Google Cloudのハイブリッドソリューション「Cloud Services Platform」はどうなるのか聞いた他とはどこが違うか(2/2 ページ)

» 2019年03月14日 05時00分 公開
[三木泉@IT]
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 また、ロティ氏は、「ほとんどの企業は既にオンプレミスのインフラに対して大きな投資をしており、可能な限りこれを活用したいと言っている。つまり、CSPでは既存の投資を生かしながら、新たなITのやり方をオンプレミスに持ち込むことができる」と付け加える。

 では、オンプレミスへのCSPの導入作業は誰がやるのか。ストレージ一つをとっても、環境はばらばらではないのか。ドナルドソン氏は、「だからこそ、当初はVMware vSphere 6.5環境をターゲットとする。vSphereがストレージアクセスを抽象化するため、導入は容易になる。一般的な企業では、ほとんどどこでもvSphereを使っているため、問題はない」と話した。これに関してVMwareと何らかのパートナーシップを結んでいるかどうかは知らないという。だが、パートナーシップの有無にかかわらず、オンプレミスのvSphere環境に加え、例えばVMware Cloud on AWSクラスタ上への導入も、理屈としてはあり得ることになる。

 CSPのAzure StackやAWS Outpostsとのもう一つの根本的な違いは、他社のハイブリッドソリューションがIaaS(Infrastructure as a Service)レベルであるのに対し、CSPがCaaS(Container as a Service)レベルだという点にある。

 これについて、「一般企業はコンテナやマイクロサービスに興味を持っているにしても、現実にはアプリケーションをコンテナだけで構成することは少ないのではないか。Google Cloudは、こうした企業に、『できるだけあらゆるアプリケーションについてコンテナ化を進めるべきだ』と言いたいのか」という表現で聞いてみた。ドナルドソン氏の答えは次の通りだ。

ジョナサン・ドナルドソン氏(左)とオィヴィン・ロティ氏(右)

 「典型的な一般企業は、自身がソースコードを持たないパッケージアプリケーションや、マイクロサービスにリファクタリングする価値を見いだせないアプリケーションを持っている。こうしたアプリケーションについては、自社のデータセンターやGCP上で、仮想マシンとして動かしてもらって構わない。つまり、こうしたアプリケーションの運用は、(サーバ仮想化によって)既に解決された問題だ。

 解決されていないのは、『企業のよりクラウドネイティブなスタイルへの移行をどのように助けるか』という問題だ。私たちは、この次の進化へのステップに注目している。私たちがターゲットとしている顧客が望むような、オンプレミスとマルチクラウドにまたがって一貫した環境を提供できるようなものは、これまでに存在しなかった。CSPの狙いは、まさにここにある」

 では、例えばRed Hatの「Red Hat OpenShift Container Platform」やPivotal/VMwareの「Pivotal/VMware PKS」とは、競合することになるのだろうか。

 ドナルドソン氏はOpenShiftやPivotal/VMware PKSとの、2つの違いを指摘する。

 第1は、これらがオンプレミスに構築し、ユーザー側が運用する製品であるのに対し、CSPはマネージドサービスである点。第2はOpenShiftやPKSのように、多様な付加価値機能をデフォルトで提供しない点だ。

 「これらの製品が適している企業は確実に存在する。だが一方で、『こうした製品の持つ多数の付加機能は要らない、単純にクラウドとアプリケーションの開発、デプロイ、運用を一貫してできる環境が欲しいだけだ』という企業顧客も多い。どうすればマルチクラウド対応の機動的なITに移行できるかが、こうした顧客の持つ課題だ。つまり、OpenShiftやPKSとCSPは、別の問題を解決しようとしている」(ドナルドソン氏)

 CSPに対する一般企業の関心の高さを、ドナルドソン氏は次のように表現する。

 「CSPを発表して2、3週間のうちに、α版の利用申し込みは、数千に達した。当然ながら、顧客拠点への導入と運用のサポートを通じて、さまざまなことを学び、製品に改善を加えたかったため、(実際にα版を導入する)組織の数は大幅に減らさざるを得なかった。

 私が一番驚いたのは、関心を示す顧客の多様さだ。大規模金融機関や航空機製造企業から、Chick-fil-Aのような、米国全土に数千単位の拠点を持つレストランチェーンまで、多岐にわたっている。こうしたチェーンは、店舗に対して機動的にアプリケーションをデプロイする方法を求めているという。このように非常に興味深いユースケースが、次々に顧客から生まれているのが現状だ」

 また、ロティ氏は次のように話している。

 「CSPのαテストには当初、規制の厳しい業界の企業が多数、名乗りを上げたことも興味深い。こうした企業は、規制に対応しながらも、アジャイルで機動的、かつ移植性の確保されたITを実現できる方法を探していたのだといえる。第一に、開発が迅速にできる場が欲しい。第二に、セキュリティが確保されていることを常時確認できる手法が欲しい。第三に、スケールが必要となった場合にこれを確保できるようにしたい。そしてこれらをロックインされない、単一のプラットフォームで満たしたい。こうしたニーズに応えられるものとして、CSPに関心を示しているのだと考えている」

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