筑波大学准教授の山際伸一氏と大阪大学准教授の河原吉伸氏は、ピアノ演奏の類似性を比較する技術を開発した。機械学習を用いて、実際の打鍵タイミングと打鍵の強さ、音の長さを譜面と比較して数値化した。
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筑波大学とローランドは2019年4月10日、筑波大学システム情報系の准教授である山際伸一氏と、大阪大学産業科学研究所の准教授である河原吉伸氏(現九州大学)が、演奏の類似性を数値で比較する技術を開発したと発表した。機械学習を応用した。
音楽演奏の違いを判断するには通常、アーティキュレーションやデュナーミク(強弱法)、フレージング(フレーズの切り方)といった、人の感性による基準に従う。両氏が開発した技術では、こうした人が感じる音楽の感性を数値化できる。
なお、アーティキュレーションとは、フレーズ内の旋律をより小さい単位に区切り、細かくスタッカートに演奏する、滑らかに続けてレガートに演奏するなど、音と音との続け方を工夫すること。
具体的には、楽譜を基に基準演奏MIDI(Musical Instrument Digital Interface)データを作成、次にユーザーのピアノ演奏をMIDIデータとして取り込んだ。その後、打鍵タイミングと打鍵の強さ、音の長さという3つの要素について2つのMIDIデータの差分を取った。
その結果、基準データとユーザーデータの打鍵タイミングの時間差が音楽の類似の程度を表現できることを発見した。これに打鍵の強さと音の長さの要素を加えると、人の感じる演奏表現の違いを定量かできることが分かった。
以上のデータを高次元ベクトルとしてSVM(Support Vector Machine)と呼ばれる機械学習モデルを適用し、音楽性の類似性を数値化した。
今回の技術によって、複数の演奏の間で「雰囲気が似ている」と人が感じる感性を数値で表現でき、さまざまな演奏を比較できるとしている。数値化の結果を人の感性と比較したところ、約7割の人が類似性を認めたという。
今回はピアノの演奏を対象としたが、音楽データをデジタル化できればピアノ以外の楽器にも応用できる。さらに、自分が演奏したデータを使って自分と同じ音楽性のある人を検索したり、目標とするピアニストの演奏をまねることでピアノのレッスンを自動化したりすることも可能になる。
なお2019年4月10日、ローランドはスマートフォン向けアプリ「Piano Every Day」をアップデートし、今回発表された技術を応用した機能を実装した。
同アプリは、演奏頻度を管理したり、楽曲の譜面を表示したりするなど、ユーザーのピアノ練習を補助するソフト。Bluetoothで同社のデジタルピアノとスマートフォンやタブレットを接続すると、ユーザーが弾いた楽曲を録音できる。新機能では、録音したユーザーの演奏をピアニストと比較できる。
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