「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、データベースファイルにおけるページの詳細情報の出力について解説します。
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本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理関数「sys.dm_db_page_info」におけるデータベースファイルに関するページの詳細情報の出力について解説します。対応バージョンは、SQL Server 2019以降です。
SQL Serverでは、データベースのオブジェクトやユーザーデータはデータファイル(「.ndf」または「.mdf」)に記録されます。データの変更などのログ情報は、データファイルとは別に、トランザクションログファイルに記録されます。
データファイルでは、「ページ」と呼ばれる8KBサイズの基本単位で、オブジェクトやユーザーデータへのストレージの割り当てを行います。ページは、「エクステント」と呼ばれる8ページ(64KB)をまとめた領域単位で、オブジェクトやユーザーデータへの割り当てを管理します。
「sys.dm_db_page_info」動的管理関数を使用すると、データファイルに格納されているページについて、ページの種類やオブジェクトへの割り当て情報、格納されたデータ行数などの詳細な情報を出力できます。
構文 sys.dm_db_page_info (DatabaseId, FileId, PageId, Mode)
引数名 | データ型 | 既定値 | 説明 |
---|---|---|---|
DatabaseId | smallint | NULL | データベースのIDを指定。NULLの場合エラーになる |
FileId | int | NULL | DatabaseIdで指定したデータベースのファイルのIDを指定。NULLの場合エラーになる |
PageId | int | NULL | FileIdで指定したファイル内のページのID番号を指定。NULLの場合エラーになる |
Mode | nvarchar(64) | 'LIMITED' | 出力の詳細レベルを指定。以下のいずれかの値を指定する ・'LIMITED' ・'DETAILED' 'DETAILED'を指定すると、より詳細な情報が出力される |
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
database_id | int | データベースID |
file_id | int | ファイルID |
page_id | int | ページID |
page_header_version | int | ページヘッダバージョン |
page_type | int | ページの種類 |
page_type_desc | nvarchar(64) | ページタイプの説明 |
page_type_flag_bits | nvarchar(64) | ページヘッダのタイプフラグビット |
page_type_flag_bits_desc | nvarchar(64) | ページヘッダのタイプフラグビットの説明 |
page_flag_bits | nvarchar(64) | ページヘッダのフラグビット |
page_flag_bits_desc | nvarchar(256) | ページヘッダのフラグビットの説明 |
page_lsn | nvarchar(64) | ログシーケンス番号/タイムスタンプ |
page_level | int | インデックス内のページのレベル (leaf = 0) |
object_id | int | ページを所有しているオブジェクトID |
index_id | int | インデックスID (ヒープの場合は0) |
partition_id | bigint | パーティションID |
alloc_unit_id | bigint | アロケーションユニットID |
is_encrypted | bit | ページが暗号化されているかどうかを示すビット |
has_checksum | bit | ページにチェックサム値があるかどうかを示すビット |
checksum | int | データ破損の検出に使用されるチェックサム値 |
is_iam_page | bit | ページがIAMページかどうかを示すビット |
is_mixed_extent | bit | 混合エクステントに割り当てられているかどうかを示すビット |
has_ghost_records | bit | ページにゴーストレコードが含まれているかどうかを示すビット ゴーストレコードは、削除のマークが付けられているが、まだ削除されていないレコード |
has_version_records | bit | ページにAcceleratedDatabaseRecoveryに使用されるバージョンレコードが含まれているかどうかを示すビット |
pfs_page_id | int | 対応するPFSページのページID |
pfs_is_allocated | bit | 対応するPFSページでページが割り当て済みとしてマークされているかどうかを示すビット |
pfs_alloc_percent | int | PFSバイトで示される割り振りパーセント |
pfs_status | nvarchar(64) | PFSバイト |
pfs_status_desc | nvarchar(64) | PFSバイトの説明 |
gam_page_id | int | 対応するGAMページのページID |
gam_status | bit | GAMに割り当てられているかどうかを示すビット |
gam_status_desc | nvarchar(64) | GAMステータスビットの説明 |
sgam_page_id | int | 対応するSGAMページのページID |
sgam_status | bit | SGAMに割り当てられているかどうかを示すビット |
sgam_status_desc | nvarchar(64) | SGAMステータスビットの説明 |
diff_map_page_id | int | 対応する差分ビットマップページのページID |
diff_status | bit | 差分ステータスが変更されたかどうかを示すビット |
diff_status_desc | nvarchar(64) | 差分ステータスビットの説明 |
ml_map_page_id | int | 対応する最小ロギングビットマップページのページID |
ml_status | bit | ページのログが最小かどうかを示すビット |
ml_status_desc | nvarchar(64) | 最小ロギングステータスビットの説明 |
prev_page_file_id | smallint | 前ページファイルID |
prev_page_page_id | int | 前のページのページID |
next_page_file_id | smallint | 次ページファイルID |
next_page_page_id | int | 次ページのページID |
fixed_length | smallint | 固定サイズの行の長さ |
slot_count | smallint | スロットの合計数(使用済みおよび未使用) データページの場合、行数と同じ |
ghost_rec_count | smallint | ページでゴーストとしてマークされたレコードの数 |
free_bytes | smallint | ページ上の空きバイト数 |
free_data_offset | int | データ領域末尾の空き容量のオフセット |
reserved_bytes | smallint | すべてのトランザクションで予約されている空きバイト数(ヒープの場合)、ゴースト行の数(インデックスリーフの場合) |
reserved_bytes_by_xdes_id | smallint | デバッグ目的でのみ使用 |
xdes_id | nvarchar(64) | デバッグ目的でのみ使用 |
SQL Server 2019では、「sys.dm_exec_requests」と「sys.sysprocesses」に、「page_resource」列が追加されました。これらの動的管理ビューと「sys.dm_db_page_info」動的管理関数、「sys.fn_PageResCracker」システム関数とを組み合わせることで、各スレッドがロックやラッチにより待機しているページ情報を取得できます(図1)(図2)。
「sys.dm_db_page_info」動的管理関数が出力した情報を使用することで、ページIOラッチが発生したテーブルやパーティションを、「object_id」列や「partition_id」列の値を使用して特定できます。
なお、ページ情報はロック待ちが発生した際にも表示されますが、ロック粒度がページロックの場合に限られます。キーロックなど、ページロックではない場合には「sys.dm_exec_requests」と「sys.sysprocesses」の「page_resource」列の値が「NULL」となり、ページ情報を表示できませんでした。直前の待機がページ関連の待機でない場合も「page_resource」列の値が「NULL」となりましたので、現在アクセス中のページ情報を取得するような使い方はできないようです。
※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019 CTP2」をインストールした環境を想定して解説しています。
日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
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