「トランプは切り直されようとしている」、Western Digitalのデータセンターシステム事業が日本本格参入データドメイン、ティントリの河野氏、首藤氏が責任者

ウエスタンデジタルジャパンは2019年3月28日、ストレージシステム事業の日本における本格展開について発表した。日本におけるストレージシステムの事業責任者には河野道明氏、技術責任者には首藤憲治氏が2019年1月に就任、同事業の日本における実質的な立ち上げを進めていくという。

» 2019年04月01日 07時08分 公開
[三木泉@IT]

 ウエスタンデジタルジャパンは2019年3月28日、ストレージシステム事業の日本における本格展開について発表した。日本におけるストレージシステムの事業責任者には河野通明氏、技術責任者には首藤憲治氏が2019年1月に就任、同事業の日本における実質的な立ち上げを進めていくという。

 ハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュといったデバイスで知名度の高いWestern Digitalだが、約3年前からシステム事業にも力を入れており、フラッシュのJBOD(ディスクシェルフ)、フラッシュストレージ「IntelliFlash」、オブジェクトストレージ「ActiveScale」、そして2018年に発表したNVMe over Fabricをフロントエンド接続に使うストレージ「OpenFlex」を柱として事業展開を進めている(同製品はまだ市場に出ていない)。世界で3000以上の顧客に8500以上の製品を導入したという。

 日本で当面、特に注力するのはIntelliFlashシリーズ。Western Digitalが2017年に買収したTegile Systemsの技術をベースとしたもので、そのスペックは特徴的だ。首藤氏は、「各顧客のニーズに合わせたチューニングのし甲斐があり、日本のシステムインテグレーターにも喜んでもらえると思う」と話している。

 何が特徴的なのか。IntelliFlashは、NVMeによるオールフラッシュ「Nシリーズ」、高密度のオールフラッシュ「HDシリーズ」、ハイブリッドの「Tシリーズ」で構成されている。

 Nシリーズには2モデルあるが、共に1UサイズでCPUを4基搭載でき、DRAMは下位モデルで約700GB、上位モデルで1.4TBを搭載している。

IntelliFlash Nシリーズは1Uサイズ

 チューニングのし甲斐があるというのは、データ圧縮の有無および種類、重複排除の有無、リードキャッシュの有無、ブロックサイズ、スナップショット、レプリケーション、クオータ(容量制限)、ACL(ネットワーク/ユーザー/フォルダ単位)といった設定を、アプリケーション(論理ボリューム)単位で行えるからだという。上記の大量のDRAMはリードキャッシュとして、アプリケーション単位で適用できる。

 また、コントローラーは二重化されており、平常時はアクティブ/アクティブで動作するが、それぞれが別の論理ボリューム群に対するI/Oをコントロールすることで、性能を高めているという。

 首藤氏は、Western Digitalの強みとして、性能・機能の他に、SSD、HDDといった構成部品の製造からストレージ装置としての構成作業までを一社で行う垂直統合モデルから来る価格競争力および品質管理上の利点、四日市および藤沢にSSD、HDDの製造拠点がある点、世界的に事業を展開する上場企業としてのリソースの豊富さ、などを挙げている。

 今後の具体的な取り組みとしては、販売パートナーおよびサポートのパートナーシップを強化。2019年5月に国内でエグゼクティブブリーフィングセンターを開設する他、2019年9月を目途に、国内で出荷前検査を実施する体制を整えるという。また、容量課金(記憶媒体の消費量に基づく課金)への対応も進める。

「スタートアップ」ではないベンダーに河野氏、首藤氏が入った理由

 河野氏、首藤氏は、コンビでData Domain、Tintri、Datriumといったストレージのスタートアップ企業を次々に日本で立ち上げてきたことで知られる。全て特徴のある独自技術を前面に押し出し、明確なメッセージで市場に切り込むことによって自社を成長させる活動をしていた企業だ。この2人が、なぜ「スタートアップ」とは言えない大会社のシステム事業立ち上げをやりたいと思ったのか。

 河野氏の説明によると、Tintriで製品エンジニアリング担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めていたトニー・チャン氏が2018年8月、データセンターシステム事業部門の開発担当バイスプレジデントとしてWestern Digitalへ入社したことで、同社からの打診を受けていたことが背景にある。Datriumが事業方針の変更で日本からいったん撤退することになった2018年末、同事業部門のトップに話を聞くと、「ベンチャーのマインドで日本におけるシステム事業を立ち上げたい」と言われた。

 「グローバルな大企業ならではの潤沢なリソースを生かして、新しいビジネスを国内で構築していけることに魅力を感じた」(河野氏)という。

 トニー・チャン氏に、Western Digital入社の理由を聞くと、同氏も大会社の中でスタートアップのような事業運営をしている点を挙げた。

 「(データセンターシステム事業部門は)かなり自律的に動ける。製品のリリーススケジュールやロードマップは自ら決めることができる。迅速な動きが可能である一方、社内のリソースを活用できる。システムのプロトタイプを一つ作るにもコストがかかり、スタートアップでは思うようにできないことがあるが、ここでは迅速に行える」(チャン氏)

 もう一つ、NVMeが大きな変革につながる可能性が見えてきている点があるという。

 「NVMe over Fabricによって、NVMeはストレージシステムだけでなく、データセンター全体のエコシステムに関わる破壊的な技術になろうとしている。ある意味で、トランプが切り直されるのに似た状態が生まれつつある」(チャン氏)

左より河野氏、チャン氏、首藤氏

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