AIは、今後10年以上にわたってマーケティングのやり方を大きく変革する可能性を持っているという。では、マーケッターがAIブームに踊らされることなく、AIを利用した顧客エクスペリエンスを管理するには、何に注目すればいいのだろうか。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
人工知能(AI)のマーケティングへの活用が盛んにもてはやされている。AIは、マーケッターが日々携わる仕事の成果を高めるためのさまざまな“インテリジェント”機能を表す最新のバズワードであり続けている。マーケッターは、リアルタイムパーソナライズから音声による会話のやりとりまで、AIを利用した顧客エクスペリエンスをますます大規模に構築、管理するようになっている。
「AIは、今後10年以上にわたってマーケティングのやり方を大きく変革する可能性を持っている」と、Gartnerのリサーチディレクターを務めるブライアン・イェーガー氏は語る。
「AIブームが過熱する中、マーケティングリーダーは長期的な視野に立って、粘り強くじっくりと、どのようなアプローチでAIを活用するかを考えなければならない」(イェーガー氏)
AIは、洞察や直感をもたらし、リクエスト規模に合わせてスケールさせることができ、マーケッターにとって、個々の見込み客や顧客とのコンテキストに応じたきめ細かい関係の構築という長年の念願の達成に役立つ。そうしたAIの長期的な効果は、いかに先進的なマーケッターをもってしても、実現するのは数年先だろうが過小評価してはならない。
「2017 Gartner Research Circle」調査によると、ほとんどの組織がAIをビジネスに活用する戦略を研究または策定中だ。企業がAIに関する初期の実験を最も活発に行っている分野としては、顧客エンゲージメントとデジタルマーケティングが双璧だ。現在、さまざまな注目すべきアプリケーションが使われるようになっており、それらが今後数年間で普及しそうだ。
自然言語処理(NLP)の進化に伴い、人々がテキストや音声でコンピュータなどのデバイスと会話する場面が増えている。現在の実装は基本的なものだが、プラットフォームの機能が向上し、マーケッターが大量のデータにAIを適用すれば、人々が顧客として自身のコンテキストでデバイスと会話することが広く行われるようになる。
人々のデバイス操作状況からコンテキスト、意図、ジャーニーステージ(企業と顧客が関わる一連のプロセスの1つ)が抽出され、それらの情報を踏まえた傾向モデリング、機械学習、マシンビジョン、NLPを利用して、カスタマイズされたコンテンツ提供、各種提案、販売促進が行われる。
機械学習アルゴリズムは、数十億の広告インプレッションと数億のデバイスアイデンティティーをより分けてマッピングし、マーケッターに適切なメッセージが適切な人に届くことを確実に保証する。
AIがキャンペーンオーケストレーションの機能をより多く担うようになるとともに、マーケティング専門家がさまざまなトリガーやチャネル、コンテンツを関連付けてキャンペーンダイアログやジャーニー管理ワークボードを作成するのは、時代遅れになるかもしれない。
マーケティング技術全般にわたって、使いやすい分析機能の導入が進んでいる。こうした機能には、自然言語クエリ、自然言語による貢献分析、規範分析、ロゴ検出などがある。
組織内の他のリーダーと連携し、組織の全員が現行のAIプロジェクトについて、同じレベルの理解を共有するよう導く。さらに、データリソースのインベントリ作成と共有における優先順位を設定する。
AIに関する当面の取り組みでは、データを中心とした時間のかかるマーケティング課題に焦点を当てるとよい。時間とともに精度が向上する予測分析や規範分析のほか、膨大な数のデータ変数やコンテンツ変数のテストと最適化が、最初のユースケースの候補になる。
出典:How Artificial Intelligence Will Drive Transformative Change in Marketing(Smarter with Gartner)
Writer and marketing strategist
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