WindowsやOfficeアプリなど、Microsoftのソフトウェア製品はかなり以前から国際化対応が行われており、ユーザーの好みの言語環境を後から追加して変更できるようになっています。今回は、英語版Windows 10と英語版Officeアプリケーションを再インストールすることなく、日本語(またはその他の言語)化する手順を紹介します。
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Windows OSと「Microsoft Office」アプリケーションは、「英語(米国)」(en-us)版をベースとしたシングルイメージで開発されており、その上に表示言語や入力言語、タイムゾーン、システムロケール、特定の国や地域向けの機能など、国際化対応が行われています。
Windowsは内部的にはUnicode(UTF-16LE)を採用していますが、「英語(米国)」(en-us)や「日本語(日本)」(ja-jp)といったシステムロケールは、Unicodeに対応していないプログラムの言語環境などを決定します。例えば、コマンドプロンプトやWindows PowerShellウィンドウの既定のコードページなどです。
通常、日本国内の企業や個人は、日本語にローカライズされたWindowsやOfficeアプリ、その他のアプリケーションをPCにインストールして使用することになりますが、その他の言語にローカライズされた環境であっても、比較的簡単に日本語化して対応できます。例えば、次のような状況やニーズがある場合、英語版の環境にOSやアプリケーションを再インストールすることなく、日本語対応が可能です。
国際的にビジネスを展開している企業の場合、1つ目と2つ目の状況やニーズは決して珍しいことではないでしょう。3つ目については、少し説明が必要かもしれません。
Microsoftは以前、WindowsデスクトップOSをクラウド上の仮想マシンとしてデプロイし、実行することを許可していませんでした。2018年8月1日以降、ボリュームライセンスのWindows 10 Enterprise E3/E5 per Userなど一部のライセンス契約において、「Windows 10マルチテナントホスティング」の権利として、Microsoft Azureまたは認定クラウドにWindows 10 バージョン1703以降のProまたはEnterpriseエディションをデプロイできるようになりました(Azure AD参加などその他の要件もあります)。
また現在では、Windows 10 Enterprise E3/E5、Windows 10 VDA(Virtual Desktop Access)、Microsoft 365 E3/E5などのライセンス所有者は、Azureの「Windows Virtual Desktop」サービスでシングルセッションまたはマルチセッションのWindows 10 Enterpriseにアクセスできます。詳細なライセンス条件については、最新の「製品条項(PT)」にある「Windows 10マルチテナントホスティング」や「Windows Virtual Desktop」の項で確認することができます。
Azure Marketplaceには、Azure上に簡単にデプロイできるWindows 10イメージ「Microsoft Windows 10」やWindows Virtual Desktop向けの「Microsoft Windows 10+Office 365 ProPlus」のイメージが用意されていますが、これらのイメージは英語版の環境です。
そのため、日本語を完全にサポートするには、通常、日本語版のカスタムイメージを作成してAzureにアップロードします。しかしながら、後から多言語に対応可能な仮想マシンをユーザー個人専用に提供するなど、利用シナリオによってはAzure Marketplaceの英語版イメージをそのまま使用する方が手っ取り早いことがあります。その際に、今回の内容が役に立つでしょう。
なお、今回紹介する作業は、構築済みの「Windows 10」と「Office 365 ProPlus」の環境にサインインするユーザーが、「ローカル管理者」(Administratorsローカルグループのメンバー)の権限を持つ(または権限を持つアカウントの資格情報を利用できる)ことを前提としています(画面1)。
Windowsの表示言語の変更は「Settings(設定)」アプリや「Microsoft Store」を通じて一般ユーザーの権限でも可能ですが、完全に日本語化するには、ローカル管理者の権限が必要です。
インターネットアクセスが可能なWindows 10の場合、「Settings(設定)」アプリの「Time & Language(時刻と言語)」→「Language(言語)」を開き、「+Add a preferred language(優先する言語を追加する)」をクリックすることで、現在の言語(今回の例では「英語(米国)」)に新しい言語サポートを簡単に追加できます(画面2)。
Windows 10のバージョンに対応する言語パックのISOイメージを利用できる場合は、「表示言語のインストールまたはアンインストール」(lpksetup.exe)を使用してインストールすることもできます(Windows 10 バージョン1903および1909は、同じWindows 10 バージョン1903言語パックを使用することに留意)。
