阿部川 日本の若いエンジニアにアドバイスはありますか。
クさん コードを書ける人は世の中にいっぱいいます。コードを書くだけならば、別に日本人じゃなくても、ベトナムや東南アジアやインドに外注できるし、むしろ彼らの方がコードをうまく書けることもあります。どうやったらその方たちと違いを生み出せるか、それが重要な課題です。なので、日本の若いエンジニアの方々には、まずは視野をちょっと広げてほしいです。
阿部川 何が差別化になると思いますか。
クさん いろいろあると思います。例えば、いま勉強している言語を深堀りしたり、ある程度書ける言語が多くなったら、言語全般の流れを把握するようにしたり。もしくは、開発だけではなく、マネジメントやチームを作り上げる、プロダクトを一から作れる能力、そういったものがあれば、少なくともコードだけ書ける人とは差別化ができるのではないかと思います。
阿部川 明快に3つ言っていただきました。これらがすぐに出てきたということは、恐らくクさんが既に実行している、あるいは意識していることなのだと思います。
先ほど10年後の話を伺いましたが、クさんはエンジニアリングの仕事をずっと続けたいですか、あるいは起業したり、まったく違う職種に行ったりとか。
クさん 僕は、1番は幸せな生活を送っていきたいんです。今はエンジニアリングの仕事が楽しくて幸せですが、これよりも胸がときめく仕事が見つかったら、自分がその仕事に合うのか、エンジニアリングより価値があるのか判断した上で、そこに行く可能性はあるかなと思います。
当たり前のことだが、人生や仕事選びは本当に人それぞれだなあと改めて思った。大学を出てからつい数年前まで、クさんはずっと満たされない思いにつきまとわれていたようだ。ITに出会っていなかったら、今でもその思いを引きずっていただろう。
人は見たいものしか見ない。ITスクールの広告は、ずっとそこにあっただろうに、クさんの目には入っていなかったのだ。その広告を見るまでの準備に時間がかかっていた。今は多国籍4人を率いるチームのリーダー。性に合った仕事に巡り会えた。
アニメが好きだったからか、言葉への感性が高いからか、こちらがハッとする表現が飛び出した。いわく「胸に刺さる」「夢を失う」「ブルーが長い」「心のブレーキを外す」、そして「新しい人生元年」。
パンデミックなどものともせず、いやそれがあるからなお、イノベーションの萌芽(ほうが)は新しい何かを起こそうとする人から生まれる。さあ、2022年は何をしてくれるだろうか。
アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、インタビュアー、作家、翻訳家
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳を行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。
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