・コミュニケーション・センターは「日本の人工知能活用実態と産業政策・企業戦略についての提言」をまとめた。同センターによれば、日本企業のAI導入率は米国企業に比べて低く、導入事例の多くが自然言語データ処理だった。
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(以下、国際大学GLOCOM)は2018年3月16日、人工知能(AI)の日本における活用実態と産業政策、企業戦略についての提言をまとめた「人工知能と日本 2017」を発表した。
2017年時点での企業のAI導入率は、日本(3%)が米国(14%)を大きく下回った。導入を検討している企業の割合も、米国(16.5%)を日本(11%)が追いかける形だ。
また、日本で公開された事例の半分以上は、自然言語データ処理を活用したもので、その多くがチャットbotだった。国際大学GLOCOMは、「音声や動画データのAIによる処理は研究が進んでいるものの、サービス展開はまだ途上」としている。
2016年1月1日から2017年8月31日にかけて公開された事例から、AI関連商品やサービスの訓練データ量を分析したところ、「10万件以下」とした企業の割合が30%に達した。
国際大学GLOCOMは、「日本企業には、個別の分野で質の高いデータを蓄積し、AIに適用する戦略が重要。その実現には、日本のものづくりを支える中小企業を対象にしたAI導入が不可欠だ」としている。
一方、AIの利用目的には、「生産性向上」や「労働力の補完」の占める割合が多く、具体的には「鉄道の電力消費量を14%削減」「コールセンターの総労働時間を6850時間短縮し、2400万円の費用を削減」といった事例がみられたという。
国際大学GLOCOMによれば、こうした事例は「人とAIの役割分担」によって成立し、導入先の企業で「人をより付加価値の高い部署へ配置」「社員教育の充実」といった行動につながっているという。
今回の調査によれば、AIの普及に対して「非常に好ましい(約9.8%)」「ある程度好ましい(約37.7%)」「あまり好ましくない(約8.6%)」「全く好ましくない(約1.9%)」といった回答が集まった。国際大学GLOCOMでは、「AIの社会受容性は十分にあることが明らかになった。課題解決型のAI活用が、日本の社会変革に寄与する」と分析している。
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