連載
» 2022年01月06日 05時00分 公開

ゼロトラストとデータセキュリティ――「DLP」「IRM」とは何か働き方改革時代の「ゼロトラスト」セキュリティ(16)

デジタルトラストを実現するための新たな情報セキュリティの在り方についてお届けする連載。今回は、ゼロトラストにおけるデータセキュリティについて解説する。

[仲上竜太,株式会社ラック]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

 テレワークの常態化やクラウド利用の推進によって、企業や組織での働き方のデジタル化が進んでいます。世界全体でデジタル化が進む状況は、サイバー攻撃者にとって攻撃可能な機会の拡大につながっています。ネットワークやデバイスの脆弱(ぜいじゃく)性を悪用して内部ネットワークに侵入し、情報を持ち出すサイバースパイやデータを無効化するランサムウェアによる脅迫などの被害が日々報道されています。

 昨今多くの企業が取り組みを進めている「ゼロトラスト」は、働き方のデジタル化によって変化したコンピュータネットワークの利用形態に合わせ、データを中心にデバイス、ネットワーク、アイデンティティー、サービス/アプリを可視化と分析、自動化と連携によって結び付ける、情報システム全体のセキュリティアーキテクチャです。

 デジタルトラストを実現するための新たな情報セキュリティの在り方についてお届けする本連載『働き方改革時代の「ゼロトラスト」セキュリティ』。今回は、ゼロトラストにおけるデータそのもののセキュリティにフォーカスして解説します。

データの不正な取り扱いによって生じる情報漏えい

 現在の情報システム環境では、機密情報がさまざまな形態で管理されています。

 SaaSアプリケーション上に格納された経理データ、オンプレミスのデータベースに格納された顧客の個人情報、Excelファイルに記録された取引先の契約情報などです。とりわけ単体のファイルに記録された機密情報は、情報システム上で持ち回りがしやすく、メールへの添付や印刷、クラウドストレージへのアップロード、USBメモリへの転送など、データを開ける利用者なら簡単な操作で持ち出しが可能です。

 不正の意図がない場合でも、企業の許可していないクラウドサービスへのアップロードや、持ち帰り業務のための私物PCへのコピーが情報漏えいのきっかけとなったケースは多々あります。また、内部不正のような明確な悪意を想定した場合に、通常業務における利便性との両立は非常に頭の痛い課題です。

 ゼロトラストでは、動的な権限管理によって常にアクセスを制御する原則があります。ネットワークの場所に依存せず、データを保持しているアプリやサービスへのアクセスに対し、常に認証にかけてアクセスの許可を判断する仕組みがゼロトラストですが、データそのものの誤った取り扱いを防ぐ必要もあります。

 適切な認証を介してデータにアクセスが許可された場合、データの不正な持ち出しを防ぐにはどのような方法があるのでしょうか。

データの誤った取り扱いを未然に防ぐDLP

 機密情報を含んだファイルやデータの誤った取り扱いを防ぐ役割として「DLP:データ漏えい防止(Data Loss Prevention)」が従来、活用されています。DLPは業務で利用されるPCや社内システム、クラウドサービスに保管されたデータが意図せず、または内部不正によって外部に流出するのを防ぐ仕組みです。

 PCに保存された機密情報が入ったデータをUSBメモリにコピーした、クラウドサービスに保管されているデータを別のクラウドに送信した、機密情報を開く権限のないPCにネットワーク経由で転送したなど、機密情報の漏えいが疑われる場面で、ファイルの内容から機密情報かどうかを検出し、データ転送の遮断や警告などを自動化するので、企業や組織からのデータ持ち出しの未然防止が可能です。

 データの漏えいを水際で防止するDLPは、データ検知の場所によって次の3タイプに分けられます。

  • エンドポイント型DLP
  • ネットワーク型DLP
  • クラウド型DLP

 ゼロトラストでは、データへのアクセスそのものを動的な認証認可と最小権限アクセスによる制御が前提ですが、これらのDLPとの組み合わせにより、内部不正など悪意を持った意図的なデータの持ち出しの未然防止が可能になります。

エンドポイント型DLP

 エンドポイント型DLPは、従業員が使用するPCにエージェントを導入するタイプのDLPです。導入されたエージェントがPC上で読み書きされるファイルを常時監視し、許可されないエリアへのファイルコピーや大量のデータ印刷、メールへの添付、USBメモリや外付けHDDなどへのファイルの書き出しなどが制御できます。

 ネットワークに接続されていない状態でもPCでの不適切なデータの利用が未然に防止できるので、テレワークなどの環境でも活用が可能です。

ネットワーク型DLP

 ネットワーク型DLPは、主にオフィスネットワーク内を流れるデータを監視し、許可されていないSaaSなどのクラウドサービスへのアップロードやメールによる転送などネットワークを介した不正なコピーを禁止します。PCにエージェントを導入する必要がないので、ネットワーク全体を対象としてデータの漏えいを防止する効果を期待できます。

クラウド型DLP

 クラウド型DLPは、企業や組織が利用しているクラウドサービスに接続して運用するタイプのDLPです。ファイル共有サービスやコラボレーションツールなど、クラウドで提供されるSaaSにおいて、不適切なデータの持ち出し、コピーなどを検知し遮断します。

機密情報を判別する2つの検知方式

 これらのDLPは、守るべき機密情報をどのように判定するのでしょうか。機密情報を判別する検知方式には大きく2つの方式があります。

データやファイルの中身による検知

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。