メキシコのエンジニアは「モー娘。」を追い掛けて日本を巡るGo AbekawaのGo Global!〜Carlos Planter編(後)(2/3 ページ)

» 2022年03月10日 05時00分 公開

「日本で働けるなら何でもいい」が招いた失敗

阿部川 機会に恵まれましたね。どんな会社だったのですか。

プランテル氏 「日本に行けるなら何でもやる」と思っていたので事前に仕事の内容は聞かなかったのですが、仕事の内容を聞いたら「何がしたい?」から始まったんです。

 そこで私はゲームのストリーミングサービスを作ろうと提案しました。そのころ日本には「ニコニコ動画」がありましたが「Twitch」のようなゲームに特化したものはなかったのでチャンスだと思いました。うまくいけばゲーム業界に入れるかもしれないという期待もあって全部のシステムを自分で構築するつもりでいました。

阿部川 一人で全部はかなり大変なのではないですか。

画像 阿部川“Go”久広

プランテル氏 おっしゃる通りで開発に時間がかかってアウトプットが出せず、会社の資金がショートしました。仕方がないので半分はフリーランスとして働き、もう半分は会社の仕事をして当面のお金を稼がないとね、という話になりました。一応、友達のマンションに住まわせてもらっていたので寝る場所は確保できていましたが、働いて得たお金がほとんど入ってこないのでかなり厳しかったですね。

 しかも、最初は出ていた給料――といっても月10万円ほどですが――が出なくなって。それは困るので「このままではもう働けない」と言ったらケンカになってしまったんです。「マンションに住まわせているし、あなたのために頑張っているのにどういうことだ」と。

阿部川 あらあら……、すごいですね。ただ残念ながらスタートアップではよく聞く話でもあります。

プランテル氏 そうなんですね……。最終的にはPCも没収されて「出て行け」と言われてしまい、その友達とは別れました。今彼らがどうしているかは分かりません。

阿部川 大変でしたね。そういう状況だと、国に帰るにしても旅費はないし。

プランテル氏 焦りましたね。仕事がないとビザももらえないし、すごく心配でした。


編集中村 編集 中村

阿部川も触れていますが、スタートアップで「給料未払い」「共同起業者との仲たがい」などで会社が解散してしまうという話はよく聞きます。プランテル氏の場合は住む場所も追われてしまってかなり心細かったと思います。「給料が出ないのであればこれ以上働けない」というのは至極まっとうな話だと思うのですが、それを攻められるのはつらいことです。


仕事があって、給料がもらえて、泊まるところがあるという幸せ

阿部川 その後、無事仕事が見つかります。Daijob.comに入社されますね。

プランテル氏 Daijob.comがバイリンガル向けキャリアフェアを開催していまして、そこで面接してもらって合格しました。仲間とのケンカは確か1月ぐらい、Daijob.comに入ったのが3月、と2カ月くらいで早々に次の仕事に就けて良かったです。

 Daijob.comにいたのは4年くらいで、仕事のほとんどはWeb開発でしたね。バックエンドがメインで、フロントエンドの割合は少なかったです。Webページのメンテナンスやインフラの管理などもしました。

阿部川 「大丈夫」になって本当に良かったですね。仕事があって、給料がもらえて、泊まるところがあって、好きなWeb開発の仕事ができて。

プランテル氏 はい。毎日楽しく過ごせていました。今は大きくなりましたけど、最初は30人ぐらいの小さな会社で。お互いのことをよく知っているし、みんな優しい。本格的に会社勤めをするのが初めてだったので不安がありましたけど、暖かい環境で働けて本当に良かったと思います。

阿部川 良かったですね。日本の企業で働く上で、文化の違いなど困ったことはありましたか。

プランテル氏 メキシコの企業で働いたことがないので、違いに戸惑うことはなかったですね。ただ、言葉についてはすごく心配していました。私は尊敬語がそんなにうまくありませんし、話し方などをどういうふうにすればいいのかよく分からなかったんです。でも上司がとても優しくて丁寧に話す人だったので、まねして覚えました。

画像 自信がないとおっしゃっていましたが、とても聞きやすい日本語でした

阿部川 仕事ができることが1番ですが、「言葉や文化に違いがあること」を理解して対処できるかどうかも重要だと思います。おっしゃる通り、日本語の敬語は難しいですよね。でも、ここまで上手に話せれば大丈夫ですよ。

プランテル氏 いえ、まだまだです。言葉が飛んでしまうので(笑)。

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