AWSが自社開発プロセッサやNitro Systemを説明、新たなインスタンスタイプを次々生み出すための武器100Gbps接続のC5nインスタンスも発表

Amazon Web Services(AWS)は2018年11月27日、サーバの各種機能をオフロードできる技術群「Nitro System」の展開について紹介。その延長線上で、Armベースのプロセッサ「AWS Graviton Processor」を自社開発したことを明らかにした。

» 2018年11月27日 21時17分 公開
[三木泉@IT]

 Amazon Web Services(AWS)は2018年11月27日、米ラスベガスで開催中のAWS re:Invent 2018で、サーバの各種機能をオフロードできる技術群「Nitro System(ナイトロシステム)」の展開について紹介。その延長線上で、Armベースのプロセッサ「AWS Graviton Processor」を自社開発したことを明らかにした。AWSは同時に、Nitro System、Graviton Processorを採用した新EC2インスタンスも発表している。

 Graviton Processorは、CPUコアについてはArmを採用。これに、AWS(正確にはAmazon)が2015年に買収したAnnapurna LabsのASICを組み合わせ、パッケージ化している。後述のNitro Systemによる各種処理のオフロード機能を活用、EC2インスタンスでは高パフォーマンス/高コスト効率を実現できるという。

Graviton Processorを採用したA1インスタンスを発表

 Graviton Processorを採用したインスタンスとしては、5種のA1インスタンスを一部のリージョンで提供開始した。このうち最大サイズの「a1.4xlarge」は、16 vCPU、32GB RAM、EBS(ローカルストレージ)アクセス帯域幅3.5Gbps、ネットワーク帯域幅最大10Gbpsというスペック。Webサーバやキャッシュ、マイクロサービスなどのスケールアウト型処理を想定している。

 既存のアプリケーションは、「スクリプト言語で書かれていれば多くの場合そのままA1インスタンスで動作可能であり、ネイティブアプリケーションは再コンパイルが必要」としている。

 Graviton Processorは、前述の通り、AWSがNitro Systemと呼ぶ技術群をベースとしている。同社は既にNitro Systemを採用したEC2インスタンスを数種発表しているが、今後も仮想インスタンス、ベアメタルインスタンスの双方で、この技術群を活用し、さらにインスタンスの選択肢を増やしていくという。

 Nitro Systemは、Annapurna LabsのASICを活用し、SR-IOVを含めた通信処理/フィルタリング処理、ローカルNVMeストレージアクセスにおける暗号化処理などのオフロードを行う。また、ハイパーバイザにはKVMベースの、大幅に軽量化したものを採用している。これにより、「物理サーバのCPUリソースは仮想化、ストレージ、ネットワークの処理から解放され、アプリケーション処理に専念できる」とAWSグローバルインフラ担当バイスプレジデント、ピーター・デサンティス(Peter DeSantis)氏は話した。

 ストレージやネットワーク処理のオフロード自体は、Mellanoxをはじめ複数のベンダーが取り組んでおり、特にユニークだとは言い切れない。AWSの場合、軽量ハイパーバイザを組み合わせるとともに、EBSやセキュリティチップなどの同社が提供している機能に特化して最適化を図っている点が注目される。

 デサンティス氏は、「新たなプロセッサへの対応も、Nitro Systemを組み合わせるだけで実現できる」と話した。AWSとしては、特に高スペックなインスタンスを提供する際に、サーバを一から設計する作業から解放され、ニーズに応じて今後ますます多くのインスタンスタイプを提供できると説明した。

 Nitro Systemを採用したインスタンスとしては、既にC5、C5dなどがある。今回は、C5nインスタンス5種を発表した。そのうち最大サイズのインスタンスは、100Gbpsのネットワーク帯域幅が提供可能という。最新のドライバを使い、複数のトラフィックフローを構成することで、他の同様なインスタンスや、S3バケット、Amazon RDS, Amazon ElastiCache、Amazon EMRなどとの100Gbps通信ができるという。

100Gbps接続するC5nインスタンス

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