地球上で年間に生成されるデジタル情報量は現在、10の21乗ビットだ。毎年20%のペースでデジタル情報が増えると、350年後には、必要な原子の数が地球を構成する全ての原子の数(10の50乗)を超えるだろうとポーツマス大学の研究者が見通しを示した。
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ポーツマス大学数学・物理学部の上級講師メルビン・ボプソン氏は、2020年8月11日に米国物理学協会のオンラインジャーナル「AIP Advances」に掲載された論文「The information catastrophe」(情報のカタストロフ)で、地球上で年間に生成されるデジタル情報量が現在の10の21乗ビットから毎年20%のペースで増えると、350年後には、地球を構成する全ての原子の数(10の50乗)を超えるだろうとの見通しを示した。
それは、「大部分の事物がコンピュータでシミュレートされ、デジタルビットとコンピュータコードに支配された」世界だと、ボプソン氏は論文で述べている。
ボプソン氏は論文で、デジタル情報は液体、固体、ガス、プラズマに次ぐ物質の5番目の状態であり、技術の進歩に伴い、物理的な原子からデジタル情報へと、地球上の物質の再分配が行われているとの見解を示した。
アインシュタインの一般相対性理論における質量とエネルギーの等価性、熱力学の法則を情報に適用したロルフ・ランダウアーの業績、デジタルビットの発明者であるクロード・シャノンの業績に依拠し、2019年にボプソン氏は、情報が他の物質のように、質量とエネルギーの間で状態を変えるという「質量・エネルギーと情報の等価原理(mass-energy-information equivalence)」を考案した。
この等価原理を使って、次のような予測を明らかにした。
「われわれは気象、環境、人口、食料、健康、エネルギー、安全といった世界的な課題に直面しているだけでなく、『情報のカタストロフ』という特異な事象にも見舞われようとしている(ボプソン氏)
ボプソン氏は取材に対し、「われわれは文字通り、ビット単位で地球を変えつつある。それは見えない危機だ」と語った。
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