Microsoft AsiaのRalph Haupter氏は、アジアで人工知能の導入が功を奏している5つの分野を挙げ、その成果を語った。具体的には、「アクセシビリティー」「農業」「気候変動」「教育」「ヘルスケア」の5分野である。
Microsoft Asiaのプレジデントを務めるRalph Haupter氏は2018年6月29日、既にアジアではAI(人工知能)が、「アクセシビリティー」「農業」「気候変動」「教育」「ヘルスケア」という5つの分野で大きな成果を挙げていると述べた。Microsoftはこれらの分野の問題解決や生産性向上を、AIを活用したアプリやサービスを通して支援しているとしている。具体的には以下の通りだ。
アクセシビリティー面では、Microsoftは視覚や聴覚、認知、運動などに障害がある人々を支援している。例えば無料アプリの「Seeing AI」は、視覚障害がある人々のために、AIを活用して視覚的世界を聴覚的体験に変換する。すなわち、顔や感情、手書き文字といった視覚情報を識別し、音声に変換する。これによって、世界に2億8500万人いるといわれる視覚障害者のアクセシビリティーを高めている。
農業の分野では、Microsoftはインドの非営利団体であるInternational Crop Research Institute for the Semi-Arid Tropics(ICRISAT)と協力して、天候や土壌などのデータに基づいて作物の植え付けに最適な日を農家に助言する「AI Sowing App」を開発した。これは、過去30年間の気象データをAIによって分析し、最適な種まき期を予測する。
気候変動は、人類の健康やインフラ、自然システムに影響を及ぼしており、その主な原因は二酸化炭素の排出だとされている。Microsoftは、データセンターの運用とインフラの管理にAIを利用しており、データセンターの消費電力を削減している。具体的には、従来型のエンタープライズデータセンターと比べてMicrosoftのデータセンターは、エネルギー効率が93%高く、炭素効率性が最大98%優れているという。
同様に教育やヘルスケアの分野でも、Microsoftは積極的にAIを利用している。同社は「学校をやめる可能性の高い学生」をAIで予測するアプリを開発した。南インドのアーンドラプラデーシュ州にある1万校以上の学校で500万人以上の学生を対象に運用されている。これによって学校を卒業して、労働市場に参入する学生の数が増すことで、将来の経済発展に貢献する。
インドではヘルスケア分野でも、AIを活用して、患者の心臓病リスクを予測し、医師の治療計画を支援するシステムを運用している。心臓病は、世界の人々の死因のおよそ3分の1を占める。
Haupter氏は、これらの事例は一部であり、AIの可能性は拡大過程にあるとしている。そしてAIは人間の創造性を強化するだけでなく、思いやりや好奇心、より良い未来創造という熱意の要素も強化すると語った。
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