「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「トレースフラグ」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は「トレースフラグ1237の詳細と使い方」を解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブル対策を踏まえた「SQL Serverのトレースフラグ」の使いこなしTipsを紹介していきます。
今回は「トレースフラグ1237」の詳細と使い方を解説します。
トレースフラグ1237は、ALTER PARTITION FUNCTIONのデッドロック優先度に関する不具合を解消する設定です。SQL Server 2016のSP1 CU3以降に対応します。
ロックはデータベースの整合性や一貫性を保つために必要な機能です。しかし、ロックを取得する順序によっては、お互いがお互いのロックの解放を待つために処理が進まなくなるデッドロックが発生します。
デッドロックが発生した場合は、通常SQL Server自体がどちらかの処理を強制終了し、他方の処理を継続できるようにします。しかしSQL Serverに強制終了する処理の選択を任せてしまうと、ユーザーにとって重要な処理の方がデッドロックの「被害者」として選ばれてしまうことがあります。
そのためDEADLOCK_PRIORITYというSETオプションを使用して、デッドロックが発生した際に強制終了する処理の優先度を設定できるようになっています。
ところが、SQL Server 2016ではALTER PARTITION FUNCTIONを処理しているセッションのDEADLOCK_PRIORITYが「-10」に上書き設定されてしまう不具合があります。事前にDEADLOCL_PRIORITYを高く設定していても、デッドロックの被害者に選択されてしまいます。
トレースフラグ1237を設定するとALTER PARTITION FUNCTIONを使用していたとしても、もともと設定していたDEADLOCK_PRIORITYに従ってデッドロックの被害者が選択されます。
設定方法 | 可/不可 | 要/不要 |
---|---|---|
スタートアップ | ○ | − |
グローバルスコープ | ○ | − |
セッションスコープ | ○ | − |
クエリスコープ | ○ | − |
トレースフラグ 3604/3605 | − | 不要 |
DEADLOCK_PRIORITYを一番高い「10」に設定してALTER PARTITION FUNCTIONの処理を実行します。デッドロックが発生すると、DEADLOCK_PRIORITYを10に設定しているにもかかわらず、被害者として処理が強制終了されてしまいました(図1)。
同じ処理をトレースフラグ1237を有効にしてから実行すると、デッドロックの優先度が正常に設定されるため、DEADLOCK_PRIORITYを10に設定したALTER PARTITION FUNCTIONの処理が正常に完了し、競合していた処理がデッドロックの被害者となりました(図2)。
ユニアデックス株式会社 NUL System Services Corporation所属。Microsoft MVP for Data Platform(2011〜)。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を担当。2016年IoTビジネス開発の担当を経て、現在は米国シリコンバレーにて駐在員として活動中。目標は生きて日本に帰ること。
ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
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