IDC Japanの市場予測によると、情報セキュリティの国内市場規模は2022年に1兆3271億円に達する。内訳は、セキュリティソフトウェアが2943億円(全体の約22%)。アプライアンスが614億円(同約5%)。セキュリティサービスが9714億円(同約73%)。
IDC Japanは2019年1月17日、国内のセキュリティ市場について2018〜2022年の売上額予測を発表した。同予測は、2018年上半期までの実績に基づいたもの。
セキュリティソフトウェアとセキュリティアプライアンス製品、セキュリティサービスの3つについて予測した。
2018年の国内セキュリティソフトウェア市場では、フィッシング攻撃やビジネスメール詐欺などのメール攻撃が増加したことから、メッセージングセキュリティへの需要が高まった。
これに対してセキュリティアプライアンス市場では、ランサムウェア攻撃やファイルレスマルウェア攻撃などによる不正アクセスのリスクが高まったことで、IDS/IPS(Intrusion Detection System/Intrusion Protection System)への需要が拡大した。
だが、セキュリティアプライアンス市場の6割超を占めるファイアウォール/VPN(Virtual Private Network)とUTM(Unified Threat Management)の成長率は鈍化した。
これらを受けて同社では、セキュリティソフトウェア製品の2018年の市場規模を対前年比3.0%増の2558億円と見込んだ。そのうちSaaS(Software as a Services)型セキュリティソフトウェアの市場規模については同16.1%増の297億円、セキュリティアプライアンス製品の市場規模については同1.0%増の538億円とした。
国内セキュリティサービス市場では、UTMやIDS/IPS、サンドボックスエミュレーション技術などを活用した非シグネチャ型外部脅威対策製品が注目を集め、それらに向けた導入や構築、監視といったセキュリティサービスに対するニーズが高まった。
IDCは、2018年のセキュリティサービス市場規模については、対前年比4.5%増の7924億円と予測した。
今後は、2019年に主要20カ国/地域(G20)首脳会議やラグビーワールドカップ、2020年に東京オリンピック/パラリンピックの開催を控えており、こうした国際イベントではサイバー攻撃の多発が懸念される。IDCでは、重要社会インフラへのサイバー攻撃の対策需要が高まると見ている。
さらに、2018年5月に適用が始まったEU一般データ保護規則(GDPR)など、海外のプライバシー保護法の規制によって、外部脅威対策製品ばかりでなく内部脅威対策製品へのニーズも高まり、需要が拡大すると同社では予測する。
こうした背景から、国内セキュリティソフトウェア市場の、2017〜2022年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)を3.4%と見込み、市場規模は2017年の2484億円から2022年には2943億円に拡大すると予測する。
中でもSaaS型セキュリティソフトウェア市場は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展によってクラウドサービスの活用が増えると見ており、2017〜2022年のCAGRが14.2%で、市場規模は2017年の256億円から2022年には497億円への拡大を見込む。
国内セキュリティアプライアンス市場では、非シグネチャ型マルウェア検出技術の活用やAI(人工知能)を活用した高度な脅威インテリジェンスと相互連携できるUTMやIDS/IPS、未知の脆弱(ぜいじゃく)性を狙ったDDoS(Distributed Denial of Service)攻撃を防ぐIDS/IPSへのニーズが高まるとIDCは見ている。同市場の2017〜2022年のCAGRは2.9%で、市場規模は2017年の533億円から2022年には614億円に拡大すると予測した。
国内セキュリティサービス市場についてIDCでは、DXの進展によってハイブリッド環境下で構築、運用されるITシステムが増加すると予測した。その結果、オンプレミス環境に加え、クラウド環境へのセキュリティシステムの構築や運用管理サービスの需要拡大と重要社会インフラ事業者でのセキュリティサービスのニーズが高まり、2017〜2022年のCAGRは5.1%で、市場規模は2017年の7581億円から2022年には9714億円に拡大すると見ている。
IDC Japanでソフトウェア&セキュリティのリサーチマネージャーを務める登坂恒夫氏は次のように述べている。
「セキュリティ製品やサービスを提供するサプライヤーは、AIを活用した高度な脅威インテリジェンスをプラットフォームとした製品やサービスの連携ソリューションを訴求すべきだ。これによって、セキュリティプロセスを自動化することで高度なサイバー攻撃によるセキュリティ被害を最小限に抑えられ、サイバーレジリエンスを高められる」
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