レガシーアプリケーションを近代化する必要がある場合、最良のアプローチは、解決しようとしている問題によって決まる。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
デジタルトランスフォーメーションの進展に伴い、レガシーシステムを近代化する効果的な方法を見いだすことが、アプリケーションリーダーにとって必須の課題となっている。その最大の難関は、行動を起こす前にリスクと効果を見極めることだ。
「多くの企業でレガシーシステムは、それらに依存するビジネス施策やそのプロセスの展開のネックになっていると思われている」と、Gartnerのアナリストでバイスプレジデントのシュテファン・ファン・デル・ザイデン(Stefan Van Der Zijden)氏は指摘する。
「転換点に達した時、アプリケーションリーダーはこうした制約を解消するため、アプリケーションモダナイゼーションに取り組まなければならない」(ファン・デル・ザイデン氏)
以下に示すGartnerの3ステップの評価プロセスは、アプリケーションの近代化へのアプローチを決定する際の指針となる。最良のアプローチは、解決する必要がある問題によって決まる。
アプリケーションの近代化には、6つの推進要因がある。これらの要因には、レガシーアプリケーションの技術やアーキテクチャ、機能に起因する問題、懸念、制限が含まれる。
これらの要因のうち3つは、それぞれビジネス適合性、ビジネス価値、アジリティというビジネスの観点から捉えられる。レガシーアプリケーションがデジタルビジネスの新しい要件を満たさない場合、適切に満たすように近代化したり、より高いビジネス価値を提供するようにアップグレードしたりする必要がある。デジタルビジネスの要求に対応していくアジリティが不足しているアプリケーションは、コストやリスクにつながる恐れがある。
他の3つの要因はITの観点から捉えられ、それぞれコスト、複雑さ、リスクに関わっている。アプリケーションのTCO(総保有コスト)が高過ぎる場合や、テクノロジーが複雑過ぎる場合、セキュリティやコンプライアンス、サポート、スケーラビリティが損なわれている場合、近代化する必要がある。
ビジネスの観点から見た要因とITの観点から見た要因の両方が複数発生している状況が、近代化の最良の機会になる。
機会を選択し、問題を特定したら、近代化の選択肢を検討する。Gartnerは7つの選択肢を、実行しやすい順に順位付けている。実行しやすいほど、システムとビジネスプロセスにもたらすリスクと効果が小さく、実行しにくいほど、こうしたリスクと効果が大きい。
アプリケーションのデータや機能をカプセル化することでアプリケーション機能を拡張し、API経由でサービスとして利用できるようにする。
アプリケーションコンポーネントを、コードや機能を変更せずに他のインフラストラクチャ(物理、仮想、またはクラウド)にデプロイし直す。
コードの構造や機能は変更せず、コードに最小限の変更を加え、新しいランタイムプラットフォームに移行する。
外部動作を変更せずに、既存コードの構造を変更して最適化し、技術的負債を解消するとともに、非機能的な属性を改善する。
コードを大幅に変更して新しいアプリケーションアーキテクチャにシフトし、新しい優れた機能を利用する。
アプリケーションコンポーネントを、スコープと仕様は維持したまま、一から再設計または再作成する。
新しい要件とニーズを考慮しながら、これまでのアプリケーションコンポーネントを完全に置き換える。
最後に、近代化の7つの選択肢を、テクノロジーやアーキテクチャ、機能、コスト、リスクへの影響について評価、比較し、自社に最大の効果と価値をもたらす近代化のアプローチを選ぶ。
結局のところ、レガシーアプリケーションを近代化するのであれば、リアーキテクトやリビルド、リプレースのいずれかを選ぶことになる。リアーキテクトはコストとリスクが中程度であるのに対し、リビルドやリプレースは最良の結果をもたらす一方、コストとリスクが最も高い。それぞれの選択肢によって、目標をどれだけ達成できるかを予測し、最小の労力で最大のプラスのインパクトをもたらすという観点からの評価を加味して、全ての選択肢を比較検討することが鍵となる。
出典:7 Options to Modernize Legacy Systems(Smarter with Gartner)
Director, Public Relations
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