Microsoftは開発者向け会議「Build 2018」において、「Project Kinect for Azure」「Speech Devices SDK」「Visual Studio IntelliCode」など、開発者がAIソリューションを開発できるようにする新しい技術を発表した。
Microsoftは2018年5月7日(米国時間)、開発者向け会議「Build 2018」において、「Microsoft Azure」(以下、Azure)や「Microsoft 365」などで開発者がAI(人工知能)ソリューションを開発できるようにする新しい技術を発表した。「AI技術がクラウドやエッジデバイスを通じて人々の生活や仕事を変化させており、開発者にとってAIソリューション開発が今まで以上に重要になっている。AIが社会を推進する心臓ならば、『インテリジェントエッジ』と『インテリジェントクラウド』は背骨だ」との認識を示している。
さらに同社は、世界で10億人を超える、障害のある人々の能力拡大に向けてAIの活用を目指す5年間にわたる2500万ドル規模の新プログラム「AI for Accessibility」も発表した。このプログラムは助成金、技術投資、専門知識の提供から構成され、このプログラムによるイノベーションは将来的にMicrosoftのクラウドサービスに取り入れられる。
Microsoftが発表した一連の新技術の概要は以下の通り。
Microsoftは「日々使用される数十億個のエッジデバイスが相互接続されるようになり、クラウドとの常時接続なしに、見て、聞いて、推論し、予測できるだけのインテリジェンスを備えるようになる」と予測する。
これがインテリジェントエッジであり、「AIとクラウドを活用して、工場や手術室を含むあらゆる場所で、特に人間にとって危険であったり、解決に新たなアプローチが求められたりするシナリオにおいて、新たな情報を収集して推論する」という具合に、コンピュータと現実世界のインタフェースとなる存在だという。
Microsoftは、開発者がインテリジェントなエッジアプリケーション開発を行うことを支援する新しい技術や機能を発表した。
Project Kinect for Azureは、インテリジェントエッジ向けに設計されたオンボードコンピュータを備えたToF(Time of Flight)方式の深度カメラを含むセンサー類のパッケージだ。HoloLensでも活用されているKinect技術の蓄積に基づいて開発された。これらのハードウェア技術と、「Azure Machine Learning」「Azure Cognitive Services」「Azure IoT Edge」などのAIサービスを組み合わせたことで、繊細な手の動きのトラッキングと高精細の空間マッピングにより、「かつてない正確性を提供するソリューションを実現する」という。
開発者によるランタイムの修正やエッジアプリケーションのカスタマイズ、デバッグを可能にする。エッジでの開発を容易にすることで、エッジアプリケーションの透明性や管理性を高めるという。
今後数カ月以内に、エッジ向けに提供される最初のAzure Cognitive Servicesとして「Azure Custom Vision Service」を提供し、エッジデバイス上で見て、聴いて、話して、解釈できる強力なAIアルゴリズムの開発を可能にするという。
これにより、ドローンや産業機械などのデバイスが、クラウドへの常時接続なしに、迅速にアクションを取れるようになるとしている。
DJIはMicrosoftとの提携により、Windows 10 PC向けの新SDKを開発した。このSDKは、世界に約7億台存在するWindows 10デバイスにフライトコントロールとリアルタイムのデータ転送機能を提供する。
またDJIは、企業向けドローンとSaaSソリューションを推進するための優先的クラウドとしてAzureを選択した。Azure IoT EdgeとMicrosoftのAIサービスを活用したソリューションをMicrosoftと共同開発する。
これらにより開発者は、農業、建設、警備などの重要分野において、例えば農産物の収穫高を増大するなどのソリューションを開発可能になるという。
Microsoftは、カメラベースのIoTソリューション用にAzure IoT Edgeを稼働する「ビジョンAI開発キット」をQualcomm Technologiesと共同開発する。
開発者は、Azure Machine Learningに加え、「Qualcomm Vision Intelligence Platform」と「Qualcomm AI Engine」が提供するハードウェアアクセラレーションを活用したソリューションを構築できる。エッジデバイスとなるカメラは、Azure Machine Learning、Azure Cognitive Services、「Azure Stream Analytics」などをクラウドからダウンロードして利用できるようになる。
