AWS Loft Tokyo、大阪リージョンなど、AWS Summit Tokyo 2018の初日基調講演における新しい話題とユーザー企業が語ったことソニー銀行は「クラウドオンリー」へ

2018年5月30日に開幕した「AWS Summit Tokyo 2018」の初日基調講演における発表や比較的新しい話題、ユーザー企業のプレゼンテーションをまとめてみた。

» 2018年05月31日 09時38分 公開
[三木泉@IT]

 2018年5月30日に開幕した「AWS Summit Tokyo 2018」の初日基調講演における発表と、比較的新しい話題は次の通りだ。

 アマゾンウェブサービスジャパン(以下、AWSジャパン)は2018年10月、「AWS Loft Tokyo」を開設する。米国サンフランシスコとニューヨークに次ぎ、世界で3番目のAWS Loftとなる。場所は、AWSジャパンが新たに入居する目黒駅前のビル内。

 AWS Loftはスタートアップ企業支援のための常設スペース。AWSジャパンのソリューションアーキテクトが常駐し、技術的な質問に答える。また、技術や起業プロセスなどの話題に関するセミナー、ワークショップを頻繁に開催する。自習型のテクニカルハンズオンラボもある。さらにコワーキングスペースが無償・予約不要で使えるという。AWS Loft Tokyoには、AWSアカウントを持っていれば誰でも入ることができる。

 また、「Amazon Elastic File System(Amazon EFS)」が、2018年7月に東京リージョンで提供開始される。Amazon EFSはNFSをストレージアクセスプロトコルとして使うファイルサービス。これまでAWSでは、ブロックストレージとオブジェクトストレージを提供してきたが、ファイルストレージはAmazon EFSが初めて。

 Amazon EFSはニーズに応じて自動的に伸縮する。支払いは実際に使用した容量に対して行う。総IOPSは、使用容量の増大に伴って向上する。追加料金を払うことなく、複数アベイラビリティゾーン(AZ)を用いて冗長性が確保される。

 日本国内のユーザーにとってAWSを使いやすくするための施策としては、東京リージョンに4つ目のAZが設けられ、準拠法をAWSマネジメントコンソールで日本に変更できるようになった。また、新しい話ではないものの、円払いおよび請求書払いへの対応を説明。

 基調講演では、大阪ローカルリージョン開設に至った経緯を、AWSジャパン事業開発本部 本部長の安田俊彦氏が紹介した。

 国内第2のリージョン提供をAWSジャパンが検討し始めたのは、2013年の暮れだという。以来、顧客数十社にヒアリングを重ねた。「東京リージョンだけでなぜだめか」「シンガポールや米国ではなぜだめか」「日本ではどこがいいのか」といった質問を通じて顧客の要望を明確化し、本社との連携の上で実現したという。

 第2の国内リージョンを早くから要望していた一社であるソニー銀行の執行役員、福嶋達也氏は、2017年のAWS Summit Tokyoでも、基幹系業務をAWSに移行する前提として、「東京以外の国内リージョンが提供されることを強く期待する」と話していた

 大阪ローカルリージョン開設を受け、ソニー銀行は2019年秋以降に、総勘定元帳のための新財務会計システムをAWS上で本番稼働させると福嶋氏は話した。

 ソニー銀行では、2014年夏以降、FISC安全対策基準の内容を説明するなど、AWSに国内第2のリージョン開設を強く要望していたという。AWSは「米国本社も含め、要望を真摯かつ具体的に検討してくれた」としている。

大阪ローカルリージョン開設を受け、ソニー銀行は基幹系のクラウド化も進める

 これまでは「クラウドファースト」だったが、今後は「クラウドオンリー」でやっていく、と福嶋氏は話した。つまり、「まずクラウドでできないかと考える」のではなく、「全てクラウドでやるのが前提」だということだ。SaaS、PaaSを含めて、どの機能をどのクラウドにするかを考えていくという。

SOMPOホールディングスはAWSで事業のデジタル化を推進

 「保険業界全体が、デジタルディスラプションされようとしている」と危機感を語ったのは、SOMPOホールディングス グループCDO 常務執行役員の楢崎浩一氏。同グループはデジタル事業を生み出す拠点として、「SOMPO Digital Lab」を運用している。東京とシリコンバレーに続き、最近ではイスラエルに開設された。

 SOMPO Digital Labでは、2017年度に42件の実証実験(PoC)を実施、このうち10件が、準備中を含めて実サービス提供段階に達したという。

 PoCの環境は全てAWS上に構築。実サービスに移行してもAWSを活用している。楢崎氏は、ドライブレコーダーを使った安全運転支援サービス「Driving!」の例を挙げ、「AWSなくしてはできなかった」と話す。

 「1社でできることは限られている。オープンイノベーションは今後不可欠。AWSという優れたプラットフォームの上で(社外と)共創していきたい」(楢崎氏)

 KDDI 理事 技術統括本部 プラットフォーム開発本部長の中島昭浩氏は、同社が過去3年間に、アカウント数で10倍以上、利用料金で28倍以上と、AWSの利用を急増していることを説明した。50以上の社外向けサービスで、少なくとも一部機能にAWSを採用しているという。例えばauアプリのプッシュ通知基盤では、AWSの場合オンプレミスに比べ、限界性能が4倍に向上、構築費用は4分の1になったという。

 一方、中島氏はAWSに対する要望として、リアルタイムでの障害情報共有および障害への迅速な対応、そして単独利用を実現するなど、大阪ローカルリージョンを正規リージョンにしてもらいたいと述べた。

 他には、機械学習/AI活用のための包括的なサービスを提供するABEJAの代表取締役CEO兼CTO、岡田陽介氏が、AWSを利用して100社の顧客に対し、IoTエンドポイント4000以上、ネットワークトラフィック1日当たり10TB以上というオペレーションを提供していると話した。

 また、デンソーのMaaS開発部部長兼デジタルイノベーション室室長である成迫剛志氏は、同社のMaaS(Mobility as a Service)への取り組みを紹介、AWSへの期待を語った。

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