NECは、センサーから収集する時系列データをAIで分析し、迅速かつ高精度にシステムの状態を判別する「時系列データ モデルフリー分析」技術を開発。プラントなどの社会インフラ施設の運用監視などに適用することで、異常検知、障害診断、故障予測などが可能になる。
NECは2018年12月12日、センサーなどから収集した時系列データを基に、迅速かつ高精度にシステムの状態を判別するAI技術「時系列データ モデルフリー分析」を開発した。発電所などのプラントや道路・橋梁、鉄道・自動車など、社会インフラの運用監視に適用することで、異常検知、障害診断、故障予測が可能になるという。
この技術は、プラントなどの社会インフラ設備に設置されたセンサーから収集した時系列データの特徴を抽出(変換)し、現在の状態が過去のいつの状態と類似しているかを判断する技術。これにより、現在の状態が正常か、異常か、異常の前兆動作かといった瞬時の判断が可能になる。
具体的には、まず、収集した時系列データを一定時間ごとの部分時系列(セグメント)に分割し、各セグメントに内在する特徴的な動きをディープラーニングで繰り返し学習することで、時系列データをコンパクトなバイナリデータに変換する「特徴抽出エンジン」を自動生成する。(下図の「学習フェーズ」)
なお、時系列データの特徴を抽出する特徴抽出エンジンは、照合検索に適した特徴抽出のため、データの時間的な変化とセンサー間の関係性の2つに着目し、それぞれの特徴を抽出する内部エンジン(特徴エンジン)を2つ持つ。これらの結果を合成して、最終的に特徴をバイナリデータとして変換する。ディープラーニングでは内部の両エンジンで同時に学習し、NEC独自の学習指標で効率的な学習を実現するという。
次に、この特徴抽出エンジンを使って、収集した時系列データを、セグメントごとに、特徴を抽出したバイナリデータに変換して、「特徴データベース」に格納する。バイナリ形式にすることで、データ量が圧縮されて、高速な検索が可能になる。(下図の「蓄積フェーズ」)
そして、現在の状態における時系列データの特徴を抽出したバイナリデータを検索キーとして、特徴データベースから類似したバイナリデータを検索することで、現在の状態に類似した過去の状態を見つけることができ、運用対象の状態を判断できるようになる。(下図の「監視フェーズ」)
例えば、時系列データ モデルフリー分析をプラントなどのシステムの運用監視に適用した場合、異常検知や障害診断、異常の前兆動作の把握による故障予測が可能になる。障害診断や故障予測は、現在の状態を、過去に発生したさまざまな障害時のデータの特徴と比較することで、熟練監視員などが経験に基づいて行っているデータの異常点の発見と同様のことをAIで実現するものだという。
これにより、万が一、障害が発生しても、適切なリカバリーを実施することで障害復旧期間を短縮。また、障害の発生前に共通して現れるデータの特徴と比較することで、障害の発生前と現在が同じ状態になったことを検知し、故障が特定時間後に発生する可能性を事前に検知・予測できるという。これにより、事前の部品交換や系統の切り替えなど、予防的な対応が可能になるとしている。
NECによると、現在のシステムや設備などの運用監視は、数式などを用いて対象から得られるデータをモデル化し、システムがモデル通りに稼働しているかどうかを判断する方式が大半だが、この方式ではモデルの構築、検証、評価(チューニング)に時間と手間がかかるという。
新技術では、対象から得られるデータをモデル化せず(モデルフリー)に、データの時間的な変化やデータ間の関係を特徴として抽出し、バイナリデータに変換して、その比較で対象の状態を判断することで、短時間での状況判別を可能にしている。
また、少量のデータしかない早期の段階から活用可能で、運用しながら精度を向上させることができるため、スモールスタートが可能な上、モデル化が不要のため、低コストかつ短期間での導入が可能になるとしている。
NECでは、2019年度中に火力発電所での実用化を目指しており、実証・検証を重ねて、他の社会インフラなどへも適用範囲を拡大していく計画だ。
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