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» 2020年06月02日 05時00分 公開

新規事業開発ってむなしくないですか?おしえて、キラキラお兄さん(2/3 ページ)

[高橋睦美,@IT]

事業をクローズするときはエンジニア一人――多産多死に感じた違和感

 メガベンチャーでは、大手ドラッグストアとの協業で立ち上げた事業や、チラシ特売情報アプリなど、4つほどの新規事業に携わった。エンジニアとしてプロジェクトを一通り立ち上げて進める経験を積めて、その意味で恵まれていたと過去を評価する。

 けれども、多くの新規事業の誕生と死を見て、考えるところもあった。

 「新規事業を立ち上げるときって、いろんなステークホルダーがうわーっとやってきて『やっていこうぜ』と盛り上がるんですが、クローズするときって、だいたいエンジニア一人なんですよね。始まるときはみんなあんなに夢を語っていたのに、クローズするときは誰も関心を持ちません。個人情報が残らないようデータだけ消しといて、って言われて、エンジニア一人で作業するんですよね」

 多産多死、諸行無常――スピーディーに立ち上げて、うまくいかなければ見切りを付けて次のプロジェクトに取り組むやり方にもいいところはたくさんあるし、技術を身に付ける役にも立つ。そもそも、大きな企業の1プロジェクトとして進める以上、上がやめる判断を下したときに逆らうのは難しい。けれど、一抹の寂しさは否定できなかった。

 Relicの創業者から声が掛かったのは、そんな時期だった。

 「創業者の北嶋のアイデアやビジョンに共感したのもありますが、やっぱり『絶対これをやりたいんだ』という気迫を感じたことが大きな理由です。この人となら安易な多産多死にならない、放り投げにはならないだろうなという確信を持てました。きっと大変だし、ピボットもあるだろうけれど、『後はエンジニアの方でよろしく』とはならないだろうな、と」

高校時代に作った燃料電池カー

ビジョンを持たない自分のビジョン

 こうして2016年2月、大庭さんはRelicに加わった。Relicは、新規事業開発やイノベーション創出を支援する事業を展開しており、これまた「多産多死」の世界だ。けれども、以前とは少し違う。

 「弊社のお客さんって、本当にそのビジョンを実現しようと必死になっている方が多いんです。うまくいかないことがあっても何とかして存続しようとか、あれがダメだったからこうしようと何らかのピボットをして、何とかしてビジョンを実現しようとするんですね。失敗の中から何らかのヒントを見つけて次の事業や仮説につなげ、ポジティブに進めていくという意味で、多産ではありますが、多死にはなっていないと思います」

 さまざまな顧客を支援してきて感じるのは、新規事業の成功には、リーダー自身がリスクをとって、これをやりたいと突き詰める姿勢が不可欠だということだ。たとえ当初思い描いた通りではなくても、失敗から学んで次に生かしたり、ピボットしたりして、最後まで突き詰めようとする人でないと、成功はおぼつかないという。

 そんなリーダーを支援する大庭さんが心掛けているのは、向き合う事業リーダーや起業家が成功しているイメージを持ち、「そのために自分は何ができるか」を考えることだ。自分のビジョンというよりも、クライアントやパートナーの成功のために何ができるかを考え、実行することが自分の仕事と考えている。

 「そのプロダクトの成功というよりも、その人が成功して上場したり、社内外で称賛されたりしているイメージを持つようにしています。そのために自分は何ができるかを考えると、単にコードを書くだけでなく、『こんな技術があるので調べてみました』とか『こんなイベントがあるので行ってみたらどうですか』といったいろんな行動を自然にできるんですね」

 このように、ゴールとして「プロダクトサクセス」よりも「イノベーターサクセス」を設定することで、失敗しながらも前に進み、最終的な目的を達成できる。同時にそのクライアントやパートナーが、エンジニアである自分のファンになってくれるという。相手の成功を支援することが、自然と自分の生存戦略にもなっているというわけだ。

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