令和7981年12月31日、それはWindows最後の日その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(134)(2/2 ページ)

» 2019年04月23日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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アプリの対応はあくまでもアプリ側の話だという盲点

 Windowsの新元号対応は、あくまでもWindowsと.NET Frameworkの対応です。その上で使用されるアプリケーションが新元号に対応できるかどうかは全く別の話です。

 Microsoft Officeアプリケーション(ここではWindows版についてのみ説明しています)は、もともとOSの元号のレジストリ設定に影響を受けず、アプリケーション自身に元号対応がハードコードされていました。これが、Windowsの新元号対応と並行して行われたOfficeの更新によって、OSの元号対応(レジストリ)を使用するように仕様が変更されたのです。

 以下の画面6は、最新状態に更新されたWindows 10で動作する、最新状態に更新されたOffice 2010のExcelです。テストのために令和対応のレジストリを手動で追加してありますが、新元号を正しく扱えています。

画面6 画面6 最新状態に更新されたOffice 2010のExcelは、Windowsから和暦の元号を取得するように仕様変更された

 一方、以下の画面7は、最新状態に更新されたWindows 10で動作する、全く更新していないOffice 2016(MSI版のインストール直後の状態)のExcelで同じワークシートを開いたものです。

画面7 画面7 一度も更新されていないOffice 2016のExcelは、新元号に対応していない。Officeを最新に更新することで新元号に対応できるようになる

 Windowsは新元号に対応しているのに(タスクバーのカレンダーを参照)、Excelは5月1日以降も平成のままです。更新されていないOffice 2016は元号対応がOfficeのバイナリにハードコードされているのがよく分かるでしょう。

 新元号への対応がサポートされるのは、製品サポート期間中のOffice 2010以降です。それ以前のバージョンのOffice(Office 2007以前)は、Officeのバイナリにハードコードされているので書式設定で新元号に対応することはできません。

 また、Office 2010はWindows XP SP(Service Pack)3やWindows Vista SP1でも動作しますが、レジストリから元号を取得するようになったOffice 2010を、レジストリで元号を管理しないこれらのOS上で動かしたとき、いったいどうなるのか筆者は知りません(Officeの旧仕様にスイッチしてくれるのかもしれませんし、そうでないのかもしれません)。

 Windowsに含まれるアプリケーションやツール、コンポーネントにも和暦の元号がハードコードされているものが含まれており、これまでの(取りこぼしがあればこれからの)更新でWindowsのレジストリを使用するように変更されます。

 サードパーティーのアプリケーションや自社開発のカスタムアプリケーションについては、アプリケーションの提供元や開発元、あるいは自社による検証と改修が必要になるかもしれません。特に、古いバージョンの製品や古いカスタムアプリケーションは、たとえWindowsの関数から元号を取得するように作成されていたとしても、前述のように.NET Frameworkに加えられた変更が想定外の影響を及ぼすかもしれません。

 また、Windowsの関数を使用せずに、例えば、単純に「明治、大正、昭和」の3つの選択肢を持つドロップダウンリストやラジオボタンを配置したカスタムアプリケーションや、if文で昭和と平成だけを分岐するようなコードがあるとすれば、これらの元号を丸で選択するような紙の帳票を新元号に合わせて変更するように、アプリケーションを改修する必要があります。

 幸い(取り方によっては不幸にも)、2019年の大型連休は10連休です。新元号対応に関係するIT技術者にとっては貴重で過酷な10連休になるのでしょうか。Microsoftによるこれまでの修正にバグがないとも限りません。ちなみに、筆者のWindows使用環境にとって、新元号対応は個人的にも、仕事でも何の影響もありません(記事のネタにはなります)。

 ところで、日本マイクロソフトは2017年9月に「Japan New Era Name Support Blog」を開設し、新元号への対応状況について説明してきました。しかし、TechNetブログやMSDNブログの多くがそうであるように、2019年3月末に突然、消えてしまいました。

 日本語ブログの一部はTechNetフォーラムやMSDNフォーラムに統合されたものもありますが、新元号発表直前に行方不明になるなんて……と思っていたら、つい先日、復元されました。2018年11月28日の最後の投稿には、今後の情報提供は前述のサポート情報「2019年5月の新元号への変更に関する更新」で行う旨が案内されていました。

最新情報(2019年4月26日追記)

 2019年4月26日に新元号対応(レジストリ追加、合字追加、その他の和暦関連の修正)を含む更新プログラムが提供されました。

 定例のオプションの累積更新プログラムとしての配布であるため、Windows Updateの自動更新の対象外であり、Windows 10は「更新プログラムのチェック」のクリック、Windows 8.1以前は「マンスリー品質ロールアップのプレビュー」を手動で選択することでインストールできます。

 今回の更新プログラムの修正内容は、5月第2週の定例のセキュリティ更新を含む累積更新プログラムに含まれる形で自動更新で配布されることになります。

 今回の累積更新プログラムは4月26日の午前9時の時点ではWindows Server Update Services(WSUS)に同期されませんでした。同期されない更新プログラムであっても、Microsoft Update CatalogからWSUSにインポートすることで配布可能になります。

 最新の更新プログラムの一覧については、以下のページで確認してください。なお、4月26日午後1時の時点でWindows 10 バージョン1809向けの更新プログラムはまだリリースされていません。


最新情報(2019年5月7日追記)

 遅れていたWindows 10 バージョン1809向けの新元号対応を含む更新プログラムが、2019年5月4日にオプションの更新プログラム「KB4495667(ビルド17763.475)」として、Windows UpdateおよびMicrosoft Update Catalogで提供されました。

 また、最新のWindows 10であるこのバージョン向けには、5月2日に新元号対応の修正のみを追加した累積更新プログラム「KB4501835(ビルド17763.439)」がMicrosoft Update CatalogおよびWSUSに対して提供されています。

 「KB4501835」は、5月のセキュリティ以外の修正のプレビュー(KB4495667には含まれます)の影響を受けることなく新元号に対応することができます。


筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2018/7/1)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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