Microsoftは、セキュリティの強化やAIの普及推進策、AI機能を取り込んだ製品やサービスの提供開始などを発表した。パスワードを入力せずにログインしたり、暗号化によって、Azureで処理中のデータの漏えいを防いだりする機能が含まれる。
Microsoftは2018年9月25日、同社が米国オーランドで9月24〜28日に開催中の年次イベント「Microsoft Ignite 2018」で、「Microsoft Authenticator」(以下、Authenticator)や「Microsoft Threat Protection」(以下、Threat Protection)といったセキュリティの強化と、AI(人工知能)の普及推進策「AI for Humanitarian Action」などを発表した。
Authenticatorは、パスワードを入力せずにユーザーを認証する機能。これまでは、スマートフォンの「Microsoft Authenticator アプリ」を使って「Microsoft アカウント」などにサインインするサービスが提供されていた。今回Microsoftは、「Microsoft Azure Active Directory」(Azure AD)を利用したユーザー認証で、Authenticatorを利用できるようにした。「ほとんどのデータ漏えいはパスワードの解読から始まる。企業が日々使用するアプリケーションで、ログイン時のパスワード入力を不要としたことで、パスワードの時代の終わりを宣言する」としている。
Threat Protectionは、「Microsoft 365」向けにサイバー攻撃からの保護や検知、修復を支援するサービスだ。AIと人手を組み合わせて調査を行う。Microsoftでは、調査の迅速化と脅威の早期排除を可能とし、セキュリティ担当チームの負荷を軽減するという。
Microsoft Azure(以下、Azure)向けのデータセキュリティ機能「Azure Confidential Computing」もパブリックプレビューとして提供が始まった。これは、Azure上で処理しているデータを暗号化する機能。計算や分析などに使用しているデータにサイバー犯罪者がアクセスして発生するデータ漏えいを防ぐ。Microsoftは、使用中のデータの機密性と正当性を保護できるとしている。
AI for Humanitarian Actionは、Microsoftが2017年7月に開始した「AI for Good」の取り組みの3番目となるプログラムで、児童や難民の保護、災害対策、人権の尊重などの支援にAIを活用することを目指す。今後5年間にわたって4000万ドルを拠出する計画だ。
さらにMicrosoftは、AI機能を取り込んだ製品やサービスの提供を継続するという。その一環として、クラウドと連携した各種サービスの提供開始も発表された。
「Azure Machine Learning」には、最も効率的なアルゴリズムを識別してモデルの性能を最適化する自動機械学習機能や、FPGA向けのハードウェアアクセラレーションを備えたモデル、Azure Machine LearningのPython向けSDKなどが追加された。
「Microsoft Graph」と「Bing」のAI技術を組み合わせた新しい総合検索機能「Microsoft Search」は、2018年9月24日に「Bing.com」と「Office.com」で提供が始まった。
その他、顔認識機能によってビデオ会議中の背景をぼかす「背景ぼかし機能」や、音声テキスト変換機能によって会議の音声をテキストデータに変換したり録画に字幕を付けたりできる「会議記録」といった、「Microsoft Teams」のAI関連の新機能も、一般向けの提供が開始された。
データベース管理システム(DBMS)関連では、「Microsoft SQL Server 2019」のプレビュー版や「Azure Data Explorer」のパブリックプレビュー版、「Azure SQL DBハイパースケール」が発表された。
このうちSQL Server 2019プレビューは、新たにビッグデータ対応機能を備え、データベース管理システムの縦割り状態を解消するという。Apache SparkとHadoop Distributed File System(HDFS)が組み込まれており、大量のデータの取り込み、保存、分析を可能にする。さらに新しいコネクター機能によって、SQL ServerからOracleやTeradata、MongoDBといった他のDBMSに直接クエリを発行できる。
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