Microsoft、自然言語処理モデルGPT-3がAzureで使える「Azure OpenAI Service」を発表独占ライセンスに基づき招待制で提供

イーロン・マスク氏らが設立したOpen AIの開発による自然言語処理モデル「GPT-3」を、Microsoftが独占ライセンスの下で、Microsoft Azure のサービスとして提供開始すると発表した。GPT-3は、人間の書いた文章と見分けがつかないほど自然な文章を作成できるとして、注目を集めている。

» 2021年11月04日 08時00分 公開
[三木泉@IT]

 Microsoftは「文章作成AI」として注目される「GPT-3」を利用できるサービス、「Azure OpenAI Service」を提供開始する。当初は「Invitation Only」、つまり同社が認めた限定的な顧客に対し、招待制で提供する。2021年11月2日(米国時間)、同社カンファレンスMicrosoft Igniteで発表した。

 GPT-3は、イーロン・マスク氏らが汎用人工知能の実現を目指して設立した非営利企業であるOpen AI が開発した自然言語処理モデル。高い精度で、人が書いたかのような自然な文章を生み出せるとして注目されている。

 GPT-3は、1750億個以上のパラメータを持つ世界最大の言語モデルという。このモデルは、インターネット上のWebやデジタル書籍など、45TB以上の小説、ビジネス、自然科学、人文科学、プログラミングなど、あらゆる分野のデータを学習しているため、ジャンルを問わず高い精度の自然な文章を作成できるとされている。

 GPT-3は汎用的なモデルであり、想定用途は幅広い。機械翻訳、文書の要約、ニュース記事、マニュアル、FAQ、チャットbotなど、さまざまな文章の自動作成に使える。Webデザインやプログラミングの支援にも利用できる。

実況コメントの要約を作成

 例えばMicrosoftは、バスケットボール試合の実況から、GPT-3が数秒のうちに 要約を複数作成し、人間のスタッフがこの中から最も適切なものを選んで順次ハイライトビデオを作る、という利用シナリオを紹介している。これらの要約をさらにまとめてGPT-3がクォーター全体の要約を作り、タイムリーにブログポストとして公開することもできると説明している。

 GPT-3では、ユーザーの利用目的に即したデータを追加学習させることで、用途に適した文章を高精度で生み出せるという。

OpenAIとMicrosoftの深まる関係、独占ライセンス

 MicrosoftとOpenAIの関係は、過去約2年間で急速に深まってきた。

 Microsoftは2019年7月、OpenAIに10億ドルを投資すると発表した。また、OpenAI専用のスーパーコンピューターをAzure上に構築した。これは28万のCPUコア、1万のGPUで構成され、スーパーコンピューターランキングの5位にランクされたという。そしてOpenAIは、同社のモデルトレーニング基盤とAPIサービスをAzureに移行した。

 一方でMicrosoftは、自社製品でのGPT-3の活用を進めてきた。ローコード開発プラットフォーム「Power Apps」、GitHubのコーディング支援機能「GitHub Copilot」にGPT-3を組み込んだ。

 これらを踏まえ、 Microsoftは2021年9月、OpenAIとGPT-3の独占的なライセンス契約を結んだと発表した。

Microsoftが選んだ、少数の顧客にのみ招待制で提供

 今回発表のAzure OpenAI Serviceは、「Azure Cognitive Services」におけるAPIとして提供する。 少なくとも当初は、Microsoftが厳選したユーザーのみが招待制で利用できるようになる。

 提供対象となるのは「AI技術の利用についての責任ある原則および戦略を組み込み、明確に定義されたユースケースの実装を計画している顧客」。

 これはGPT-3のパワフルさが、フェイクニュースやスパム、ステルスマーケティングなどに悪用されかねないからだという。また、 文章や単語の意味、ニュアンスを理解してるわけではないため、不適切な用語や表現が含まれる危険性も指摘されている。

 Azure OpenAI Serviceでは、ユーザーが適正な結果を常に得られるよう、OpenAIからのレスポンスをフィルターすると共に、適正な利用をモニターする新たなツールも提供するとしている。

 OpenAIは自社としても、GPT-3のAPIサービスを提供している。Azure上に運営されているこのサービスは、今後も継続される。

 Azure OpenAI Serviceでは、GPT-3のAPIに加え、「セキュリティ、信頼性、コンプライアンス、データの秘匿性、その歌 Azureに組み込まれた企業向け機能を提供できる」と Microsoftは 説明している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。