セブン&アイHDが「ハイブリッドクラウド」を選択し、使い分ける理由「自社で構築運用」のメリットはどこにあるのか

「クラウドファースト」の考え方は浸透しているが、クラウドの真のメリットを享受する活用方法とは何なのか。2021年11月25、26日に開催された「VMworld 2021 Japan」でセブン&アイ・ホールディングスの担当者が同社グループにおける事例を基にポイントを紹介した。

» 2022年01月07日 05時00分 公開
[柴田克己@IT]

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 コンビニエンスストアの「セブン-イレブン ジャパン」、総合スーパーの「イトーヨーカ堂」、百貨店の「そごう・西武」といった企業群を傘下に持つセブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイHD)。1920年の「羊華堂」(現イトーヨーカドー)創業以来、事業拡大を続けており、現在では国内、国外コンビニエンスストア事業、スーパーストア事業、百貨店、専門店事業、金融関連事業などの多様な事業領域で、150を超える事業会社を持ち、年間売り上げが約11兆円に達する企業グループとなっている。

 同グループでは、リアルな店舗と物流網に加えて「デジタル」を効果的に活用して顧客接点の強化を進め、新たな体験価値を創造することをデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略に掲げている。戦略の推進に当たり、セブン&アイHDでは、「攻め」と「守り」の両面でIT活用を強化していくことを目的に、ハイブリッドクラウド形式による「共通インフラ基盤」を構築した。

 同社グループの共通基盤として運用されているハイブリッドクラウド環境の概要や使い分けの方針、運用に当たってのポイントをセブン&アイHDの担当者(2021年11月当時)がVMworld 2021 Japanで語った。

DX戦略を推進するため2つの「共通インフラ基盤」を構築

 「各事業の基幹に関わるようなアプリケーション、いわゆる“守り”のITシステムを、高い品質を維持しながら効率的に運用していくに当たって、インフラに関わるセキュリティや構築運用の専門性などを集約していくべきと考えた。各事業会社が個別に構築し、運用してきたシステムは、アプリケーションより下のレイヤーをグループ共通の基盤で標準化し、その上に個別のアプリケーションを載せていく」(セブン&アイHDの担当者)

 セブン&アイHDが構築した「共通インフラ基盤」は、オンプレミスで仮想化した「プライベートクラウド基盤」とパブリッククラウドサービスを採用した「パブリッククラウド基盤」がある。認証認可や権限統制の仕組みは、プライベートとパブリックで共通化しており、いずれのクラウド基盤に対しても統一したID、権限の管理体系を適用する。

 「プライベートクラウドにおいては、ユーザー(事業会社)が個別にミドルウェアやパッケージを持ち込んで構築、運用し、インフラの専門性が問われる領域に対しては、共通基盤を見ているエンジニアが担当する。パブリッククラウドを利用する場合には、共通基盤側では認可認証と権限管理の掌握を第一としており、必要ならアーキテクチャ検討などを含めて共通基盤のエンジニアが支援するケースもある」(セブン&アイHDの担当者)

 ITインフラとその提供組織を共通化することで専門性を集約できるメリットがある一方、システムごとの切り口での見通しが悪くなるというデメリットもある。同社では、その対策として、インフラ共通組織に各システム担当者を割り当てて、各システムにコミットする形で案件に対応しているという。

 なお、プライベートクラウド基盤は「VMware Cloud Foundation」を利用して自社で一から構築しており、ネットワークは「VMware NSX-T Data Center」で仮想化を実現している。

システムやビジネスの特性で「プライベート」と「パブリック」を使い分け

 「プライベート」と「パブリック」という2つの形態の共通基盤を用意したのは「システムやビジネスの特性で向いているインフラの形態が異なるためだ」という。

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