ソフトウェアエンジニアリングチームの有効性を高める3つの方法Gartner Insights Pickup(228)

チームの有効性を高めるには、権限の付与や重要なスキルの習得支援、サーバント(支援型)リーダーシップに注力することだ。

» 2021年10月15日 05時00分 公開
[Laura Starita, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 「パフォーマンスが高いソフトウェアエンジニアリングチームはパフォーマンスが低いチームと比べ、従業員エクスペリエンスや生産性の観点から見て、53%優れた成果を実現する」。これは、「2020 Gartner Software Engineering Team Effectiveness Survey」の結果だ。この調査は、ソフトウェアエンジニアリングチームによるステークホルダーへの提供価値と対応の目標達成を左右する要因を明らかにしている。では、どんな戦術によって、目標達成に関するチームの有効性を高められるのだろうか。

 多くのソフトウェアエンジニアリングリーダーは、チームの指揮命令系統や物理的な場所が成功を左右すると考える。ところが、Gartnerの調査では、これらは成功に影響しないことが分かった。またリーダーは、アジャイルやDevOps、自動化が高いパフォーマンスにつながると考える傾向がある。だが、アジャイルやDevOpsは広く導入されているため、ほとんど違いをもたらさない。ソフトウェアエンジニアリングリーダーは、他の分野に有効性を高める機会を求めなければならない。

 ソフトウェアエンジニアリングリーダーは、チームの自律性や説明責任を高める戦術に、提供価値向上や目標達成の機会を見いだすことができる。リーダーがチームにエンジニアリング標準の策定を認め、重要なスキルの習得を支援し、サーバント(支援型)リーダーとして阻害要因の排除やステークホルダーとの橋渡しをすれば、チームは優れた結果を出すようになる。以下では、こうした戦術の具体例を示す。

(出所:Gartner ソフトウェアエンジニアリングチームの有効性の範囲とインパクト)

チームが標準を策定できるようにする

 ソフトウェアエンジニアリング標準は、リスクやコスト、複雑さを軽減する上で重要だ。だが、制限が厳しすぎると、チームによる幅広いビジネス目標の達成を妨げることがある。標準の恩恵を最大化して制限に歯止めをかけるには、ソフトウェアエンジニアリングチームが標準の策定に参加し、標準の最適化を図る必要がある。前述の調査によると、業務実績から見て、標準策定に参加しているチームは、参加していないチームよりも有効性が23%高い。現在、標準策定に参加しているソフトウェアエンジニアリングチームは、全体の41%にとどまっている。

 標準を策定するには、チームはソフトウェアエンジニアリングの組織全体から意見を集約し、技術やビジネスニーズの変化に合わせて標準を進化させ、レビューをし、標準が適さない状況に対処するための推奨事項も提示しなければならない。標準策定にあたっては、ユーザーエクスペリエンスやアーキテクチャ、データベース設計、統合標準に注意を払う必要もある。これらはチームの有効性に大きく影響するからだ。

重要なスキルの習得を支援する

 自律的な目標達成に必要となる重要なスキルと能力をチームに持たせるソフトウェアエンジニアリングリーダーは、遅延をなくし、成果を向上させる。スキルニーズは絶えず変わるので、優れたソフトウェアエンジニアリングリーダーは、チームが日々のワークフローを円滑に実行するためのスキルや能力を優先するからだ。同時に、こうしたリーダーは、誰もがさまざまな業務に貢献できるよう、対応できる仕事を増やすことをチームメンバーに奨励する。Gartnerの調査では、メンバーがさまざまな仕事をこなせるチームは、スペシャリストで構成されたチームよりも有効性が18%高いことが示されている。

 メンバーに仕事の幅を広げさせる1つの方法は、現在の専門分野以外のスキルを伸ばせる新しい仕事への挑戦を後押しすることだ。この調査によると、メンバーがこうした挑戦をするチームは、有効性が11%高い。

サーバントリーダーシップを実践する

 さまざまなチームメンバーが調整や管理に時間を取られると、価値を生み出す業務に支障が出てしまう。これに対し、リーダー(スクラムマスターやマネジャーなど)が調整や管理に当たるチームは、より有効に機能する。例えば、リーダーが阻害要因を特定し、解決すれば、チームの有効性が16%向上するという調査結果がある。同様に、リーダーがプロジェクトマネジャーやガバナンスパートナーのようなステークホルダーとの調整を受け持つと、チームの有効性が11%向上するというデータもある。

出典:3 Ways to Make Your Software Engineering Team 50% More Effective(Smarter with Gartner)

筆者 Laura Starita

Contents Writer, Gartner associate


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