Oracle、「Oracle Database 21c」をOracle Cloudで提供開始ネイティブなブロックチェーン表や永続性メモリのサポート

Oracleは、コンバージドデータベースの最新バージョン「Oracle Database 21c」を「Oracle Cloud」で提供開始した。Oracle Database 21cでは、200を超える新しいイノベーションが導入された。Oracleのコンバージドデータベース戦略にのっとった製品だ。

» 2021年01月18日 16時30分 公開
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 Oracleは2021年1月13日(米国時間)、コンバージドデータベースの最新バージョン「Oracle Database 21c」、同バージョンを含む「Oracle Autonomous Database」の期限なしで無料で利用可能な「Always Free」の提供を「Oracle Cloud」で開始したと発表した。

 Oracle Database 21cはコンバージドデータベースとして、マルチモデル、マルチテナント、マルチワークロードを目指した。Oracleは一貫して、データを複数の単一目的エンジンに分割して利用するよりも、集約型のコンバージドデータベースに格納して管理する方が、効率的で生産性が高くなると考え、このアプローチを取ってきた。

 「Oracle Database 21cは、全てのデータタイプ(リレーショナルやJSON、XML、空間、グラフ、OLAPなど)をサポートし、業界をリードする高いパフォーマンスやスケーラビリティ、可用性、セキュリティを、オペレーショナル、アナリティクス、その他の混合ワークロードを実現する。Oracleのコンバージド戦略は、開発者がOracle Database 21cの全ての主要機能(ACIDトランザクションや読み取りの一貫性、並列スキャン、DML《Data Manipulation Language》処理、オンラインバックアップなど)を活用して、データの永続性を気にすることなく、アプリケーションの開発に集中できるようにする」と、Oracleは述べている。

 Oracle Database 21cには、200を上回る新しいイノベーション(変更不可能なブロックチェーン表、インデータベースJavaScript、ネイティブJSONバイナリデータ型、インデータベース機械学習用AutoML(自動機械学習)、永続性メモリストアなど)と機能強化(インメモリやグラフ処理パフォーマンス、シャーディング、マルチテナント、セキュリティなど)が盛り込まれている。

 いずれもデータベースのユースケースを広げ、開発者やアナリスト、データサイエンティストの生産性を向上させ、クエリパフォーマンスを向上させるという。

 Oracleのデータベースサーバーテクノロジー担当エグゼクティブバイスプレジデント、アンドリュー・メンデルソン氏は、次のように述べている。「Oracle Database 21cは、世界で最も強力なコンバージドデータベースエンジンの提供というOracleの戦略を継続する。これは、先進的なJSONドキュメント処理パフォーマンスを提供し、Intel Optane Persistent Memory(PMem:パーシステントメモリ)のサポートによってオペレーショナルデータベースのブレークスルーパフォーマンスを提供する」

 「新たなインメモリ列ストアの自己管理や過去最高のパフォーマンスのグラフ処理、機械学習モデルの開発を大幅に合理化するAutoMLにより、業界をリードするアナリティクスデータベース機能を提供する。さらに、改ざん防止SQLテーブル向けの変更不可能なブロックチェーン表も提供する。競合ベンダーは、これらの機能をサポートするために、JSONドキュメントやオペレーショナル、アナリティクス、グラフ、ML(機械学習)、ブロックチェーンのデータベースとサービスを個別に必要とする。Oracleのコンバージドデータベースのアプローチにより、新規アプリケーションの作成における開発者の生産性が大幅に向上し、後から新たなビジネス要件に合わせてアプリケーションを容易に進化させることができる」(メンデルソン氏)

Oracle Database 21cのイノベーションとは

 Oracle Database 21cはクラウドとオンプレミスの全てのOracleデータベースサービスに用いられる最新データベースエンジンだ。Oracle Autonomous Databaseや「Oracle Exadata Cloud Service」「Oracle Exadata Cloud@Customer」「Oracle Exadata Database Machine」などを含む。Oracle Database 21cには200を上回る新しいイノベーションが盛り込まれている。主なものは次の通りだ。

変更不可能なブロックチェーン表

 ブロックチェーン表はブロックチェーン技術にあるセキュリティ上のメリットを、エンタープライズアプリケーションに提供する。

 Oracleの「Crypto-Secure Data Management」の一部であり、変更不可能な挿入専用のテーブルを提供する。テーブルの行は暗号化の上で連結されている。改ざん検出と防止機能をOracle Databaseで利用できることで、管理者やユーザーになりすます内部者、ハッカーなどによる不当な変更を防止できる。ブロックチェーン表は標準SQLでアクセスできるコンバージドデータベースの一部であり、アナリティクスとトランザクションをフルにサポートする。このため、既存のブロックチェーン実装と比べて利用が格段に容易で、より機能的だという。

