2020年12月のWindows Updateでまたまた不穏な挙動! 油断ならない「更新プログラムのチェック」ボタンに注意山市良のうぃんどうず日記(199)

2020年最後のWindowsの定例更新は「12月8日」(米国時間)にリリースされました。個人ユーザーの方は、12月9日(日本時間)以降、手動でWindows Updateを実行し、セキュリティ更新プログラムをインストールした、あるいはWindowsの自動更新に任せてインストールしたでしょう。手動でWindows Updateを実行した方は、いつもと違う挙動に戸惑ったかもしれません。

» 2021年01月27日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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山市良のうぃんどうず日記

2020年最後の定例更新で遭遇したさまざまな挙動

 筆者はさまざまなバージョンのWindowsを仮想マシン環境に維持しており、米国時間の第2火曜日に提供される「定例更新(Bリリース)」は必ずインストールしています。オプションの更新プログラム(更新プログラムのプレビュー、Cリリース)は、「Windows Update」の動作確認のためにインストールすることもありますが、仮想マシンのスナップショットでロールバックしてBリリースの更新状態にしています。

 2020年12月の最後のWindows Updateでは、Windowsのバージョンや設定によって、いつもとは少し異なる幾つかの挙動のパターンに遭遇しました。それを踏まえて、2020年12月に皆さんが遭遇したかもしれないWindows Updateのおかしな挙動を以下にリストアップしてみました(これら以外のパターンもあるかもしれません。また、「Microsoft Defender」の更新は含めていません)。

(1)2020年12月のWindowsの累積更新プログラムのインストールが再起動して完了したと思ったら、再起動後に2020年11月の.NET Frameworkの累積更新プログラムのインストールが始まり、再び再起動が必要になった。

(2)2020年12月のWindowsの累積更新プログラムのインストールが再起動して完了したと思い、PCで作業していたら、数時間後に突然、再起動を要求された。

(3)2020年11月の.NET Frameworkの累積更新プログラムのプレビューが同時に検出され、インストールされた。

(4)Windows Updateの自動更新が「ダウンロード」ボタンを表示して止まっていた。

(5)2020年12月のWindowsの累積更新プログラムのインストールだけで完了した。

(6)「Windows 10 October 2020 Update(バージョン20H2)」の機能更新プログラムのダウンロードとインストールが始まった。


Windows Updateの履歴が示す、.NET Frameworkのプレビュー更新のインストール

 (1)(2)の挙動は、Windows 10 バージョン2004とバージョン20H2で起こり得るパターンです。今回は、Windows 10 バージョン20H2を実行する筆者のメイン物理マシンを最初に更新し、その後、その物理マシン上のHyper-V仮想マシンの更新作業を進めていたのですが、作業中に突然に再起動を要求されて少し驚きました。

 最初の更新後に「設定」アプリの「Windows Update」を開いて、他に更新が検出されないかどうかを「更新プログラムのチェック」を何度かクリックし、最新状態と確認したはずでした。それにもかかわらず、数時間の間に2回も再起動する必要があったのです。

 後で「設定」アプリでWindows Updateの更新履歴を確認すると、「品質更新プログラム」として「2012年12月のWindowsの累積更新プログラム」が、「その他の更新プログラム」として「2020年11月の.NET Frameworkの累積更新プログラムのプレビュー」(実際の更新プログラムの日本語表示名は乱れています)の同じ日のインストール履歴が記録されていました(画面1)。

画面1 画面1 Bリリースの更新プログラムをインストールが終わったら、続いて.NET FrameworkのCリリースもインストールされてしまった

 2020年12月は、セキュリティ更新を含むBリリースとしての.NET Frameworkの累積更新プログラムはリリースされませんでした。このときは、前月に.NET FrameworkのCリリースがあり、当月にBリリース(セキュリティ更新)がない場合、前月のCリリースがBリリースに格上げされると単純に思っていました。

 なぜなら、2020年11月にも同じようなことがあり、そのときには更新プログラム名が10月のリリース時点では「2020年10月の.NET Frameworkの累積更新プログラムのプレビュー」だったものが、Bリリースのときに「2020年11月の.NET Frameworkの累積更新プログラム」に付け替えられたということがあったからです。

 以下のサポート情報は、以前は「October 20, 2020-KB4580419……」というタイトルでした。しかし、今回はこのような対応はありませんでした。

 本連載で何度も取り上げたように、Windows 10 バージョン2004/20H2のCリリースのインストール挙動がおかしいという問題の影響と簡単に片付けていました。例えば、Windows 10 バージョン2004/20H2では、「更新プログラムのチェック」をクリックしない限り、.NET Frameworkの累積更新プログラムのプレビュー(Cリリース)は検出されません。「更新プログラムのチェック」をクリックすると、再起動待ちになるまで進行状況の表示が消えてしまうという問題や、クリックして再起動しないと、ダウンロードやインストールが始まらないといった問題を確認しています。

Windows 10 バージョン1809〜1909はまた別の挙動

 Windows 10 バージョン1809(Home/Proエディション)は2020年11月10日に、Windows 10 バージョン1903(全エディション)は2020年12月8日にサポートが終了したため、12月のBリリースのタイミングでWindows 10 バージョン20H2の機能更新プログラムを受け取ったかもしれません。これがパターン(6)です。

