物理サーバや仮想マシンにインストールしたWindows Server 2016の初代Nano Serverは、通常のWindows Server 2016の「デスクトップエクスペリエンス」や「Server Coreインストール」オプションとは手順が異なりますが、Windows Updateで品質更新プログラムをインストールすることができます。
実は、Windows UpdateやMicrosoft Updateカタログサイトでは、これら3つのインストールオプションを区別せず、共通の品質更新プログラム(累積更新プログラムやその他の更新プログラム)が提供されています。初代Nano Serverは、公式にはサポート終了製品ですが、筆者が確認したところでは、2018年5月と6月にも累積更新プログラムが提供されました(画面3)。
単に、共通の品質更新プログラムなのでそうなのか、サポートが実は延長されているのか、どちらなのかは分かりませんが、2018年6月時点で通常のWindows Server 2016と同じOSビルド「14393.2312」で利用できています(最新情報:2018年6月21日付で「14393.2339」がリリースされています)。
なお、ベースOSイメージとしてのNano ServerはオンラインでOSを更新する必要がなく、更新済みのイメージがDocker Hubに公開されます。ベースOSイメージとしてのみの提供となる2代目以降のNano Serverからは、OS更新のためのサービススタックが削除されており、サイズの縮小に寄与しています。2018年6月時点でのmicrosoft/nanoserverのベースOSイメージの展開サイズは、latest/sac2016タグが約1GB、1709タグが328MB、1803タグが319MBです(前出の画面2を参照)。
実は、Windows Updateは、初代Nano Serverにとってつらいものがあります。Windows 10やWindows Server 2016のWindows Updateによる更新プログラムのダウンロードは、利用可能であればカタログ(更新ファイル情報)だけを含む小さなExpress(高速)インストールファイル(Windows10.0-KBXXXXXXX-x64-Express.cab)をまず取得し、その後、ローカルにインストール済みのファイルと比較して、更新が必要な差分のみをダウンロードするようになっています。
Nano Serverに高速インストールファイルへの対応が含まれているかどうかは分かりません。ですが現実は、Nano Serverは累積された更新プログラムの全てを含む、デスクトップエクスペリエンスやServer Coreインストール向けと同じフルインストールファイル(Windows10.0-KBXXXXXXX-x64.cab)をダウンロードするようになっています。
なぜなら、Windows Server 2016に限り、2017年10月以降、Windows Updateではフルインストールファイル(Windows10.0-KBXXXXXXX-x64.cab)で提供という措置が取られているからです。Windows Server Update Services(WSUS)に提供されるのも、フルインストールファイルだけです。
フルインストールファイルによる提供のきっかけは、2017年10月の累積更新プログラム「KB4041691(OSビルド14393.1770)」で高速インストールファイルのダウンロードが失敗するという不具合でした。この不具合は、同じ10月にリリースされた新しい累積更新プログラム「KB4041688(OSビルド14393.1794)」で修正されたはずですが、その後もフルインストールファイルでの提供が続いています(2018年6月までの時点)。
初期サイズ700MB程度だった初代Nano Serverは、小さなその体を更新するために、わざわざ自分よりも巨大な更新プログラムをダウンロードしているのです。その巨大な更新プログラムの大部分は、自分の更新には必要のないものです(画面4)。
前出の画面2をよく見ると分かるのですが、初代Nano ServerのベースOSイメージ(microsoft/nanoserverのlatestまたはsac2016タグ)もまた、公式のサポート終了日が過ぎた2018年5月、6月に更新バージョンが提供されて続けています。2018年6月時点でのOSビルドは「14393.2312」です。
更新バージョンの提供ということから見ても、実はサポートが継続されているのではないかと思えます。しかし筆者は、Microsoftは初代Nano ServerのベースOSイメージの提供を今、止めるわけにはいかない事情があるのだと想像しています。
その事情とは、Microsoft Azureにおける新しいコンテナ関連サービスの一般提供開始です。2018年4月には「Azure Container Instances」が、そしてこの6月には「Azure Kubernetes Service(AKS)」の一般提供が始まりました。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
これまで利用可能な「Azure Container Services」はLinuxコンテナーのみのサポートでしたが、新しい2つのサービスはLinuxコンテナーとWindowsコンテナーの両方をサポートします。AKSのWindowsコンテナーサポートは、まだプライベートプレビュー段階のようですが、Azure Container Instancesでは既に正式に利用可能です(画面5)。
ただし、現時点でデプロイおよび実行可能なWindowsコンテナーは、Windows Server 2016のServer CoreとNano ServerのベースOSイメージ、およびこれらのベースOSイメージで作成されたアプリケーションイメージだけのようです。Windows Server SACバージョンは受け付けてくれませんでした。おそらく、Windowsコンテナーのためのプラットフォームが、Windows Server 2016ベースなのでしょう。
Server CoreのベースOSイメージ(2016イメージはダウンロード5GB以上、展開サイズ10GB以上)はサイズが大きく、デプロイが完了し、コンテナが起動するまで、Linuxコンテナーと比べて圧倒的に時間がかかってしまいます。Nano ServerのベースOSイメージであれば、素早くデプロイして起動できます。公式ドキュメントで説明されているWindowsコンテナーのチュートリアルを試すには、Nano Serverの方が都合が良いというわけです。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
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