 ブロックチェーン表は、Oracle Databaseの全てのエディションにおいて無償で提供される。

ネイティブJSONデータ型

 Oracleは強力なSQL/JSONクエリとインデックス付けのサポートを長年にわたって提供してきた。Oracle Database 21cでは、新たにJSONデータ型表現が追加されたため、スキャンが最大で10倍、更新処理が最大で4倍高速になる。全体として、これらの機能向上により、Oracle SQL/JSONはYCSB(Yahoo Cloud System Benchmark)において、「MongoDB」や「Amazon DocumentDB」と比べて2倍高速になったという。

 従来のリリースと同様に、JSONと他のデータ型を透過的に結合できる。迅速なOLTP(オンライントランザクション処理)のために任意のJSON要素へインデックス付けができ、全ての形式にまたがる宣言型の並列SQLアナリティクスを利用できる。複数のJSONドキュメントやコレクションにまたがって複雑な結合を実行でき、これら全てを、カスタムアプリケーションコードなしで処理できる。

インデータベース機械学習用AutoML

 機械学習モデルを規模に応じて自動的に構築、比較し、専門家以外による機械学習の利用を促進できる。新しいAutoMLユーザーインタフェースにより、インデータベース機械学習を容易に活用できるようになる。Oracleは、広く利用されているインデータベース機械学習アルゴリズムの広範なライブラリに、新たに異常検出、回帰、ディープラーニング分析用のアルゴリズムを追加した。

インデータベースJavaScript

 開発者が最先端のプログラミング言語で効率的に作業できるようにした。組み込みの「Graal Multilingual Engine」により、データが存在するデータベース内でJavaScriptデータ処理コードを実行するため、コストのかかるネットワーク利用が不要になった。

 JavaScriptコード内から簡単にSQLを実行できる。JavaScriptデータ型はOracleデータベースデータに自動的にマッピングされる。

パーシステントメモリ(永続性メモリ)のサポート

 データベースデータとREDOログをローカルの永続性メモリに格納することで、I/Oバウンドワークロードのパフォーマンスが飛躍的に向上するという。

 直接マッピングされた永続性メモリファイルシステムに格納されたデータに対してSQLが直接実行されるので、I/Oコードパスと大規模バッファーキャッシュが不要になる。さらに、新しいデータベースアルゴリズムが、永続性メモリへの部分的または一貫性のない格納を防止する。

高パフォーマンスのグラフモデル

 グラフモデルはデータを関係に基づいてモデリングできるようにし、ソーシャルネットワークやIoTなどのつながりやパターンを調べることを可能にする。

 メモリ最適化の向上により、大規模グラフの分析に必要なメモリの量を削減でき、既存アプリケーションを変更することなく、高速に実行できるという。さらに、ユーザーはJava構文を使ってグラフアルゴリズムを作成、拡張でき、これらはネイティブアルゴリズムとして実行できる。コンパイルして同じ最適化を施せるからだ。

データベースインメモリの自動化

 Oracleは同一テーブル内の行列両形式をサポートするので、同一テーブルでのアナリティクスとトランザクションの同時実行が可能だ。

 Oracle Database 21cには、インメモリ列ストアの自己管理機能が搭載されている。これは、インメモリ列ストア内のオブジェクトの配置と除去を自動的に管理し、使用パターンの追跡と、列ストアからのオブジェクトの移動と削除を行うことで処理を合理化し、効率を向上させる。さらに、列は使用パターンに基づいて自動的に圧縮される。Oracle Database 21cには、複雑なクエリを高速化する新しいインメモリベクトル結合アルゴリズムも搭載されている。

シャーディングの自動化

 ネイティブデータベースシャーディングは、ハイパースケールなパフォーマンスと可用性を提供する。世界の企業がデータ主権とデータプライバシーの規制に容易に適合できるという。

 データシャードはハードウェアやソフトウェアを共有せず、オンプレミスやクラウド上に常駐できる。シャーディングの設計と利用を簡略化するために、Oracle Database 21cにはシャーディングアドバイザーツールが用意され、データベーススキーマとそのワークロード特性を評価し、パフォーマンスや拡張性、可用性に合わせて最適化されたシャードデータベース設計を提供する。シャード間のバックアップと復元も自動化される。

Innovationリリースとして提供する

 Oracle Databaseには、InnovationリリースとLong Termリリースがある。今回のOracle Database 21cはInnovationリリースとして提供する。

 Innovationリリースはサポート期間が限られている(通常は2年間)。現在のLong Termリリースは、2027年4月までサポートされている「Oracle Database 19c」。

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