シェルスクリプトに挑戦しよう(8)条件の書き方“応用力”をつけるためのLinux再入門(28)(3/3 ページ)

» 2018年10月31日 05時00分 公開
[西村めぐみ@IT]
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変数と引用符

 シェルスクリプトの場合、文字列の引用符("")は必須ではないため、変数を参照する際の引用符も必須ではありません。

 しかし、原則としては付けておく方が安全です。変数を条件式の中で使う場合、引用符がないとエラーになって実行できなくなるケースがあるためです。

 次の例を見てみましょう。この「quottest1」スクリプトは、変数TESTSTRに1つ目の引数をセットし、TESTSCRの値がabcだったら「OK」、それ以外の時は「NO」と表示する、という内容です。

#! /bin/bash
TESTSTR=$1
if [ $TESTSTR = "abc" ]
then
  echo "OK"
else
  echo "NG"
fi
▲引用符の有無で処理の内容が変わる例(quottest1)

 ここでは、“変数TESTSTRの値がabcだったら〜”というつもりで「if [ $TESTSTR = "abc" ]」と書いています。しかし、TESTSTRが定義されていない場合は実行時に「if [ = "abc" ]」となり、文法上の誤りとなり実行できません。

$ chmod +x quottest1
$ ./quottest1 abc
OK	#←  1つ目の引数がabcなので「OK」と表示された
$ ./quottest1 aaa
NG	#←  1つ目の引数がabcではないので「NG」と表示された
$ ./quottest1 
./quottest1: line 3: [: =: unary operator expected
NG
	#↑  引数がないので変数TESTSTRが定義されておらず、ifの行がエラーになっている
▲実行結果(quottest1)

 これに対し、「if [ "$TESTSTR" = "abc" ]」としていれば、変数TESTSTRが定義されていない場合は「if [ "" = "abc" ]」となり、文法上の誤りはなくなります。

#! /bin/bash
TESTSTR=$1
if [ "$TESTSTR" = "abc" ]
then
  echo "OK"
else
  echo "NG"
fi
▲引用符の有無で処理の内容が変わる例(quottest1を加工)
$ ./quottest1 abc
OK	#←  1つ目の引数がabcなので「OK」と表示された
$ ./quottest1 aaa
NG	#←  1つ目の引数がabcではないので「NG」と表示された
$ ./quottest1 
NG	#←  引数がない=1つ目の引数がabcではないので「NG」と表示された
▲実行結果(quottest1)

●空白のあるファイル名の場合

 ファイル名が入っている想定の変数に、空白入りのファイル名が入っているような場合は、引用符がないとうまく実行できません。

 例えば、次の例を見てみましょう。変数FILENAMEにセットされている名前のファイルが存在しているかどうかを調べる、というスクリプトです。

 使用イメージとしては、変数FILENAMEにセットするファイル名はキーボードから入力したり、ファイルから入力したりしてチェックするというものですが、ここでは、実験のために変数FILENAMEには直接「01 My Song.mp3」という文字列をセットしています。

 そして、$FILENAMEの引用符の有無で実行結果がどのように変わるかを見ています。1つ目のif文は引用符なし、2つ目のif文は引用符ありです。

#! /bin/bash
FILENAME="01 My Song.mp3"
if [ -f $FILENAME ]			#←  1つ目のif文
then
  echo "$FILENAME is a regular file"
else
  echo "$FILENAME is not a regular file"
fi
if [ -f "$FILENAME" ]			#←  2つ目のif文
then
  echo "$FILENAME is a regular file"
else
  echo "$FILENAME is not a regular file"
fi
▲ファイル名に空白が入っている場合(quottest2)

 1つ目のif文は、実行時は「[ -f $FILENAME ]」が「[ -f 01 My Song.mp3 ]」となります。これは、「[ -f」に対して「01」「My」「Song.mp3」の3つの引数を渡したことになるのでエラーとなります。

 これに対し、2つ目のif文は「[ -f "$FILENAME" ]」が「[ -f "01 My Song.mp3" ]」となるので、正しくファイルの存在をテストできます。

 実際に実行すると以下のような結果となります。ここでは、動作テスト用に「touch」コマンドであらかじめ「01 My Song.mp3」という名前のファイルを作成しています。

$ touch "01 My Song.mp3"	#←  動作テスト用にtouchコマンドでファイルを作成
$ chmod +x quottest2
$ ./quottest2
./quottest2: line 3: [: too many argument	#←  1つ目のif文がエラーになった
01 My Song.mp3 is not a regular file	#←  エラーのためelse以下が実行されている
01 My Song.mp3 is a regular file	#←  2つ目のif文の実行結果
▲実行結果(quottest2)

 引数なしで実行すると1つ目のif文がエラーになるため、エラーメッセージが表示されています。さらに、ifの判定もFALSEとなっているため、「〜is not a regular file」というメッセージが表示されています。

 これに対し2つ目のif文は正しく実行されており、「〜is a regular file」というメッセージが表示されています。

●コマンドラインの場合

 コマンドラインでも事情は同じです。先ほどの例と同じように、環境変数に空白入りのファイル名をセットして、「ls」コマンドの引数として実行してみましょう。

 変数FILENAMEに「01 My Song.mp3」をセットし、(1)「ls $FILENAME」のように引用符なしで実行した場合と、(2)「ls "$FILENAME"」と引用符ありで実行した場合を比較しています。

$ FILENAME="01 My Song.mp3"
$ ls $FILENAME			#←  (1)引用符なしで実行
ls: 01: No such file or directory
ls: My: No such file or directory
ls: Song.mp3: No such file or directory
(lsコマンドは「01」と「My」と「Song.mp3」という3つの引数を受け取っている)
$ ls "$FILENAME"		#←  (2)引用符ありで指定
01 My Song.mp3
(lsコマンドは「01 My Song.mp3」を受け取った)
▲コマンドラインで試してみた例

筆者紹介

西村 めぐみ(にしむら めぐみ)

PC-9801NからのDOSユーザー。PC-486DX時代にDOS版UNIX-like toolsを経てLinuxへ。1992年より生産管理のパッケージソフトウェアの開発およびサポート業務を担当。著書に『図解でわかるLinux』『らぶらぶLinuxシリーズ』『Accessではじめるデータベース超入門[改訂2版]』『macOSコマンド入門』など。2011年より、地方自治体の在宅就業支援事業にてPC基礎およびMicrosoft Office関連の教材作成およびeラーニング指導を担当。


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