5Gサービスはなぜ、これほど進展が遅いのかDell’Oro Groupのアナリストが分かりやすく解説(2/2 ページ)

» 2019年10月11日 05時00分 公開
[三木泉@IT]
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現在の5G対応端末は、モバイル事業者の動きに対応しきれない

現在、「5G対応スマートフォン」としては、例えば「Samsung Galaxy S10 5G」などがある。このモデルはSnapdragon X50 5Gモデムを搭載しており、Sub-6GHzとミリ波帯に対応している。だが、時分割多重のみをサポートしていて、ノンスタンドアロンモードでのみ利用できる。また、DSSにも対応していない。

現在のSnapdragon X50 5Gモデム搭載端末では、スタンドアロンモード、DSSに対応できない

 スタンドアロンモードとDSSを使いたければ、Snapdragon X55 5Gモデムを搭載し、スペクトル分割多重に対応した新機種を手に入れる必要がある。こうした機種はおそらく2020年2月の「Mobile World Congress Barcelona 2020」で発表され、2020年4月ごろに発売されるだろう。

5Gでは設計上、データセンター機能を柔軟に配置できる

 5Gでは、コントロールプレーンとユーザープレーンが明確に分離されることになった。そしてユーザープレーン(下図の下半分)では、「エッジデータセンター」「地域データセンター」「中央データセンター」が見られる。データセンターをニーズに応じて適切な場所に配置し、低遅延のメリットを生かすと共に、一部のデータをローカルで処理することで、バックボーンネットワークのコストを抑制できる。こうしたことが可能になるのも5Gのアーキテクチャ上の利点だ。企業のためのデータセンター機能を、ここに配置することもできる。

下半分のユーザープレーンには、データセンターを柔軟に配置できる

5Gの構内フロントエンドとしてのWi-Fi 6

 図の左端に見られるアクセスネットワーク部分も、5Gコアサービスベースアーキテクチャの大きな特徴だ。設計上、5G無線だけでなく、Wi-Fi、Wi-Fi 6を含む多様なアクセスネットワーク技術を組み込めるようになっている(ただし、この規格は現在策定中で、まだ実際に活用できるわけではない)。

 では、Wi-Fi 6と5Gは、どのような関係になるのだろうか。

 5Gでは、建物の中に電波を行きわたらせるのが難しい。そこで、5GのフロントエンドとしてWi-Fi 6を使うことが考えられる。これにより、モバイル通信事業者は、自社サービスのためのスモールセル(小型基地局)を、構内に設置する必要がなくなる。

 現在も、LTEのフロントとしてWi-Fiを使う試みは行われているが、この場合、モバイル事業者側はSLA(Service Level Agreement)を制御できず、契約者が何をやっているかを可視化できない。

 だが、Wi-Fi 6と5Gの組み合わせであれば、事業者側はアクセス部分をWi-Fi 6にオフロードした上で、SLA監視やトラフィックの可視化ができる。

 ユーザー企業側は、プリンター利用などをローカルに留めておきながら、音声通信および一部のデータトラフィックを5Gに流すといったことが考えられる。

 5Gは一瞬にして完成するものではなく、長い移行プロセスを経て徐々に広がっていくものだ。5Gのエコシステムを見ても、標準規格、構成要素、チップセットなどあらゆる側面で、万人が使えるパッケージとなるまでには、まだかなりの時間が掛かる。

 移行のプロセスで重要なのは、確立している技術を生かすことだ。Wi-Fiは、そうした現時点で使える技術の一つだ。

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