顧客サービスとサポートテクノロジーのハイプサイクルにおける2021年の主要トレンドGartner Insights Pickup(231)

顧客サポートおよびサービス(CSS)のリーダーは、有望なテクノロジーを評価し、投資を再検討する。本稿では、顧客サービスとサポートにおける5つの主要トレンドを紹介する。

» 2021年11月05日 05時00分 公開
[Ashutosh Gupta, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 顧客サポートとサービス(CSS)のリーダーにとって、オートメーションやコンタクトセンター技術、先取的なサービス、顧客サービスアナリティクスが投資の優先事項となっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響が長期化するにつれ、顧客サービスの需要が高まっていることが背景にある。

 2021年の顧客サービスとサポートテクノロジーのハイプサイクルで取り上げられているテクノロジーは、前述のカテゴリーにおおむね当てはまる。これらのテクノロジーは、コンテキストに沿ってパーソナライズされた顧客エンゲージメントを実現し、サポート担当者の業務環境を改善し、顧客のセルフサービスインタラクション(操作、やりとり)を促進する。

 「より包括的なカスタマ―エクスペリエンス(CX)を提供するには、幅広いCSSテクノロジーを別々の縦割りのシステムや評価プロセスとしてではなく、統合されたエコシステムとして捉えることがますます重要になっている」。Gartnerのアナリストでバイスプレジデントのドリュー・クラウス(Drew Kraus)氏はそう指摘する。

顧客サービスとサポートにおける5つの主要トレンド

トレンド1:デジタル顧客サービス

 顧客は、企業との関わり方に大きな期待を寄せる。だが、多くの場合、顧客サービスは従来の音声とIVR(自動音声応答)に加え、個別のチャネルやアプリケーションにしか重点を置いてこなかった。そのため、カスタマージャーニー全体を通じて提供する、包括的なカスタマーエクスペリエンスのインパクトを見過ごしてしまう。

 デジタル顧客サービスは、エンドツーエンドの顧客エンゲージメントに焦点を当てる。会話型AIとインテリジェントオートメーションを利用し、デジタルチャネル全体にわたってシームレスな対話を実現する。企業は、こうしたデジタル顧客サービスによって、パーソナライズされ、タイムリーでスムーズなエクスペリエンスを顧客に提供でき、対話の不足や高い解約率のリスクを軽減できる。

トレンド2:ワークフォースエンゲージメント管理(WEM)アプリケーション

 ハイブリッド型コンタクトセンターへの移行は、スタッフのオンボーディングや評価、コーチングの方法を見直す必要性を浮き彫りにした。チャットbotや仮想顧客アシスタント(VCA)が、大半の日常的なインタラクションを処理するようになったことから、サポート担当者は、顧客とのより複雑で感情に関わるインタラクションについて、より大きな責任を負うようになっている。そのため、投資と生産性を維持するには、ポジティブな仕事環境が必要だ。

 既存のワークフォース最適化(WFO)アプリケーションは、業務効率やeラーニング、パフォーマンスモニタリングに大きな重点を置いている。だが、従業員のウェルビーイング(従業員幸福度)やエンゲージメントに関連する問題には対処しない。インタラクション支援(ユニファイドデスクトップ、プロセスガイダンス)や従業員の声(VoE)といったワークフォースエンゲージメント管理(WEM)テクノロジーは、このギャップを埋められる。このテクノロジーにより、コンタクトセンターマネジャーはスタッフに包括的に支援できる。

(出所:Gartner Hype Cycle for Customer Service and Support Technology 2021)

トレンド3:顧客エンゲージメントハブ(CEH)

 顧客エンゲージメントハブ(CEH)は、複数のシステムを連携させ、顧客にプロアクティブに対応し、顧客と関わるあらゆる段階でコンテキストに即したやりとりを可能にするアーキテクチャフレームワークだ。全ての部門をカバーしてそれらをつなげ、マーケティングや営業、顧客サービスのプロセスを同期できる。顧客にリーチする多数のデジタルタッチポイントをいつ、どこでも活用できるので、CEHは企業がマルチエクスペリエンス戦略を実行する上で重要になる。

 Gartnerは、2022年までに大企業の60%が、CXテクノロジーとプロセスの目標を拡大し、顧客ニーズにフォーカスした総合的なアプローチで異種混在のシステムを統合すると予想している。マーケティング、デジタルコマース、販売部門は、ITリーダーと共同でCEH計画を策定するとみられる。

トレンド4:サービスとしてのコミュニケーションプラットフォーム(CPaaS:Communications platform as a service)

 CPaaSは、企業がコミュニケーションソフトウェアを開発、実行、配布できるクラウドベースのミドルウェアだ。このプラットフォームが提供するAPIのDIYエコシステムは、アプリケーションやサービス、ビジネスプロセスへのコミュニケーションモジュール(SMS、音声、メッセージングアプリ、ソーシャル、ビデオ)の統合を容易にする。CPaaSはビジネスの特定の部分にフォーカスするのではなく、さまざまな製品やビジネス部門をカバーするよう、企業全体にわたって組み込まれる。

 CPaaSを使えば、ある程度のITスキルがあるチームは、通知やアポイントメントのリマインダーといった基本的なワークフローにSMSや音声、2要素認証を展開できる。また、強力な開発チームは電子メールやビデオ、決済、インスタントメッセージングといった機能を持つ複雑なビジネスワークフローを構築できる。

トレンド5:顧客サービスアナリティクス

 顧客サービスとサポートは、通話記録や電子メール、デジタルメッセージなどで構成される膨大な量の非構造化データを生成する。これらのデータは、カスタマーインタラクション、カスタマージャーニー、従業員エンゲージメント、業務パフォーマンスについて、深い洞察を得るのに役立つ。

 顧客サービスアナリティクスには、インタラクション分析(デスクトップ、音声、テキスト)、カスタマージャーニーやセンチメント分析、履歴分析などが含まれる。顧客サービスアナリティクスシステムは、カスタマーエクスペリエンスを向上させるための次の最適なステップを提案したり、オートメーションやプロセス改善の機会を特定したり、CSSリーダーによるサポート担当者のスキル評価を支援したりすることができる。

出典:5 Key Trends from 2021’s Hype Cycle for Customer Service and Support Technologies(Gartner)

筆者 Ashutosh Gupta

Content Marketing Specialist


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