Microsoftは、Azure Cosmos DBをアップデートし、クラウドとエッジの両方をサポートするグローバル規模のマルチマスター機能を提供するとともに、セキュリティ向上のためにAzure Virtual Networkへのアクセス機能の一般提供を開始した。
Microsoftは、ディープニューラルネットワーク処理アーキテクチャである「Project Brainwave」のプレビュー版をAzureとエッジ上で利用可能にする。
またProject Brainwaveは、Azure Machine Learningと完全に統合され、IntelのFPGAハードウェアとResNet50ベースのニューラルネットワークをサポートする。
Microsoftは、「開発者はデータ、機械学習、コグニティブインテリジェンス(認知知能)を活用し、人々の仕事、コラボレーション、生活を変革するAIソリューションの構築と管理を行えるようになる」としている。
Speech Devices SDKは、ノイズキャンセルや遠距離認識などを含む、音声認識機能を提供する。これにより、開発者はドライブスルーでの注文、車内や家庭内の音声アシスタント、スマートスピーカーのようなデジタルアシスタントなど、音声処理を活用した多様なアプリケーションを構築できるという。
このプレビュー版は、AIをインデックス技術と統合し、テキストやイメージに基づいて迅速に情報や洞察を発見可能にする。
Microsoftは、Azure Cognitive Servicesのアップデートにより、音声認識とテキスト読み上げを向上させ、カスタマイズ可能な音声モデルと翻訳機能を含む「ユニファイドSpeechサービス」を提供する。
Microsoftは、「周囲の人々、人々が使っている物、人々の活動や関係といった背景情報を加味した、よりリッチな体験を実現する、MR(Mixed Reality:複合現実)」機能も発表した。2018年5月22日から期間限定無料プレビューを開始する。
Microsoft Remote Assistは、ハンズフリーのビデオ通話、画像共有、注釈付け、ライブストリーミング、動画キャプチャーをヘッドマウントディスプレイで実現するMRアプリケーションだ。
現場の業務担当者は作業の手を離さずに、自分が見ているものをMicrosoft Teams上の専門家と共有し、協力して問題解決や作業を迅速に行うなど、リモートコラボレーションを実現できる。
Microsoft Layoutは、MRを活用した空間設計を可能にするアプリケーションだ。3Dモデルをインポートして部屋のレイアウトを実物大で作成したり、リアルタイムに他者と共有したり、編集したりできる。
Microsoftは、開発者がAzureやMicrosoft 365など、任意のプラットフォーム上で好みの言語とフレームワークを使用して、インテリジェントエッジ向けの新時代のアプリケーションを構築できるよう支援するという。
Visual Studio IntelliCodeは、日々のソフトウェア開発をAIが支援する、Visual Studioの新機能だ。コード品質と生産性を向上させるインテリジェントなヒントを提供するという。Visual Studioにおいてプレビュー版として提供開始された。
これまでプレビュー版が提供されているVisual Studio Live Shareが一般提供開始となった。
開発者は簡単かつ安全に、「Visual Studio 2017」や「VS Code」といった既存のツールから直接的に編集やデバッグを行ってもらえるようになる。開発者は任意の言語で、また、サーバレス、クラウドネイティブ、IoT開発といった任意のシナリオでLive Shareを利用できる。
これまでプレビュー版だったAzure Kubernetes Service(AKS)は、今後数週間以内に一般提供が開始される。
さらにMicrosoftは、Kubernetesサポートを「AKS for Azure IoT Edge」に提供する。
MicrosoftはGitHubとの新たなパートナーシップを発表した。「Visual Studio App Center」とGitHubの統合機能により、iOSとAndroidデバイス向けにアプリの開発を行うGitHub開発者に、GitHub内からシームレスにDevOpsプロセスを自動化する機能が提供されるようになった。
Azure Blockchain Workbenchは、Azureがサポートするブロックチェーンネットワークを「Azure Active Directory」「Azure Key Vault」「Azure SQL Database」などのクラウドサービスと連携させることで、PoC(概念実証)の開発期間を劇的に短縮する。
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