奈良大学の学生プロジェクトが、Microsoftの「Cognitive Services」を活用し、216体の仏像の写真を基に、表情を分析して推定年齢と感情を調査。仏像の平均年齢は38歳で、飛鳥時代の仏像の表情は「喜び」の数値が高いなど、新たな視点から仏像の特色を明らかにした。
奈良大学の学生プロジェクトが、Microsoftの学習済みAI「Cognitive Services」を活用して、216体の仏像の表情を分析し、推定年齢や感情を割り出した。
同プロジェクトは、仏像の写真から顔貌を客観的に分析する試みで、Cognitive Servicesの「Face API」で年齢、性別、笑顔など、顔の特徴を検出し、「Emotion API」で表情から読み取れる感情を測定した。
その結果、測定できた仏像の平均年齢は38歳で、西大寺(奈良県奈良市)の叡尊上人像の83.5歳が最高年齢との結果になった。
興福寺(奈良県奈良市)の阿修羅像は、正面からの写真を用いて測定したところ、推定23歳という結果になった。
感情分析では、「怒り」「軽蔑」「嫌悪感」「恐怖」「喜び」「中立」「悲しみ」「驚き」の8つの感情を数値化し、傾向を分析。飛鳥時代の仏像の表情は「喜び」の数値が高く、奈良時代と鎌倉時代では「怒り」の数値が高いという傾向が分かった。
また、仏像の種類ごとに各感情測定値の平均値を算出したところ、悟りを開いた「如来」や悟りを求めて修行する「菩薩」をはじめ、多くの仏像で「中立」の数値が高かった。あえて感情を表さない中立的な表情にすることで、拝む者の心の状態によってさまざまな表情で認識される効果を狙った造像の可能性もあるという。
なお、今回使用したAPIは、人間の表情を読み取るもので、仏像の場合、像の向きやライティングといった写し方の違いによって表情が異なって見え、検出数値が変動するという。そのため、結果はあくまで仏像の傾向を読み取るための参考値としているが、調査では、人間の表情に近い「僧形」像では比較的実年齢に近い数値が得られたという。
奈良大学のWebサイトには、同研究成果を基にした特設サイト「Buddience 〜仏像の表情を科学する〜」が開設されている。顔写真をアップロードすると、近い表情の仏像を紹介してくれるコーナー「Buddha Matching」も用意されている。
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