NECは、熱輸送効率が高い低圧冷媒を用いたデータセンター(DC)向け冷却技術を開発。空気より熱輸送効率が高い冷媒をでサーバラックの背面から放出される排気熱を吸熱し、建屋外に放熱する。外気温が高温でも対応可能で、消費電力を最大20%削減する。
NECは2018年6月29日、データセンター(DC)におけるサーバの冷却効率を従来比2倍にする「低圧冷媒を用いた圧縮放熱技術」を開発したと発表した。従来の空気循環冷却に代わる冷却技術で、夏場の高温環境でもDC全体の消費電力を最大20%削減するという。
DCでは、サーバを冷却するための空調電力が全体の3分の1から2分の1を占めるため、空調電力の削減は重要な課題となっている。気温が低い冬や寒い地域に設置したDCでは、サーバルームに外気を取り入れることで空調電力を削減する施策がとられているものの、気温が高くなる夏場は効果的に空調電力を削減することは困難だった。
NECが開発した技術は、地球温暖化係数(GWP)が小さいとされる低圧冷媒を用いて、サーバラックから排出された熱を、外気温が高温でも直接屋外に輸送して、放熱できる低圧冷媒を用いた流路設計技術。空気より熱輸送効率が高い冷媒を熱源の近くまで巡回させることで、サーバラックの背面から放出される排気熱を吸熱し、外気温が高温でも建屋外に放熱できるという。
低圧冷媒は、高圧冷媒と比べて安全性が高い一方、潜熱や圧力勾配が小さいため体積流量が大きくなり、冷媒をスムーズに流す配管設計が難しいとされていた。また、体積流量が大きくなるため、DC内に敷設する配管(配管径)が太くなり、設備工事が困難な上、冷媒温度を上げるための圧縮機が大規模化するという課題があった。
NECの新技術では、液体から気体に変化する(相変化する)際、大きな熱が移動するという低圧冷媒の物理現象を利用し、冷媒を円滑に流せる流路を設計。冷媒をサーバルーム内に引き込み、サーバラックからの排気熱がサーバルーム内に拡散する前に吸熱し、建屋外まで運んで放熱することを可能にした。これにより、空調機のファンが不要となり、空調電力の削減も期待できるという。
また、既存施設に施設しやすい複数本の細い配管(細径銅管)を採用し、長さを変えた流量の調節などにより、冷媒を均一に分配させる流路技術を開発。配管を急に曲げない、配管径を急に拡大/縮小しないといった流路抵抗小さくする配管設計も取り入れるなど、流路抵抗を小さくしながら、冷却システムの小型化を実現した。
NECでは、インド南部のDCで同技術の実証実験を実施。通常のDCのラックより2倍の発熱量となる7.5キロワットのラックで検証したところ、外気温35度の状況で、既設の空調機と比べて、空調電力を半減させ、実証ラックの総電力量20%削減できたことを確認したという。
NECでは今後、同技術の改良を続け、2020年度までに同技術を使った冷却システムの製品化を目指すとしている。
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