人工知能学会では外部発信活動の一つとして「AIマップβ」を公開している。本記事ではAIマップβ3.0のリリースに向けた2020年度のAIマップタスクフォースの活動内容とAI技術の発展に関する課題、今後の展望を概観する。
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前編の記事では、人工知能学会の外部発信活動の一つとして公開している「AIマップβ」作成のいきさつとこれまでに公開してきたβおよびβ2.0の概要を解説した。後編では、β3.0のリリースに向けた2020年度のAIマップタスクフォースの活動内容とAIマップの活用事例や、人工知能学会セッションの参加者アンケートから見えてきたAI技術の発展に関する課題、今後の展望を概観する。
2020年度の活動は、2020年6月にオンライン開催された人工知能学会全国大会の企画セッションでのAIマップβ2.0の公開に対するフィードバックを基にして開始した。企画セッションでは、AI課題マップとその活用法のチュートリアルを紹介したが、セッション参加者のコメントとして「自社で抱える実案件にどうAI技術を適用できるか」「実現手段を誰に相談すればよいか」が大きな課題として提示された。
この課題に対応するために、立ち上げ時のメンバーに加えて、戸上氏(LINE)、友野氏(凸版印刷)、吉岡氏(富士フイルム)、松尾氏(東京大学)、そして筆者がタスクフォースに合流し、「AI課題マップ」を作成、公開した。反響は大きく、2020年度中に人工知能学会に対して多くの問い合わせがあり、AIマップの紹介依頼を頂くことも増えてきた。
特に、学会外の人々とAIマップを議論する機会が増えたことはタスクフォースメンバーにとっても非常に有意義であり、AIマップの次のステップを考える際に、その可能性を広げる大きなきっかけになった。
AIマップタスクフォースおよび学会外の人々との議論のまとめとして、世の中で急速に発展しているDX(デジタルトランスフォーメーション)とAIの接点を検討し、その方向性を示すことがβ3.0のコンテンツとして重要になると考えた。DXとAIの接点を語るためには、社会課題に対してどのようにAI技術を適応するか、さらに複合的なAI技術が必要となる分野においては誰にどのように相談すれば最適なAI技術を探し当てられるかという情報が次のβ3.0のコアになると考えている。
2021年6月に開催された人工知能学会全国大会の企画セッション「AIマップβ3.0に向けて」で、タスクフォースは2020年度の活動成果とβ3.0に向けた方向性を、事例紹介とパネルディスカッションともに報告した。アジェンダは次の通り。
本セッションには約150人が参加し、セッションの進行中に実施したアンケートで非常に多くの有用な情報が収集された。
図1に、参加者の属性分布を示す。ベテランと中堅を合わせると30%程度がAI研究者であり、40%弱がAIを実ビジネスとして活用する実務者だと分かった。また、15%程度はAIに関心のある異分野研究者であり、AI初学者も15%程度参加していた。従来のAI研究者だけではなく、新しくAIを学ぼうとしている人、さらにはAIをツールとして活用しようと考える実務者など、幅広い参加者がいたと考えている。
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