雨天や夜間に撮影した画像には課題がある。視認性が悪いからだ。シンガポールの大学の研究者がこれを改善する新手法を開発した。併せて、複数人が重なって見える画像から姿勢を推定する精度の高い手法も公開した。
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シンガポールのYale-NUS Collegeは、2021年7月19日(シンガポール時間)、コンピュータビジョンを改善する3種類の手法を発表した。
1番目は夜間に撮影した画像にある人工光の影響を抑えるもの。2番目は雨天の画像に現れている雨の影響を抑えるもの。3番目は複数人が重なって見える画像から人物の姿勢を推定する精度の高い手法だ。
夜間に撮影した画像は、人工光によるノイズの影響を受ける。雨天の画像は雨の筋や雨もや(ベール)の影響を受ける。
自動監視システムや自動運転車など、多くのコンピュータビジョンシステムは入力画像の視認性が良好ではない場合、性能が低下し、場合によっては動作しなくなる。Yale-NUS Collegeの研究チームが開発した新手法は、これらのシステムの性能を向上させる可能性があるという。
研究チームは夜間の画像と雨天の画像の画質をそれぞれ向上させるディープラーニングアルゴリズムを導入した。
夜間の画像を鮮明にしようと明度を上げると、ノイズや人工光の悪影響も強くなる。今回の研究の結果、明るさを高めた場合でも、ノイズと光効果(まぶしさを感じさせるグレア、にじみの効果があるグロー、投光器のようなフラッドライトの明かり)を抑え、鮮明な夜間画像を得ることができた。
開発した手法は、夜間の画像におけるグレアの影響を弱めることができる。既存の手法では処理できなかった問題だ。
雨天の画像に関する研究では、フレームアラインメントを採用することで画質の低下を抑えた。複数のフレームにランダムに現れて、画質を低下させる雨の筋の影響を取り除いた。
さらに、移動カメラを使って深度推定を行い、大量の雨滴による雨もやの効果を取り除いた。既存の手法は雨の筋の除去に重点を置いている。新手法では、雨の筋はもちろん、雨もやの効果も取り除くことができる。
単眼カメラで撮影された画像から人間の姿勢を検知しようとした場合、特有の難しさがある。人が複数いると悪影響を受けるからだ。人々が近くで何らかのやりとりをしている場合や、重なって見える場合は特にそうだ。
単眼カメラを用いて、3次元姿勢を推定する場合、2つの手法がこれまで使われてきた。トップダウン法とボトムアップ法だ。それぞれ欠点がある。
研究チームはこの2つを組み合わせ、人が複数いる場合でも、推定の信頼性を高め、人物間の距離(や大きさ)をより確実に処理する新手法を開発した。
開発した新手法は、ビデオ監視やビデオゲーム、スポーツ放送といった分野に応用できる可能性がある。
研究チームは、今回の新手法を著名なコンピュータサイエンスカンファレンスである「2021 Conference on Computer Vision and Pattern Recognition」(CVPR、開催期間2021年7月19〜25日)で発表した。
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