IDC Japanの調査によると、Dockerコンテナを本稼働環境で使用しているユーザー企業の割合は9.2%で、前年から微増。同社は、2020年までに「コンテナの本格的な普及期」に入ると予測する。
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IDC Japanは2019年7月3日、国内の企業を対象とした「Docker」と「Kubernetes」の導入状況に関する調査結果を発表した。それによると、本稼働環境で利用しているユーザー企業は年を追うごとに増えているものの、「コンテナを知らない」とした企業の割合も20%あった。
2018年から比べると、コンテナを本稼働環境で使用しているユーザー企業の割合は9.2%で、1.3ポイント増えた。「導入構築/テスト/検証段階」にあると回答した企業の割合も16.7%あり、1.7ポイント上昇した。IDCではこの結果から、Dockerコンテナは導入構築/テスト/検証に時間を要し、本稼働になかなか移行できていない状況にあると分析している。
これに対して、「コンテナの使用を計画/検討している」と回答した企業や、コンテナについて「情報収集や調査を実施している」と回答した企業の割合は、それぞれ11.1%と10.5%で、いずれも2018年から2ポイント前後減少した。この点についてIDCでは、コンテナの導入意向がある企業とそうでない企業がはっきりしてきており、具体的な導入に向けた検討や調査の段階に移ってきていると見ている。
次に、「コンテナを本稼働環境で使用している」企業と「導入構築/テスト/検証段階にある」とした企業を対象に、Dockerコンテナ環境で使用しているコンテナオーケストレーションツールについて調べると、45.5%の企業がKubernetesを使用していた。次点も、Kubernetesが採用されている「Red Hat OpenShift Container Platform」(19.8%)で、Kubernetesがコンテナオーケストレーションのデファクトスタンダードになっていることが明らかになった。
コンテナを導入した理由は「インフラの使用効率向上とコスト削減」(34.7%)が最も多かった。次いで、「開発者の生産性の向上」(30.6%)、「アプリケーションの信頼性/可用性の向上」(28.1%)、「アプリケーション運用の効率向上とコスト削減」(28.1%)、「アプリケーション開発/リリーススピードの向上」(27.3%)が続いた。
これらの結果を踏まえてIDCでは、コンテナ導入のメリットとして次のような点を挙げている。まず、コンテナは仮想マシンに比べて軽量で集約率が高く、CPUやメモリなどの使用効率が向上してコスト削減につながること。そして、ソフトウェア開発者が容易に開発環境やテスト環境を用意できたり、開発環境の差異をなくしたりできることだ。
一方、コンテナを導入している環境を調べると、クラウドが半数を超えた。具体的には、オンプレミスが45.5%、IaaS(Infrastructure as a Service)が31.4%、PaaS(Platform as a Service)またはCaaS(Container as a Service)が23.1%だった。
IDC Japanでソフトウェア&セキュリティのリサーチマネジャーを務める入谷光浩氏は「コンテナはアプリケーション開発の生産性やアプリケーション能力を大きく向上させる技術で、クラウドネイティブアプリケーションには必須だ。しかし、現在の国内市場は、コンテナはまだキャズム(どうしても超えなければならない一線)を超えられていない。一方でCaaSのように、コンテナとKubernetesの導入が容易なコンテナ向けクラウドサービスや、ベンダーとSIerのコンテナ導入支援サービスが充実してきており、導入に苦労している企業やPoC(概念実証)で止まっている企業には強い味方になる。2020年までにはキャズムを超え、コンテナの本格的な普及期に入っていくだろう」と述べている。
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