日本語のサポートを追加するには、「Choose a language to install(インストールする言語を選択してください)」の検索ボックスを使用して「日本語(Japanese)」を追加し、次の「Set as my display language(表示言語として設定する)」を追加でチェックして「Install(インストール)」をクリックします(画面3)。
この手順で日本語(またはその他の言語)のサポートを追加すると、オンラインで言語パックがダウンロードされて、インストールされます。また、関連する言語機能が「ローカルエクスペリエンスパック」としてMicrosoft Storeからダウンロードおよびインストールされます。言語パックの追加後にいったんサインアウトして、再度サインインすると、表示言語が日本語に切り替わります(画面4)。
言語パックの追加直後は「設定」アプリの一部が英語表示のままだったり、日本語を入力しても準備がまだできていない旨のメッセージが表示されたりしますが、しばらく待つと解消するはずです。
なお、言語パック(追加後の「A字」アイコン)のインストールには管理者権限は必要ありませんが、その他の言語機能(language features、)のインストールには管理者権限が必要です。また、Windows 10 バージョン1709以前は「Settings(設定)」アプリではなく、「Language(言語)」コントロールパネルを使用して言語のサポートを追加する方式でしたが、「Language(言語)」コントロールパネルはバージョン1803で廃止されました。
Office 365 ProPlusや、ボリュームライセンス製品やパッケージ製品版の「Office 2010/2013/2016/2019」の場合もまた、Windows 10と同じように言語パック(Officeでは「Office言語アクセサリパック」と呼ぶこともあります)を追加することで、ローカライズ版をインストールし直すことなしに、日本語または任意の言語に切り替えることができます。
Office 365 ProPlusとOffice 2016/2019の場合は、次の手順で日本語化できます。まず、任意のOfficeアプリケーション(WordやExcelなど)を開き、「ファイル」メニューから「Account(アカウント)」(Outlookの場合は「Office Account」)のページを開きます。ここで「About Word(Wordのバージョン情報)」や「About Excel(Excelのバージョン情報)」をクリックして、Officeアプリケーションが32bit版(32-bit)か、64bit版(64-bit)かを確認します(画面5)。
「Office言語アクセサリパック」のページを開き、インストールされているOfficeアプリケーションと一致するbit数の言語パックをダウンロードし、実行します(画面6)。
言語パックのインストールが完了し、Officeアプリケーションを起動(実行中の場合はいったん閉じてから起動)すると、OfficeアプリケーションのUI(ユーザーインタフェース)が追加した言語に切り替わります(画面7)。
他のユーザーと共用するPC(仮想デスクトッププールを含む)の場合は、言語パックを追加し表示言語と入力環境を切り替えるだけでよいでしょう。PCを再起動することなく、Windows 10へのサインアウト/サインイン、Officeアプリケーションの再起動後は、好みの言語環境で作業を継続できます。また、同じPCを共有する別のユーザーでサインインし直せば、英語(米国)または別に追加した言語環境で作業することができます。
使用中のPCが個人専用(個人用仮想デスクトップを含む)の場合は、さらにシステムロケールを変更することで、より完全に日本語化できます。
例えば、Windowsの「エクスプローラー」はシフトJISの日本語ファイル名やフォルダ名を正しく扱えますが、システムロケールが「英語(米国)」の場合、コマンドプロンプトやPowerShellの既定のコードページは「437(OEM - 米国)」に設定されているため、日本語のファイル名やフォルダ名を正しく表示できません(画面8)。
システムロケールを「日本語(日本)」に変更すると、コマンドプロンプトやPowerShellの既定のコードページが「932(ANSI/OEM - 日本語Shift−JIS)」になり、日本語のファイル名やフォルダ名を正しく扱えるようになります。
システムロケールを変更するには、コントロールパネルの「地域」アプレット(intl.cpl)の「管理」タブを開き、「Unicode対応でないプログラムの言語」にある「システムロケールの変更」ボタンをクリックして、「日本語(日本)」またはその他の言語に設定し、Windowsを再起動します。また、「ようこそ画面と新しいユーザーアカウント」にある「設定のコピー」ボタンをクリックして、「ようこそ画面とシステムアカウント」をチェックすると、サインイン/ロック画面の言語を変更できます。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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