ガートナー ジャパンが実施した日本企業のデジタルビジネス推進に関する調査結果によると、デジタルビジネスを「理解しているが半信半疑」との回答はIT管理者層の4割近くを占めた。一方で7割以上の企業が、デジタルビジネスに強いテクノロジーベンダーが自社の競合となった場合、ネガティブな影響を受けると認識している。
ガートナー ジャパン(ガートナー)は2018年10月29日、日本企業のデジタルビジネス推進に関する調査結果を発表した。それによると、IT管理者層の4分の3は何らかの形でデジタルビジネスを理解しているとの結果が出たものの、「理解しているが半信半疑」との回答は4割近くに達した。
その一方で、AmazonやGoogleといったテクノロジーベンダーが自社の競合となった場合、ネガティブな影響を受けると認識している企業は7割以上に上った。
まず、デジタルビジネスについてガートナーは、「デジタルの世界と物理的な世界の境界を曖昧にすることにより、新しいビジネスデザインを創造すること」と定義している。目的はデジタル技術によって新ビジネスを立ち上げたり、既存のビジネスを変革したりすることだ。ガートナーによると、企業がデジタルビジネスを推進する動きは広がっているという。ただし、実際にデジタルビジネスを実現している企業は国内では増えておらず、2017年と2018年に実施した同社の調査から、いずれも全体の約1割にとどまっているという。
ガートナーは、こうしたデジタルビジネスに向けた活動を企業が推進する上で、経営層が最新技術のトレンドや、そのトレンドが自社ビジネスに及ぼす影響を理解する必要があると指摘する。経営層がこれらの影響を理解していないと、投資を判断する際に正しい意思決定を下せず、そもそもデジタルビジネス活動を開始できないか、活動を開始したとしても途中で頓挫してしまうからだ。
同社ではこうした経営層の「理解の壁」に突き当たる企業は多いとしている。2018年に実施された同社のWeb調査の結果を見ると、デジタルビジネスに対する日本企業のIT管理者層の理解度は、「理解していない」が全体の約4分の1(23.5%)にも達した。
調査結果を別の角度から見れば、IT管理者層の4分の3は何らかの形でデジタルビジネスを理解していることになる。だが、このような楽観的な見方はふさわしくないのだという。なぜなら「理解しており大胆な決断が可能」は10.5%、「理解しており最低限の決断が可能」は23.3%にすぎず、「理解しているが半信半疑」が38.1%を占めたからだ。
ガートナーのリサーチ&アドバイザリ部門でバイスプレジデントを務め、アナリストでもある鈴木雅喜氏はこの調査結果について次のように述べている。
「企業がデジタルビジネスに向き合う中で、大きな落とし穴があることを示唆している。4分の3の回答者が理解していると言っても、その中身が重要だ。実際には半信半疑で適切な投資判断ができるほどには機会とリスクを正しく理解できていない場合が6割を超えている。デジタルビジネスに向けた活動には経営層が深く関与する必要があり、活動初期だけではなく、アイデアの取得や実証実験など各フェーズで経営層の理解度を高めていく仕組みが欠かせない」
次にガートナーは、AmazonやGoogleといったテクノロジーベンダーが自社の競合となった場合の影響についても尋ねた。企業がデジタルビジネスへの取り組みを進める動機の一つに、将来の自社ビジネスに対する不安やリスクがあるからだ。
結果は、1割強の企業が「自社が破綻する恐れがある」と答えた。ネガティブな影響を受けると認識している企業の割合も、全体の7割以上に上った。
鈴木氏は、「社員全員がITリテラシーに優れている競合企業が現れたら、自社の未来はどうなるだろうか。こうした社員たちが日々組織の中でコラボレーションを経て新たなアイデアを次々と生み出したら、大きな脅威になる」と警鐘を鳴らしている。
さらに同氏は、「これまでインターネットから生まれた新しいビジネスの影響を最も大きく受けてきたのは小売業だった。現在は、新たなテクノロジー群がそこに加わることで、全ての企業が大きな影響を受ける時代に突入している。デジタルビジネスへの取り組みは容易ではないが、新たな成長機会が眠っている。全ての企業が取り組みを継続し、ブレークスルーを狙っていくべきだ」と述べている。
今回のガートナーの調査手法はWeb調査。調査対象は日本全国の従業員数500人以上のITユーザー企業に勤務する従業員。ITインフラに関わる企画や製品、ソリューションに対して決裁権がある、関与している、またはITインフラの戦略に関与しているマネジャー職が対象。有効回答数は515。
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