リクルートテクノロジーズ竹迫良範氏が講演、IoT時代に求められる、セキュリティも含めた品質保証の取り組みとはハードウェアの問題をソフトウェアの仕組みで解決(2/2 ページ)

» 2019年12月24日 05時00分 公開
[高橋睦美@IT]
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IoTにおいても「品質」を満たし、ハードウェアの問題をソフトウェアの仕組みで解決

 長年にわたり、エンジニアとしてパッケージソフトの開発、受託開発、それにWebサービスの開発という、それぞれ性質や優先順位が異なる開発に携わってきた竹迫氏。「機能」と「時間」、そして「品質」という3要素のトレードオフの中でどうバランスを取るか、どれを優先するかは、開発するものの種類によって、それぞれ異なっていた。

 さらに一口に「品質」と言われがちだが、そこは、基本機能として求められる「当たり前品質」から、性能に関わる「一元品質」、使いやすさなどを左右する「魅力品質」など、5つに分類される。「日本企業は、当たり前品質を満たすのは得意だったが、魅力品質の部分でだんだん対応できなくなってきた。正解のない、不確実性の高い魅力品質の部分で、どうやって“機能”や“時間”とのバランスを取るかが課題となっている」と竹迫氏は述べた。

狩野モデルによる品質の5分類(竹迫氏の講演資料から引用)

 正解がないところに正解を見いだす上でヒントになりそうなのがAIだ。「IT化というのは意識的行動だが、実は、人間がやっている行動は無意識のものが多く、こうした無意識でやっている事柄をプログラミングで書き表すのはすごく難しい。AIや機械学習は、こういった無意識の動作をコンピュータにさせたいときにうまくやってくれる」(竹迫氏)。そして、無意識の行動をコンピュータで言語化できた瞬間に「意識化」できることから、この先、AIと普通のITの境は近づいていくのではないかとした。

 竹迫氏はさらに、ISO 9126での定義を基に、ソフトウェアの「品質」として求められる要素には「機能性」「信頼性」「使用性」「効率性」「保守性」「移植性」があるが、時代の変化に伴って、重視される要素が変わってきているとした。そして、昔のソフトウェアテストではあらゆる環境を想定した事前テストが当たり前だったのに対し、「IoTのデバイスになるとお客さまが使う環境を想定できない。もしかすると北海道の酷寒の中で使われるかもしれないが、開発側ではそこまで想定できない」とした。

ISO 9126によるソフトウェア品質モデル(竹迫氏の講演資料から引用)

 となると、例えばエラーログを出力してそれを受け取り、俊敏に対応することで、たとえエラーが発生しても安全に動く仕組みにしていくのが自然であり、すでにそうした取り組みが始まっているという。

 また、不具合が発生したらそれを修正したり、うまくアップデートしたりする仕組みも広がっている。最も広く利用されているのはWindows Updateだが、CPUでもマイクロコードの修正でデバイスの挙動を変更できる他、自動車の世界でもデバイスのアップデートの仕組みが実装されつつあることを紹介し、「ハードウェアの問題をソフトウェアの仕組みで解決できるようにし、『一度作ったものは修正できないから頑張る』という時代は終わっている」とした。

 そして最後に、高信頼化機能の要件を具体的にまとめたドキュメントとして、情報処理推進機構の「つながる世界の開発指針」を、またデジタルトランスフォーメーションの時代においてIT開発を「手の内化」し、自らコントロールしていく際の手引きとして及川卓也氏が執筆した『ソフトウェア・ファースト』(日経BP社)を挙げ、こうした文書を参考に、新しいモノづくりに取り組んでほしいとした。

IPA「つながる世界の開発指針」〜安全安心なIoTの実現に向けて開発者に認識してほしい重要ポイント〜(竹迫氏の講演資料から引用)
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