ここではVMware Cloud on AWSでよく使われるネイティブAWSサービスの連携の例を紹介する。VMware Cloud on AWSのUIにも「S3の有効化」という機能があることからも、S3と連携させるケースが多い。ここでは以下の2つの例を紹介する。
VMware Cloud on AWSにシステムを移行した際、従来の運用を維持するのに課題となるのがバックアップである。クラウド側には、テープドライブといったアーカイブデバイスがないため、これに代替するものが必要となる。ほとんどの場合、S3を使いテープライブラリを必要とないバックアップ環境が用いられる。
近年のバックアップソリューションは、ほとんどがS3へのアーカイブをサポートしている。オンプレミスでこの機能を用いる場合、3つ大きな課題があった。S3へのアップロード帯域が細くデータの保存に時間がかかることと、S3からのダウンロードに時間がかかりリストアを迅速に行えないこと、定期的に行うわけではないリストア時にトラフィック課金が発生してしまうことである。これらは、VMware Cloud on AWSで利用する場合には問題とならない。VMware Cloud on AWSはAWSのデータセンターで稼働するため、リストア時のトラフィックコストがなく、また、S3との通信速度もオンプレミスのそれに比較すれば段違いである。
VMware Cloud on AWSに対応しているバックアップソフトウェアはVMware互換性ガイドの「Data Protection and File Services」で確認できる。それぞれのエントリにはナレッジベース(KB)へのリンクがあり、どのようにバックアップコンポーネントを配置するかといった設計の助けとなる資料がある。
S3への低遅延、広帯域が生きるサービスに、AWS Storage Gatewayがある。これはアプライアンスをS3とそのクライアントの間に入れることで、S3をNFSやCIFS越しに利用できるサービスである。Storage GatewayアプライアンスはEC2としても、また、オンプレミスの仮想マシンとしてもデプロイし利用できる。
EC2にデプロイした場合、Storage Gatewayアプライアンスの冗長化を行うことができない。EC2 Auto Recoveryを利用すれば、Storage Gatewayインスタンス障害には対応できるが、ハングなどのゲストOSの障害に対応できない。また、Storage GatewayアプライアンスのマルチAZ冗長化機能もないため、AZ障害の場合は、Storage Gatewayアプライアンスをデプロイし直し、データ/キャッシュ領域のEBSをマウントして復旧しなければならない。
Storage GatewayアプライアンスをVMware Cloud on AWSにデプロイすると、これが一変する。まず、冗長性はオンプレミスの環境と同じくvSphere HAで保護することができる。マルチAZの冗長化にも簡単に対応可能である。SDDCをストレッチクラスターとして作成することで、SDDCのvSANが2つのAZに展開される。このvSAN上のデータは2つのAZ間で完全同期される上、vSphereのクラスタとしても2つのAZに跨っている。つまりAZに障害が発生しても、単純なvSphere HAの機能でStorage Gatewayアプラインスが再起動される。
Storage GatewayアプライアンスはNFS、CIFSを提供するものの、ファイルサーバとしては機能が不足している。また、あくまでS3へのインタフェースの代替であるため、ランダムアクセスの多いファイルサーバとして利用されることを想定していない。ファイルサーバが必要な場合は、AWS EFSやFSx for Windowsといったファイルサービスを利用するか、VMware Cloud on AWS上にファイルサーバを構築することが考えられる。ただし、VMware Cloud on AWS上にファイルサーバを構築する場合、オールフラッシュのvSANデータストアは高価となるため、その利用には注意が必要だろう。
ヴイエムウェア株式会社 ストラテジックアライアンス本部 スタッフテクニカルアライアンスマネージャー。外資ハードウェアベンダーでインフラ構築に従事した後、2010年にヴイエムウェア株式会社へ転職。コンサルタント、製品スペシャリストを経て現職。現在は、OEM パートナーへの技術支援と新規サービスの立ち上げに従事。
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