データとアナリティクスは、もはや事後的なものではない。デジタルビジネストランスフォーメーションに不可欠であり、ビジネス価値の創出に一段と大きな役割を果たすようになっている。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
デジタルビジネスが拡大する中、データとアナリティクスは進化を続けている。ITリーダーはデータとアナリティクスにどのように投資すべきか。Gartnerの専門アナリストが見解を披露する。
データとアナリティクスへの投資の基本原則は、ビジネス成果にフォーカスすることと、人への投資を大幅に強化することだ。技術の検討は最後に行う。データとアナリティクスはビジネス、コミュニティー、さらにはわれわれ個人の生活のあらゆる面に関わるようになってきているため、データ用語を使ってコミュニケーションができること――つまり、データリテラシー(活用能力)は、組織として備えるべき新たな要件となっている。
ビジネス価値の発見と定量化も極めて重要だ。それによって客観的な目標や成果を設定することで戦略を社内に説得し、浸透させることができるからだ。組織は、データ主導ビジネスで野心的な目標を掲げたら、それに伴う期待や考え方、行動への大きな影響を考慮する必要がある。すなわち、データとアナリティクスに加え、“データ主導”の約束を果たすための機能への投資を、慎重な、調整された継続的なアプローチで進める必要がある。
端的に言えば、ITリーダーは、データとアナリティクスに投資していかなければならない。基本的に、これらがなければデジタルビジネスは成り立たない。データはアナログビジネスにも存在する。だが、デジタルビジネスではデータはより漠然としており、よりリスキーだが、より価値が高い。アナリティクスは、新しいインテリジェントな拡張されたビジネス方法を支えている。
組織がまだデジタルビジネスプラットフォームの導入を決めていなくても、担当者がデータとアナリティクスを利用してビジネス成果を高めようとしているなら、データとアナリティクスを投資計画の中心に据える必要がある。まず理解しなければならないのは、「技術の調達は簡単な部分だ」ということだ。従業員の適切なスキルを成熟させることや、組織として一丸となって取り組みを行えることも、同じように重要だ。
50%近くの組織は、ITプロジェクトやデータとアナリティクスのプロジェクトについて、投資対効果の詳細な事前検証を行わない。だが、データとアナリティクスに投資する際は、きちんとした手順を踏んで、合理的な目標を設定しておくことが重要だ。
ITリーダーは、以下の3つに重点を置いてデータとアナリティクスに投資すべきだ。
モダナイズしたプラットフォームでセルフサービス、アジリティ、高度な洞察をサポートする。IT部門がデータウェアハウスをプロビジョニングし、レポートを作成していた従来のBIプラットフォームは、数十年にわたって組織に貢献してきた。だが、現在では、アジャイルデータモデリングやビジュアル探索、拡張アナリティクスをサポートするモダンなアナリティクスおよびBIプラットフォームが最先端を行っており、より優れた洞察をより迅速に提供する。
モダンアナリティクスおよびBIツールにより、ビジネスユーザーはダッシュボードのオーサリングや、場合によってはデータの準備など、さまざまな高度な作業を行える。これらは、教室でのトレーニングを最小限受けるだけでできるようになる。今ではツールは使いやすくなり、大抵の場合、オンラインヘルプを提供しているからだ。本格的にセルフサービスに移行するには、IT部門はデータの価値を啓発し、ベストプラクティスを促進し、ベストプラクティスを共有するためのフォーラムを提供しなければならない。
IT部門は、インフラの運用管理や製造管理の支援に特化していきたいのでなければ、付加価値の低い仕事の一部を手放し、ビジネスユーザーが責任を分担できるようにする必要がある。一部の組織では、ビジネスユーザーは権限の強化を求めているため、役割と責任を明確にすることが重要だ。
データとアナリティクスは、もはや事後的なものではない。デジタルビジネストランスフォーメーションに不可欠であり、ビジネス価値の創出に一段と大きな役割を果たすようになっている。データ主導の戦略を策定するには、データから出発すべきだ。「このデータやこうした洞察によって、顧客への価値提案や自社の基本的な仕事のやり方を、どのように根本的に変えることができるか」といったことを検討するとよい。
さらに、ビジネス部門とともに、データ主導の企業としてのビジョンを構築する必要もある。情報をベースにした成果(例えば、デジタル資産の社内外での収益化やビジネス洞察の向上など)を洗い出し、それらに優先順位を付ける。また、データ主導のコンピテンシーの全社的な育成に投資することも必要だ。こうしたコンピテンシーは成功に欠かせない。
ITリーダーは、ビジネス成果につながるようにデータとアナリティクスの戦略的な優先度を高めなければならない。ほとんどのデジタルビジネスでは、目標や目的を達成するために、これを実行する必要がある。すなわち、社内の全ての人とモノがデータとアナリティクスを活用し、全ての意思決定やプロセス、行動を最適化できるようにしなければならない。
そのためには、イノベーションを促進する投資と基幹技術のリノベーション投資のバランスを取る必要がある。イノベーションを促進する投資は、AI(人工知能)、機械学習、ブロックチェーン、仮想/拡張現実、IoT、デジタルツインといった先進技術分野などを対象に行う。基幹技術のリノベーション投資は、継続的なインテリジェンス獲得をサポートするアジャイルなデータ中心アーキテクチャの構築を目的としている。
ここで重要なことがある。フェイクニュースやフェイクストーリーが横行する現在、データとアナリティクスの活用を成功させるには、プライバシーを尊重し、デジタル倫理を推進する信頼、説明責任、ガバナンス、セキュリティの基盤を構築することが、前提として必要になるということだ。
新しい役職(最高データ責任者など)や職務を設けたり、データを資産として扱ったり、データリテラシーやフルーエンシー(高度なリテラシー)を全社的に育成したりするには、投資をしなければならない。創造性やイノベーションを刺激するには、さまざまなデータ、考え方、チームを活用する新しい仕事のやり方や、新しいデータ主導アプローチの確立が必要になる。
データとアナリティクスへの投資は、技術を購入するだけにとどまらない。成功の決め手は、適切な組織モデルを確立することにある。最適な組織モデルでは、中央チームと分散された多数のチームが協力して仕事に当たる必要がある。
こうした考え方自体は十分シンプルなものだが、データとアナリティクスのリーダーは、バランスの多様なバリエーションの中から自らの組織に最適なバランスを選択しなければならない。各ローカル部門はデータエンジニアリング、データサイエンス、業務知識に強い人材を組み合わせた機能横断チームを持たなければならない。分散チームがアナリティクスプロトタイプ、パイロットシステム、または本番ソリューションを作成する義務については、明確に定める必要がある。
出典:Analyst Answers: How IT Leaders Should Invest in Data and Analytics(Smarter with Gartner)
Manager, Public Relations
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