早稲田大学電子政府・自治体研究所は、「第16回早稲田大学世界デジタル政府ランキング2021」を発表した。1位はデンマーク、2位はシンガポール、3位は英国。日本は9位だった。
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早稲田大学電子政府・自治体研究所は2021年12月10日、「第16回早稲田大学世界デジタル政府ランキング2021」を発表した。同ランキングは、ICT先進国64カ国・地域のデジタル政府の進捗(しんちょく)度を10の項目に基づいて評価したもの。
2021年度は1位がデンマーク、2位がシンガポール、3位が英国だった。日本は前回の7位から2つランクを落とし、9位だった。
項目別に見ると「行財政改革への貢献度」「各種オンラインアプリケーションサービスの進捗度」「Webサイトやポータルサイトの利便性」「ICTによる市民の行政参加の充実度」「オープンガバメント」「サイバーセキュリティ」で全て1位を獲得していた。
デンマークは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として情報インフラを活用した「コロナパス」と呼ぶデジタル証明を運用している。COVID-19が拡大し始めた段階からコロナパスを整備、発行しており、「EU(欧州連合)による互換性のあるデジタルグリーン証明書導入の先陣役を担った」と早稲田大学電子政府・自治体研究所は分析する。
デジタル化戦略に携わる機関としてデジタル化庁(Digitalization Agency)を設置しており、「クラウド」「標準化」「福祉」「グリーン化」に関連するデジタル戦略を把握しているという。さらに、省庁横断型のデジタル化を推進する権限を持っており、データ連携基盤を整備している。
日本のマイナンバーに該当するCPR(社会保障番号)が普及しており、社会保障として「医療」「教育」「福祉」が提供されている。医療ポータルサイトは、診察予約や検査結果報告、処方医薬品の情報を共有しており、コロナパスの基盤にもなった。
項目別に見ると「政府CIOの活躍度」「ICTによる市民の行政参加の充実度」「オープンガバメント」「サイバーセキュリティ」で1位だった。
シンガポールはDX(デジタルトランスフォーメーション)の強化に取り組んでおり、高度な技術者を優遇するビザ「テックパス」の導入や5年ごとの研究開発強化戦略として「研究・イノベーション・エンタープライズ2025計画」を掲げるなど、IT人材の誘致にも力を入れている。
COVID-19対策については、全事業者に「Safe Entry」(入退場記録システム)の導入を義務化し、感染者や濃厚接触者の特定を効率化して、感染を抑制した。行動の可視化によって軽犯罪の減少や治安維持向上にも効果があった。
項目別では「オープンガバメント」が1位で、「Webサイトやポータルサイトの利便性」「先端ICTの利活用度」が2位だった。
英国は、「国営の国民保健サービス」(NHS)が医療全体を担っており、COVID-19対策を機にDX化が一気に進んだという。専用アプリを通して集中治療室(ICU)の医療チームが意思疎通を図り、機械学習でICUのベッドや人工呼吸器の需要、患者の入院期間を予測し、効率良く利用できるようにした。医師と患者や家族間のコミュニケーションに向けてビデオ会議ツールも導入した。
低所得者向けの「ユニバーサルクレジット」の申請者は約100万人いたが、納税情報を活用することで即座に給付金を支給できたという。
早稲田大学電子政府・自治体研究所は同ランキングの結果を踏まえ、日本に対して次のように提言している。
「今後デジタル庁を中心に具体的、現実的な解決策を促進して、本来のデジタル政府と電子自治体の協働作業を構築すべきだ。社会的課題を含めた多角的分野で、デジタル政府が果たす役割と責任を再考すべきときだ」
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