2019年は、DXの“現実的な解”を求める企業が急増し、既存業務プロセスの効率性追求などの取り組みが増えるという。一方、対話型AIやスマートフォン接続型のAR/VRヘッドセットのビジネス用途が広がるなど、DXを推進する新たなイノベーションアクセラレーターの活用が進む見通しだ。
IDC Japanは2018年12月11日、2019年の国内IT市場でカギとなる技術や市場トレンドの動向を10項目にまとめたレポート「Japan IT Market 2019 Top 10 Predictions」を公開した。
IDCでは、前回のレポート(2017年12月発表)で、同社がICT(情報通信技術)を支える基盤と定義する「第3のプラットフォーム」を構成する「クラウド」「モビリティー」「ビッグデータ/アナリティクス」「ソーシャル」の4分野の技術が試行段階から、技術を活用したビジネス変革や新規ビジネス創出の段階に入っているという見方を示した。この動きは、換言すれば、イノベーションの創出や、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指したものだ。
2018年は、国内外とも、世界の多くの企業が競争力強化や新たな成長機会獲得のためにDXの実現を競っている状態。また、そうした企業のDXへの取り組みの強化や拡大が、第3のプラットフォームの技術やAI(人工知能)、IoT(Internet of Things)といったイノベーションアクセラレーターに対する支出を拡大させていると分析する。
一方、DXの実現に至る道は平たんではなく、進化する技術への対応、「デマンドサイド(企業)/サプライサイド(ベンダー)」の双方における人材不足の解消、DXに欠かせない社内外データの有効な活用に向けた道筋、DXにふさわしいITインフラの構築など、さまざまな課題が顕在化しているとも指摘する。
2019年は、そのような現状の課題を克服し、イノベーション創出やDXを実現するため、デマンドサイド/サプライサイドの双方が、これまでの成功体験にこだわらず、「自己変革」することが必要になるという。
このような見解を基にIDCが予測する2019年の国内IT市場動向の10項目と概要は、以下の通り。各項目とも、市場動向を受けてのITサプライヤー向けの提言も示されている。
DXに取り組む企業は、今後も増加する。実証実験(PoC)段階にとどまる企業や、取り組みが効果を生まない企業も少なくなく、結果的には「変革」「イノベーション」を諦めるケースも多いが、そうした企業でもデジタル化への歩みを止めることはできない。
結果として、デジタル化の目的が分かりやすく、効果を測定しやすい既存業務プロセスの効率性追求などに取り組む企業が増え、そうした動きが第3のプラットフォームやイノベーションアクセラレーターなどのデジタル関連支出の拡大を下支えする。
変革やイノベーションを追求するデジタル先進企業の支出パターンや規模とは異なるものの、ITサプライヤーにとっては「パッケージ化されたデジタルソリューション」のビジネス機会が広がる。
海外で拡大する「働き方の未来(Future of Work)」の実現に向けた取り組みに刺激され、国内でもその実現を目指すワークカルチャー、ワークスペース、ワークフォースの三位一体の改革が始動する。
働き方の未来の目的は、持続可能な競争優位性を獲得すること。企業の効率性向上や、顧客に優れたエクスペリエンスを提供するといった優位性につながる。ただし、働き方改革を続けることが働き方の未来に自動的につながるわけではない。
ITサプライヤーは、自らが働き方の未来の先導者になることを通じて、必要なITソリューションを開発すべきである。
複数のクラウドを適材適所で活用する手法が広がる中、そうしたクラウド活用がシステムの複雑化やサイロ化を助長している。システムごとに見ると、コストの最適化など、一定の効果はあるものの、一方で、運用管理の複雑化により、ガバナンス、リスク管理、コンプライアンス面や、ビジネスとITの全体最適化、DXの推進などの障壁になるといった課題が顕在化している。
こうした題を解決し、企業組織全体としてのクラウド最適化を実現するために、CoE(Center of Excellence:組織横断的な専門集団や研究拠点)の重要性が高まるとみている。CoEとは、新技術、導入・運用ノウハウ、ITアーキテクチャ、産業ノウハウなどの知見の集約とその活用を促す取り組みで、ビジネス目標を達成するためのハブとなるイニシアチブでもある。
ITサプライヤーは、マルチクラウドやハイブリッドクラウドにおける自社の製品・サービスのポジションを明確化すべきである。
IoTを顧客向けの製品・サービスの付加価値創出や新規ビジネスに役立てる用途に使う企業が増えるにつれ、IoTソリューションのステークホルダーが増加し、ステークホルダー同士を結び付けるエンゲージメントポイントも増加。
エンゲージメントポイントの増加によって、IoTソリューションの提供側は、複雑化、多様化する利用側の課題やニーズを正確に把握し、サービス品質にリアルタイムに反映させる必要がある。
さらにこの結果、各ステークホルダーが基幹系システムで扱うデータの管理、活用も複雑化する。
従って、SoR(Systems of Record:従来型の基幹業務システム)の分野でも、データを一元的かつ効率的に扱う仕組みを整えることが肝心になる。
ITサプライヤーは、複数のステークホルダーのIoTデータや基幹系システムのデータを一元的に管理できるプラットフォームの構築と、企業が部門間でデータをシームレスに扱えるようにすることを目的とした組織変革アドバイザリーを提供することが重要になる。
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