 Windows 10 バージョン1909の場合は、「設定」アプリの「Windows Update」から「更新プログラムのチェック」をクリックして手動で更新した場合、「2012年12月のWindowsの累積更新プログラム」と「2020年11月の.NET Frameworkの累積更新プログラムのプレビュー」が同時に検出され、ダウンロード、インストールされたと思います(画面2)。これがパターン(3)です。

画面2 画面2 Windows 10 バージョン1909で「更新プログラムのチェック」をクリックすると、WindowsのBリリースと、.NET Frameworkの前月のCリリースを同時が検出された

 Windowsの自動更新で更新プログラムの確認が始まった場合は、Windows Updateが途中で止まっていた可能性があります。「設定」アプリの「Windows Update」を開くと、ダウンロード待ちの状態で「ダウンロード」ボタンをクリックしないと続行しない状態です(画面3)。これがパターン(4)です。

画面3 画面3 Windows Updateが自動更新で始まった場合、「ダウンロード」ボタンを提示してダウンロード待ち状態で停止してしまう

 この状態は、Cリリースを避けてきた人にとっては、見慣れないことだと思います。.NET Frameworkの更新は、以前はWindowsの累積更新プログラムに含まれる形で提供されていましたが、Windows 10 バージョン1809で.NET Frameworkの累積更新プログラムとして分離されました。

 しかし、.NET FrameworkのCリリースを自動更新が受け取ってしまうという問題があり、Windows 10 バージョン1903からは「ダウンロード」ボタンを表示してダウンロード待ち状態で停止するように、Windows 10 バージョン2004からは自動更新が.NET FrameworkのCリリースを検出しないように改善されたと記憶しています(変更が繰り返されているため記憶違いかもしれません)。また、改善の一方で、本連載で取り上げてきたおかしな挙動(進行状況を表示しないなど)が生み出されてしまいました。

 2020年12月は、自動更新であるにもかかわらず、ユーザーの応答が必要という珍しいケースだったわけです。2020年11月がどうだったか記憶していません。

CリリースからBリリースへの格上げなんかじゃなかった

 勘の良い方ならもうお分かりかもしれませんが、前月に.NET FrameworkのCリリースがあって、当月にBリリースがない場合、前月のCリリースが当月のBリリースに格上げされているわけではありません。

 これは「Windows Update for Business(WUfB)」ポリシーが構成されたPCは、12月になっても、11月の.NET FrameworkのCリリースを受け取ることがないことからも明らかです(画面4)。WUfBの「プレビュービルドや機能更新プログラムをいつ受信するかを選択してください」「品質更新プログラムをいつ受信するかを選択してください」「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」のどのポリシー設定でも、有効な場合はCリリースを受け取りません。

画面4 画面4 WUfBポリシーが設定されているPCは、今回、.NET FrameworkのCリリースを受け取ることはなかった

 Windows 10 バージョン2004/20H2が11月の.NET FrameworkのCリリースを受け取ったのは、WUfBで管理されていないPCで「更新プログラムのチェック」をクリックしたからです。

 Windows 10 バージョン1909で11月の.NET FrameworkのCリリースを受け取ったのは、WUfBで管理されていないPCで「更新プログラムのチェック」をクリックしたから、または、.NET FrameworkのCリリースを回避する仕組みが自動更新での「ダウンロード」ボタンの提示による一時停止しかなく、これが発動したからです。

ターゲット機能更新プログラムのバージョン指定でWindows Updateの不安を解消

 更新プログラムの取得にWindows Updateを利用しているユーザーは、Cリリースを意図せずインストールしてしまうかもしれない(ただし、Cリリースが提供されるのはWindows 10 バージョン1809以降)、機能更新プログラムが都合の悪いタイミングで来てしまうかもしれないという、不安をお持ちの方が多いと思います。

 そのドキドキ感がたまらないという人もいるかもしれませんが、タイミングが悪いと時間と労力を大きく奪われることがあります。

 Windows 10 バージョン1803以降(Homeエディションを除く)からは、WUfBの「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」というポリシー設定が利用可能になり、このポリシー設定に現在実行中のものと同じバージョンを指定すると、そのバージョンのサポートが終了するまで(正確にはサポート終了から60日間)、機能更新プログラムを受け取らないという構成が可能です。

 「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」はWUfBのポリシーなので、Windowsや.NET FrameworkのCリリースを意図せず受け取るということもなくなります。

 Windows 10 バージョン1803とWindows 10 バージョン1809のHome/Proエディションは既にサポートが終了していますが、EnterpriseおよびEducationエディションについては2021年5月11日までサポートが継続されます。「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」にバージョン「1803」や「1809」を指定すると、機能更新プログラムの自動配布の心配がなくなります(画面5)。もちろん、サポート終了日まで適切に対処するのを忘れずに。

画面5 画面5 Windows 10 バージョン1803/1809のEnterprise/Educationエディションの場合は、「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」にバージョンを設定することで、機能更新プログラムが自動配布されないようにできる

 筆者の個人ブログに、2020年11月時点での「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」のポリシー設定の検証結果をまとめています。参考にしてください。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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