ワシントン大学のセキュリティ研究者チームは、マルチユーザー拡張現実(AR)環境向けのツール「ShareAR」を開発した。AR環境を複数ユーザーが共有し、プライバシーやセキュリティを犠牲にすることなく、一緒に遊んだり作業したりできる機能をアプリケーションに組み込むことができる。
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現在は、個人がそれぞれ個別の拡張現実(AR)環境を利用する段階にある。AR環境内でのユーザー同士の相互作用はまだあまり進んでいない。だが、近い将来、グループで進める共同作業やクリエイティブなプロジェクトにARを利用するようになるだろう。
ARを複数ユーザーが共有した場合、プライバシーやセキュリティに課題が生まれるという。ワシントン大学のセキュリティ研究者チームは、これらの課題に対応するツールキット「ShareAR」を開発した。AR環境でインタラクティブなコラボレーションを実行する機能をアプリケーションに組み込むことが可能だ。
同大学のPaul G.Allen School of Computer Science&Engineeringで助教授を務めるFranziska Roesner氏によれば、今回の研究の背景にある考え方はこうだ。
「サイバーセキュリティとプライバシーの研究では新興技術による将来のリスクを予測し、対処することが重要である」
Roesner氏は「マルチユーザーARは多くの可能性を持っている。だがそこで起こり得るセキュリティやプライバシーに関する課題について、体系的なアプローチが存在しない」との認識を示す。
同大学の学部学生でプレゼンテーションを行ったKimberly Ruth氏によれば、課題はこうだ。
「仮想オブジェクトの共有は、クラウドベースのプラットフォームでのファイル共有に似ているが、大きな違いがある。ファイル共有はPCなどの画面上にリストとして表示されるだけだが、AR環境では、ARコンテンツが周囲の物理的世界に組み込まれる。そのため、ARに固有のセキュリティやプライバシーを考慮しなければならない」
例えば、ユーザーが不適切な仮想イメージを公園などの物理的な公共空間に追加したり、教会に下品なメッセージを落書きしたり、他のユーザーの背中に「蹴ってください」という仮想の張り紙をしたりする可能性がある。
「誰かがAR空間内で他人をいじめようとしたり、スパイしようとしたり、他のユーザーのARコンテンツを盗もうとしたり、破壊しようとしたりしたときに、ARテクノロジーがどのように反応するかを考えたかった。AR技術を使ってコンテンツを共有するという利点を生かしつつ、ARの開発者に機能とセキュリティの二者択一を迫ることは避けたかった」(Ruth氏)
研究チームはこうした問題に対処するため、プロトタイプツールキットであるShareARを開発した。ShareARは、ユーザー間で共有されるオブジェクトをアプリケーションが、作成、共有、追跡できるよう支援する。プロトタイプでは「Microsoft HoloLens」に対応した。
マルチユーザーARではこの他にも対応しなければならない潜在的な課題がある。
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