Windows 10へのアップグレードや新規導入は、Windows 10プリインストールPCを購入するか、ボリュームライセンス製品として購入するかが主な方法になります。2017年11月からは、「Microsoft 365 Business」サービスを利用する方法も利用可能になりました。Microsoft 365 Businessは、Windows 10へのアップグレードを含む、300ユーザーまでの中小規模企業向けの統合型ソリューションです。
Microsoftは個人および企業向けに、最新のOfficeアプリ、コラボレーションサービス、管理サービスを提供する「Office 365サブスクリプション」を提供しています。一般企業向けには、300ユーザーまでの「Office 365 Business」(Business/Business Premium/Essentialsプラン)、300ユーザー以上に対応した「Office 365 Enterprise」(E3/E5プラン)があります。
Azure Active Directory(Azure AD)を利用する企業向けのOffice 365は、Azure AD関連のさまざまなサービスを使用して、セキュリティや管理機能を強化することが可能です。例えば、「Azure AD Premium」や「Microsoft Intune」によるデバイス管理の強化、「Azure Information Protection」(旧称、Azure RMS)による情報漏えい対策、「Microsoft Advanced Threat Analytics(ATA)」や「Azure Advanced Threat Protection」による侵入検知サービスなどです。それらの関連サービスをセットにした「Microsoft Enterprise Mobility+Security」というサブスクリプションも用意されています。
2017年11月から提供が始まった「Microsoft 365」は、これらの既存のサービスとWindows 10へのアップグレードをセットにした新しいサブスクリプションです(表1)。
「Microsoft 365 Business」は、300ユーザーまでの中小規模企業を対象にしたもので、Windows 7 ProfessionalまたはWindows 8.1 ProをWindows 10 Pro(システム情報の表示はWindows 10 Business)にアップグレードし、最新のOfficeアプリ(Office 365 Business)を展開したり、デバイスのセットアップや管理を簡素化したりできます(画面1)。
対して「Microsoft 365 Enterprise(E3/E5)」は、Office 365 Enterprise(E3/E5)とEnterprise Mobility+Security(E3/E5)に、Windows 10 Enterprise E3/E5サブスクリプションをセットにしたもので、300ユーザー以上の大企業を対象としています。
Microsoft 365 Enterpriseでは、Windows 10 Enterpriseの完全な使用権が提供されます。Microsoft 365 BusinessではWindows 10の最新バージョンへのアップグレードは提供されますが、Windows 10 Enterprise LTSB/LTSCを含む下位エディションを使用する権利や、Windowsの仮想化されたインスタンスにアクセスする権利(Windows Virtual Desktop Access:VDAの権利)は含まれないことに注意してください。
本稿は、2018年5月時点のサービス内容に基づいています。2018年6月に、Microsoft 365 BusinessでもWindows Defender ATPおよびAzure Information Protectionなどのサービスが利用可能になったことが発表されました。
Microsoft 365 Businessには、Office 365 Businessサブスクリプションと同等の機能が含まれます。具体的には、ローカルインストール版のOffice 365 Businessアプリ、商用利用権付きの「Office Online」、1TBのオンラインファイルストレージ(OneDrive)、法人メール(50GB/ユーザー)と予定表、連絡先、オンライン会議(Skype for Business)、Microsoft Teamsによるコラボレーションサービスです。
Microsoft 365 Businessでは、Office 365 Businessサブスクリプションの全ての機能に加えて、以下のサービスを利用できます。
WindowsデバイスをMicrosoft 365 Businessのサービスに接続して管理するには、Windows 10 Pro バージョン1703(Creators Update)以降を実行していることが前提条件となります。
Windows 10 Pro バージョン1703以降のデバイスは、Microsoft 365 Businessに接続することで、Windows 10 Businessになります。Windows 10 Businessへの変更はアップグレードインストールのような手続きを伴うものではなく、実質的にWindows 10 Proのままです。Windows 10 Businessとは、“Microsoft 365 Businessのサービスに接続され、一元管理とセキュリティ制御を有効にする一連のサービスとともに機能するWindows 10 Pro”と考えればよいでしょう(画面2)。
Microsoft 365 BusinessとOffice 365 Business Premiumの詳細な比較は、以下の公式製品サイトで確認してください。Microsoft 365 Businessに特有の具体的な機能については、次回、レポートします。
上記製品サイトには、購入前の相談窓口として電話番号が記されていますが、Microsoftの他の製品やサービスによくある無料試用版の誘導がありません。
実は、既に利用可能なAzure ADのディレクトリがあれば(例えば、Office 365の企業向けプラン、Microsoft Intune、Microsoft Azureサブスクリプションなど)、「Office管理ポータル」(https://portal.office.com/adminportal/home)にAzure ADの管理者でサインインし、30日間の無料試用版を申し込むことで、すぐに試用を開始することが可能です(画面3)。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
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